つらつら思うこと

特にテーマは決めずに書きます

ゐなかわたらひ

伊勢物語23段の『ゐなかわたらひしける人の子とも』の『ゐなかわたらひしける人』の意味についてはほぼ行商人説と地方官説に分かれているようだ。


【行商人説】……吉井勇(新譯繪入伊勢物語)・池田亀鑑(学燈文庫伊勢物語)・大津有一(現代語譯日本古典文學全集伊勢物語)・大津有一&築島裕(日本古典文學大系6伊勢物語)・南波浩(日本古典全書伊勢物語)・中谷孝雄(ちくま文庫伊勢物語)・山田清市(伊勢物語影印本付)・松尾聰&永井和子(校註伊勢物語)・中田武司&狩野尾義衛(伊勢物語新講)・森野宗明(講談社文庫伊勢物語)・中田武司(有精堂校注叢書伊勢物語)・三ツ木徳彦(文法詳解伊勢物語精釈)・伊勢物語要解(此島正年)・橘誠(伊勢物語の文法と解釈)・日栄社編集所(要説伊勢物語、文法解説伊勢物語)・雨海博洋(文法全解伊勢物語)・郷衡&田尻嘉信(明解シリーズ19伊勢物語)・坂本哲郎(明解古典学習シリーズ2伊勢物語)・奥野光恵(国語Iシリーズ3伊勢物語)・西谷元夫(精選古典14伊勢物語)・小原孝(新明解古典シリーズ3伊勢物語

【地方官説】……福井貞助(完訳日本の古典10伊勢物語)・森本茂(伊勢物語全釈)・小林茂美(影印校注古典叢書6伊勢物語)・田辺聖子集英社文庫)・中野幸一&春田裕之(伊勢物語全釈)・池田弥三郎(日本古典文庫7)・日栄社編集所(新要説伊勢物語)・原国人(文法鑑賞伊勢物語新解釈)・春山要子(古典新釈シリーズ4伊勢物語

【両説併記】……光學館編輯部(精解國文叢書伊勢物語)・田中宗作&鈴木知太郎(伊勢物語付業平集)・片桐洋一(校注古典叢書伊勢物語、鑑賞日本古典文学5伊勢物語)・鈴木知太郎(校註伊勢物語)・永井和子(対訳日本古典新書伊勢物語、笠間文庫伊勢物語)・阿部俊子講談社学術文庫伊勢物語

【明記せず】……中河與一(角川文庫伊勢物語)・渡辺実(新潮日本古典集成伊勢物語)・石田穣二(角川文庫伊勢物語)・中野幸一(対訳古典シリーズ伊勢物語)・吉岡曠(現代語訳伊勢物語


同様の説話が大和物語149段にもあって、大和物語では最後に「このおとこはおほきみなりけり」と書かれている。ただ日本古典文学大系(底本は尊経閣旧蔵伝藤原為家筆本)や永青文庫本(中院通勝筆)は「このおとこはおほきみなりけり」だが、九州大学図書館蔵支子文庫本では「をとこはおほきみなる在中将のことゝそほんに侍」とあり、この部分は後から付け加えられたと考えて良いようだ。

業平の父阿保親王は行商人でもなければ地方官でもないので、この話は元来業平とは無関係の説話だろう。
『まろ』『いも』など業平の時代よりも古い時代の語が使われていることからみても、業平よりずっと前の時代から伝わっていた説話と考える。
中央から派遣される地方官なら、幼い子が成長して結婚するまで同じ任国で勤めているとは考えにくいので、元々その土地の人間である下級地方官を想定すべきではないか。