つらつら思うこと

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『あた』か『あだ』か③

『あた』か『あだ』か②
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❂新訂/詳解古語辞典(佐藤定義編、1972年11月初版1982年10月新訂版、明治書院

あた【仇】(名)
①自分に害をする者。また、攻めてくる者。敵。
「運に乗じて━━を砕くとき、、勇者にあらずといふ人なし」〈徒80〉
②恨みの種。
「形見こそ、なかなか(=カエッテ)今は━━なれ」〈平家・二・大納言死去〉
③しかえし。
「よし━━は徳をもちてとぞいふなる」〈宇津保・藤原君〉
🔴近世の初めごろまでは「あた」と清音で発音され、その後は「あだ」と濁音化した。

あだ【徒】(形動ナリ)
①誠意がない。実がない。うわついている。
「━━なりと名にこそたてれ桜花」〈古今・春上〉
②頼りにならない。はかない。一時的だ。
「━━なる契りをかこち」〈徒137〉
③むだだ。無用だ。空虚だ。つまらない。
「あすよりは━━に日を送らじと」〈玉葉・釈教〉
🔴名詞「あた(仇)」は、敵・かたきの意で別語だが、近世ごろから同一の語と考えられた。〈初版はこの注記無し〉

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❂角川新版古語辞典(久松潜一・佐藤謙三編、1972年11月初版、角川書店

あた【仇・賊・寇】名
〘近世中期ごろから「あだ」〙
①自分に害をなすもの。敵。
「━━守る筑紫に至り」〔万六・971〕
②恨み。また、恨みの種。
「かたみこそ今は━━なれこれなくは忘るる時もあらましものを」〔古今・恋四・746〕
「よし。━━は徳をもって(報イル)とぞいふなる」〔宇津保・藤原の君〕
③障害。損害。
「この風呂屋の入口にとがった石があって、出入りの人の━━となったを」〔イソポ〕
━━の風……逆風。
「もろこしに至らむとするほどに、━━吹きて、三つある船、二つはそこなはれぬ」〔宇津保・俊蔭〕
━━は恩にて報ず……恨みに対してはかえって恩を施すべきだ。
「『怨をば恩をもって報ぜられたり』と仰せける」〔平家二・烽火之沙汰〕
━━守る[枕]上代、防人を筑紫につかわして外敵に備えたので、「筑紫」にかかる。
「━━筑紫に至り」〔万六・971〕
━━を結・ぶ……縁あってかたきどうしとなる。
「悪子に逢ひて━━・び、罪をつくり」〔沙石一〇・本〕

あだ【徒】形動ナリ
〘別に「あだし」が存在して古く連体修飾にのみ用いたが、その「あだ」と同じ語幹か。空疎・虚構・不信実などの意をもととする。「仇」「讐」「敵」は古くは「あた」で「あだ」とは別語〙
①一時的だ。はかない。
「命をば━━・なるものと聞きしかど」〔新古今・恋五・1363〕
②浮ついている。誠実でない。
「昔、女の、━━・なる男の形見とておきたる物どもを見て」〔伊勢119〕
③むだだ。無用なことだ。
「蝶になりぬれば、いともそでにて、━━・になりぬるをや」〔堤中納言虫めづる姫君
④いいかげんだ。
「━━・な御酒はござらぬが、今日のは取りわき結構に覚えまする」〔狂・悪太郎
⑤【他】無関係だ。よそのことである。別だ。
「━━・にはあやな人に知らるる」〔古今六帖〕

あだ-くらべ【徒比べ】名
男女が互いに、相手を浮気者だと言い張ること。
「━━かたみにしける男女の」〔伊勢・50〕

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❂岩波古語辞典(大野晋佐竹昭広・前田金五郎編、1974年12月初版、岩波書店

