つらつら思うこと

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伊勢物語第6段の『あくたかは』の解釈は?

伊勢物語第6段の『あくたかは』の解釈は三通りあるようだ。

摂津国三島郡(現高槻市)の芥川とする
小林茂美(影印校注古典叢書6伊勢物語
片桐洋一(影印本伊勢物語・新典社etc.)
石田穣二(新版伊勢物語・角川文庫)
吉岡曠(学燈文庫)

☆京都の大宮川の別名とする
冷泉家伊勢物語
阿部俊子伊勢物語全訳注・講談社学術文庫
森本茂(伊勢物語論)
伊勢物語知顕抄
池田弥三郎(日本古典文庫)

☆架空の地名もしくは普通名詞とする
一条兼良伊勢物語愚見抄)
細川幽斎伊勢物語闕疑抄)
築島裕・大津有一(日本古典文学大系9)
南波浩(日本古典全書)
中河与一(角川文庫)
中谷孝雄(ちくま文庫

☆三説併記
山田清市(伊勢物語影印本付)
雨海博洋(文法全解伊勢物語
福井貞助(完訳日本の古典10)
森野宗明(講談社文庫)

☆不明とする
此島正年(伊勢物語要解)


《備考》
私見を述べるなら、この『あくたかはといふ河』という表現は普通名詞とか京の人にとって馴染みの場所である大宮川を指すとは考えにくい。
また伊勢物語に出て来る他の地名は近畿周辺に関しては皆実在する地名であるから架空の地名とも考えにくい。
したがって摂津三島郡の芥川以外考えられないと思う。

この芥川という川は淀川の支流で、芥川が淀川に合流する地点の近くで反対側から淀川に合流しているのが82段に出て来る天の川。交野の渚の院も遠くない。
つまりこの段の作者はそれとなく業平を連想させるためのキーワードとして『あくたかは』という地名を使っているのだと思う。
「これは二条のきさきの」以下は後人による解釈文であって、この段の作者のあずかり知らぬもの。それゆえ女を二条の后として限定して考える必要も無いし実話と考える必要も無いから「摂津三島郡では京から離れ過ぎている」という阿部俊子氏のような思考は当たらない。

おそらく元々は民間伝承の鬼一口説話であり、この段の作者は業平と結びつけるために『あくたかは』という地名を使ったものと思う。