つらつら思うこと

特にテーマは決めずに書きます

「春をわするな」か「春なわすれそ」か

(算合本拾遺和歌集より)
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菅公菅原道真の著名な歌だが、こんな記事があった。

http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000066229

ここでは初出の拾遺和歌集では「こちふかばにほひをこせよ梅花あるじなしとて春をわするな」であるとしている。

ところが「拾遺和歌集の研究・校本篇伝本研究篇」(片桐洋一著、1970年12月、大学堂書店)を見ると、拾遺和歌集の段階で既に伝本により「春をわするな」「春なわすれそ」の双方があることが判る。

「こちふかはにほひをこせよ梅花あるしなしとて春をわするな」(◎京大図書館蔵中院通茂筆本)
宮内庁書陵部蔵東常縁筆本
尊経閣文庫蔵伝浄弁筆本
◎京大図書館蔵二条為重奥書本
早大図書館蔵甘露寺親長筆本
◎京大図書館蔵冷泉為満奥書本
◎北野克氏蔵無年号本(算合本)
◎陽明文庫蔵近衛基熈筆本
国会図書館蔵永正15年書写本
天理図書館蔵甲本
京都市北野天満宮

「こちふかはにほひおこせよ梅の花あるしなしとて春な忘れそ」(◎堀河宰相具世筆本)
◎片桐洋一氏蔵為秀奥書本
◎岩国吉川家蔵為相奥書本

数の上では「春をわするな」が圧倒的に多いのだが「春なわすれそ」となっている写本も若干ながら存在する。
したがって「春をわするな」と「春なわすれそ」のどちらが古いかは簡単には言えない。

ただ「匂おこせよ」という強い命令表現のあとに続くものとしては懇願的な「春なわすれそ」よりも「春をわするな」の方が自然だろうと私は思う。