あた【仇・敵】《ぴたりと向き合って敵対するものの意。江戸時代以後アダと濁音化した》
①敵。
「筑紫の国は━━守る押への城(き)そと」〈万4331〉
②自分に害をなすもの。
「局(つぼね)の前を渡りけるに、何の━━にか思ひけん」〈伊勢31〉
③害。
丹波国大江山には鬼神がすみて━━をなす〈伽・酒呑童子
④うらみ。
「必ず此の━━を報ずべし」〈今昔二ノ28〉。
「怨、アタ」〈名義抄〉
▷アタは、アタナヒ(寇)・アタヒ(能)・アタヒ(価)・アタヘ(与)・アタラ(可惜)・アタラシ(可惜)・アタリ(当)などに共通の語根。
━━を結・ぶ
敵意をいだく。復讐心をもつ。
「この者、わがために━━・ばむずる者なり」〈平治上・信頼信西不快〉

あだ【徒・不実】
①花が実を結ばないこと。
「━━なる花」〈源氏・藤裏葉
②実意・誠意のないこと。浮気。
「男、ねんごろにいかでと思ふ女ありけり。されどこの男を━━なりと聞きてつれなさのみまさりつつ」〈伊勢47〉。
「━━なる方に進み移りやすなる人は女のためのみにもあらず頼もしげなく」〈源氏・宿木〉。
「アダノナサケ」〈日葡〉
③いいかげんなこと。粗末にすること。おろそか。
「御枕上に参らすべき祝のものに侍る。あなかしこ━━にな」〈源氏・葵〉
④無用。無駄。
「〔蚕も〕蝶になりぬれば……━━になりぬるをや」〈堤中納言・虫めづる〉
⑤はかないさま。
「久しかれ━━に散るなと桜花かめにさせれど移ろひにけり」〈後撰82〉

あだくらべ【徒競べ】
①互いにきそって不実、移り気であるかのようにふるまうこと。
「━━かたみにしける男女」〈伊勢50〉
②もろさ、はかなさを競い合うこと。
「風の前のもろき露にも稲妻の━━には負けじとぞ思ふ」〈東海百首〉※補訂版では《「いずれ先花と老との━━」〈石山百韻〉》に差し替えられている。

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❂角川最新古語辞典(佐藤謙三・山田俊雄編、1975年1月初版1980年1月増補初版、角川書店

あた【仇・怨・讐】名
①自分に害をなすもの。敵。かたき。
「筑紫の国は━━守る押さへの城(き)そと」〔万葉二〇・4331〕
②恨み。また、恨みの種。
「形見こそ今は━━なれこれなくは(アノ人ヲ)忘るる時もあらましものを」〔古今・恋四・746〕
③障害。損害。「この風呂屋の入り口にとがった石があって、出入りの人の━━となったを」〔イソポ〕
〚参考〛「当たる」の語幹からできた語か。近世中期ごろから「あだ」と濁音になった。

あだ【徒】形動ナリ
①一時的だ。もろい。はかない。
「枝よりも━━・に散りにし花なれば落ちても水のあわとこそなれ」〔古今・春下・81〕
「わが身と住みかのはかなく━━・なるさま」〔方丈記
②いいかげんだ。おろそかだ。
「たしかに御枕上に参らすべき祝ひの物にて侍る。あなかしこ(=決して)、━━・にな(=オロソカニスルナ)」〔源氏・葵〕
③(心が)誠実でない。軽薄だ。浮気だ。気まぐれだ。
「いとまめに実用にて(=マジメデ実直デ)、━━・なる心なかりけり」〔伊勢・103〕
④むだだ。無用だ。
「━━・にただ涙はかけじ」〔十六夜

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❂例解古語辞典/第二版(佐伯梅友・森野宗明・小松英雄編著、1980年1月初版1985年1月2版、三省堂

あた【仇】〈名〉《近世以後「あだ」》
❶敵。
❷恨みの種。
[用例]
①「そのゆゑは運に乗じて━━を砕くとき、勇者にあらずといふ人なし」〔徒然・80段〕
②「形見こそ今は━━なれ、これなくは忘るるときもあらましものを」〔古今・恋四〕
[解]形見を置いて行ってくれたばかりに、私を捨てたあなたを忘れようとしても忘れられない、という意。

