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助動詞『り』について⑦まとめ

助動詞『り』について⑥
http://nobinyanmikeko.hatenadiary.jp/entry/2018/06/19/165844




以上見てきた各古語辞典の記述をまとめると、こんな感じになる。

【四段動詞の場合】
★命令形接続とする辞典
 ・「基本古語辞典/改訂版」
  (小西甚一編、1966年3月初版1969年11月改訂
   版、大修館書店)
 ・「時代別国語大辞典/上代編」
  (上代語辞典編修委員会編、代表澤瀉久孝、
   1967年12月、三省堂
 ・「岩波古語辞典/補訂版」
  (大野晋他編、1974年12月初版1990年2月補訂
   版、岩波書店
 ・「例解古語辞典/第二版」
  (小松英雄他編、1980年1月初版1985年1月2
   版、三省堂
 ・「全訳古語例解辞典/第三版」
  (北原保雄編、1987年1月初版1998年1月3版、
   小学館
 ・「三省堂セレクト古語辞典」
  (桑原博史編、1987年12月、三省堂

★命令形接続だが已然形接続説もあるとする辞典
 ・「新訂/詳解古語辞典」
  (佐藤定義編、1972年11月初版1982年10月新
   訂版、明治書院
 ・「角川必携古語辞典」
  (山田俊雄他編、1988年11月、角川書店
 ・「古語林」
  (林巨樹他編、1997年11月、大修館書店)
 ・「東書最新全訳古語辞典」
  (三角洋一他編、2006年1月、東京書籍)

上代は命令形接続、中古以後は已然形接続とする辞典
 ・「旺文社全訳古語辞典/第三版」
  (宮腰賢他編、1990年11月初版2003年10月3
   版、旺文社)
 ・「全訳用例古語辞典ビジュアル版/第二版」
  (菅野雅雄他編、1996年12月初版2002年12月
   2版、学研)
 ・「ベネッセ全訳コンパクト古語辞典」
  (中村幸弘編、1999年11月、ベネッセコーポ
   レーション)
 ・「三省堂詳説古語辞典」
  (渡辺実他編、2001年1月、三省堂

★エ段に接続するとする辞典
 ・「明解古語辞典/改訂版」
  (金田一春彦編修主任、1953年4月初版1958年
   3月改訂版、三省堂
 ・「新明解古語辞典/第二版」
  (金田一春彦編者代表、1972年12月初版1977
   年12月2版、三省堂


【サ変動詞の場合】
★命令形接続とする辞典
 ・「基本古語辞典/改訂版」
 ・「岩波古語辞典/補訂版」

上代は命令形接続、中古以後は未然形接続とする辞典
 ・「旺文社全訳古語辞典/第三版」

★未然形接続だが命令形接続説もあるとする辞典
 ・「新訂/詳解古語辞典」
 ・「角川必携古語辞典」
 ・「古語林」

★未然形接続とする辞典
 ・「時代別国語大辞典/上代編」
 ・「例解古語辞典/第二版」
 ・「全訳古語例解辞典/第三版」
 ・「三省堂セレクト古語辞典」
 ・「全訳用例古語辞典ビジュアル版/第二版」
 ・「ベネッセ全訳コンパクト古語辞典」
 ・「三省堂詳説古語辞典」
 ・「東書最新全訳古語辞典」

★エ段に接続するとする辞典
 ・「明解古語辞典/改訂版」
 ・「新明解古語辞典/第二版」


次に参考書の場合を見てみる。
伊勢物語関係の参考書で、
①9段の「雪いとしろうふれり」
②69段の「ちひさきわらはをさきにたてゝ人たてり」
③82段の「やまとうたにかゝれりけり」
の三箇所の品詞分解を見ると以下の通りだった。

★三箇所すべて已然形接続とする参考書
 ・「伊勢物語要解/改訂版」
  (此島正年著、1955年初版改訂版発行年次不
   明、有精堂)
 ・「伊勢物語の文法と解釈」
  (橘誠著、1957年11月、学燈社
 ・「文法詳解伊勢物語精解」
  (長瀬治著、1958年4月、加藤中道館)
 ・「文法設問伊勢物語の解釈と鑑賞」
  (伴久美著、1958年5月、有精堂)
 ・「ニューメソッド国文対訳シリーズ1/伊勢物
  語」
  (小西宏著、1961年4月、評論社)
 ・「文法詳解伊勢物語精釈」
  (三ツ木徳彦著、1963年5月、中道館)
 ・「文法全解伊勢物語
  (雨海博洋著、1969年、旺文社)  
 ・「明解シリーズ19/伊勢物語/増補版」
  (郷衡他著、1972年初版増補版発行年次不
   明、有朋堂)
 ・「精選古典14/伊勢物語/増補版」
  (西谷元夫著、1986年6月初版増補版発行年次
   不明、有朋堂)

★69段が収録されていないか品詞分解が記述されていないが9段・82段はいずれも已然形接続とする参考書
 ・「要説伊勢物語
  (日栄社編集所著、1964年5月、日栄社)
 ・「文法解説伊勢物語/改訂版」
  (日栄社編集所著、1973年4月初版改訂版発行
   年次不明、日栄社)
 ・「武蔵野古典学習講座②/伊勢物語
  (野口博久他著、1978年5月、武蔵野書院
 ・「国語 Ⅰ シリーズ3/伊勢物語
  (奥野光恵著、1982年5月、中道館)
 ・「必読古典伊勢物語
  (西谷元夫著、1990年7月、有朋堂)
 ・「新明解古典シリーズ3/伊勢物語
  (小原孝著、1990年9月、三省堂
 ・「新・要説伊勢物語
  (日栄社編集所著、1998年7月、日栄社)

★9段の品詞分解が記述されていないが69段・82段はいずれも已然形接続とする参考書
 ・「VITALS SERIES 9/伊勢物語解釈の基礎」
  (塚田義房著、1986年3月、研数書院)

★三箇所すべて命令形接続とする参考書
 ・「文法鑑賞伊勢物語新解釈」
  (原国人著、1979年4月、有精堂)
 ・「古典新釈シリーズ4/伊勢物語
  (春山要子著、1984年10月、中道館)

また伊勢物語の索引では「伊勢物語に就きての研究/補遺・索引・図録篇」(索引:伴久美著、1961年12月、有精堂)は命令形、「伊勢物語総索引」(大野晋・辛島稔子編、1972年5月、明治書院)は已然形としている。
《※伴久美氏は「文法設問伊勢物語の解釈と鑑賞」では已然形接続としているが「伊勢物語に就きての研究/索引篇」では命令形接続としている。刊行が索引の方が3年後なので、その間に考えを変えたのか、あるいは高校生向けの参考書と研究者向けの索引でスタンスを使い分けたのか。
また大野晋氏は「岩波古語辞典」で命令形接続としているが「伊勢物語総索引」は已然形接続となっている。この点から見ても「伊勢物語総索引」は実質辛島稔子氏の編と考えて良いと思う。》


辞書では命令形接続説が多いが、参考書は已然形接続説のものが多い。ただ最初に引用した小松英雄氏のように「り」を助動詞とせずにラ変動詞の一部と考えるのが私は一番合理的な解釈と思うが。