つらつら思うこと

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伊勢物語/『あくたかは』は埴川か?

伊勢物語第6段の『あくたかは』については四つ ほどの解釈があることを以前に書いた。

http://nobinyanmikeko.hatenadiary.jp/entry/2017/04/21/182116

つまり
①摂津の芥川
②京の大宮川の別名
③単に芥が流される川という意味の普通名
④架空の川の名
の四つだ。
この他に伊勢の芥川とする説もあるようだから結局五つの説があることになる。

このうち②③④については「あくたかはといふ河」という表現からみて考えにくいと前の考察で述べた。そして①の摂津の芥川であろうと前の考察では述べたのだが、少し考えを変えた。


実践女子大蔵異本伊勢物語および慶大蔵異本伊勢物語ではここはこう書かれている。

……からうじて心をあはせてくらきにぬすみて章河といふ所を負て行ければ……

この二つの異本伊勢物語東京国立博物館の絵巻とともに江戸時代に同一の絵巻を写した本とされる。元の絵巻は伝わっていないが、鎌倉期頃の古い絵巻と見られ、6段が「白玉か……」の歌で終っていて「これは二条の后の……」以下を欠くことなど伊勢物語の古態を留める本ではないかと私は注目しているが、その二つの異本伊勢物語が「章河」と書いている。
「章河」はおそらく『あきかは』だろう。そして『き』は書き方によっては『くた』のようにも見える。『あきかは』⇒『あくたかは』という誤写の結果『あくたかは』になったのではないか。

一方、塗籠本7段では男が死んだ女を回想して歌を詠んでいるのだが、その回想の場所が大原で、大原には高野川という川が流れている。この高野川は平安時代には埴川と呼ばれていた。
『波』と『阿』、『尓』と『支』の変体仮名の書体の類似から『はにかは』⇒『あきかは』の誤写も十分有り得るので『あくたかは』は元は『はにかは』であり、『はにかは⇒あきかは⇒あくたかは』と変化したのではないかと私は考える。