つらつら思うこと

特にテーマは決めずに書きます

伊勢物語第6段__草の上の露は何故見えた?

伊勢物語第6段のこの部分。


……あくたかはと
いふ河をゐていきけれは草の
うへにをきたりけるつゆをかれは
なにそとなんおとこにとひける
ゆくさきおほく夜もふけにけれ
はおにある所ともしらて神さへ
いといみしうなりあめもいたう
ふりけれは……
……しらたまかなにそと人のとひし時
つゆとこたへてきえなましものを
学習院大学蔵伝藤原定家筆本)

……あく
たかはといふ河をゐていきけれは草のう
ゑにをきたる露をかれはなにそと
なむ男にとひけるゆくさきはいとゝほく
よもふけけれは鬼あるところともしらて
雨いたうふりかみさゑいといみしうなり
けれは……
……白玉かなにそと人のとひし時
露とこたゑてけなましものを
(本間美術館蔵伝民部卿局筆本)

……あくたかはといふかはを
いていきけれはくさのうへにを
きたりけるつゆをかれはなに
そとゝひけれはをとこをに
あるところともしらて神さへ
いといみしうなりあめもいた
うふりけれは……
……しらたまかなにそと人のとひし
ときつゆとこたえてけなまし物を
(大島雅太郎氏旧蔵伝二条為氏筆本)

……章河といふ所を負て行けれは草の上にをきたる露を見て彼はなにそと男にとひけり行さきもいとゝとをく夜もふかゝりけれは鬼栖所ともしらすしてあめもいたくふり神もおとろ\/しうなりけれは……
……しらたまかなにそと人のとひし時
露とこたへてけなまし物を
慶応義塾大学蔵異本伊勢物語


《夜もふけにけれは》とあるので時は夜ふけということになる。平安時代だから当然外灯などは無いわけで人家の無い屋外は闇黒の世界だったはずだ。
その闇黒の中でどうして草の上の露が見えたのだろう。もちろんこの話はフィクションなのだが、フィクションであるにせよ余りにも状況設定が現実離れし過ぎていないか。
しかも《あめもいたうふりけれは》とある。雨が激しく降る夜中に、草の上の露を見て「かれは何ぞ」と尋ねるという、この甚だしい非現実性に誰も気づかないのだろうか。