あだ【徒】〈形動ナリ〉
❶実がない。うわついている。
❷はかない。一時的だ。
❸むだだ。しがいがない。
[用例]
①「咲く花は千種ながらに━━なれど、誰かは春を恨み果てたる」〔古今・春下〕
[解]第二句は、あらゆる花が、の意。
②「わが身と栖との、はかなく━━なるさま」〔方丈記
[解]「はかなく徒なる」は、もろくて頼りにならない、ということ。
③「霜枯れの草の戸ざし(=門)は━━なれどなべての人を入るるものかは」〔後拾遺・冬〕
[解]ここでは、簡単に押し破られそうで、あっても役に立たないようではあるが、の意。

あだ-くらべ【徒比べ】〈名〉
❶男女が互いに自分のことを棚に上げて、相手がうわきだと、とがめだてすること。
❷《近世語》なまめかしさを競うこと。

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❂要語全訳必修古語辞典(平田喜信編、1992年2月初版、学研)

あた【仇・讎・賊】名{江戸時代以降「あだ」}
❶敵。
「しらぬひ(=枕詞)筑紫の国は━━守る鎮(おさ)への城(き)ぞと」〈万・4331〉
❷〔災いのもととなる憎むべき存在〕かたき。仇敵。
「いみじき(=タケダケシイ)もののふ(ヤ)、━━敵なりとも」〈源・桐壺〉
❸恨み。また恨みの種。
「年来棲みける妻を去り離れにけり。妻、深く━━を成して」〈今昔・二四・20〉
〚学習の要点〛「あだ(徒)は別の語。

あだ【徒】形動ナリ
❶(一時的で)はかない。もろい。
「露をなど━━・なる物と思ひけむ」〈古今・哀傷・860〉
[訳](露をどうしてはかないものと思っていたのだろう)」
❷(性格・言動が)誠実でない。いいかげんである。浮気である。
「この男を━━・なりと聞きて、つれなさのみまさりつつ」〈伊勢・47〉⇔実(まめ)
[訳](女は、この男を浮気な人だと聞いて、だんだん冷たい態度がひどくなっていって)
❸(取り扱いが)疎略である。
「確かに、御枕上(まくらがみ)に参らすべき、祝ひの物にて侍る。あなかしこ、━━・にな」〈源・葵〉
[訳](確かに枕もとに差し上げるべき祝いの物です。決して疎略に扱ってはいけません)
❹(役に立たなくて)無駄である。無用である。
「蝶になりぬれば、糸もそでにて、━━・になりぬるをや」〈堤中納言虫めづる姫君
[訳](蚕が蝶になってしまえば、糸を吐き出さなくて無用なものになってしまうのにねえ)
[参考]「あだ」の基本意味……「空虚で中身がない」が根本の意味で、残念がる気持ちを込めて言う語である。そこから、ものについては①、人については②の意味に用いられた。
[学習の要点]
(1)反対語「まめ(実)」と対にして覚えると忘れない。
(2)同系の語には、「あだあだし」「あだごと」「あだごころ」「あだしごころ」「あだびと」などがある。グループにして理解しておこう。

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❂旺文社高校基礎古語辞典/第二版(古田東朔監修、旺文社編集部編、1987年10月初版1997年2版.旺文社)

あた【仇・敵・賊】(名)
❶自分に害をなすもの。外敵。
「しらぬひ(=枕詞)筑紫の国は━━守る鎮(おさ)への城(き)そと(=鎮護の城であるとて)」〈万葉・20・4331〉
❷恨みのたね。
「形見こそ今は━━なれこれなくはわするる時もあらましものを(=あの人の形見だけれど、今となっては恨みの種だ。これがなければ、あの人のことを忘れる時もあるだろうに)」〈古今・恋四〉
[参考]「あた」は「当たる」の語幹で、「自分に当たるもの・自分に向かってくるもの」の意。中世まで「あた」、それ以後「あだ」となった。

あだ【徒】(形動ナリ)
❶まことのないさま。浮気なさま。
「いまの世の中、色につき、人の心、花になりにけるけるより(=うわついてきたので)、━━・なる歌(=うわついた歌)、はかなきことのみいでくれば」〈古今・仮名序〉
「━━・なりと名(=評判)にこそたてれ桜花年にまれなる人もまちけり」〈古今・春上〉
❷長続きせず短時間で終わるさま。はかないさま。かりそめなさま。
「久しかれ━━・に散るなと桜花瓶(かめ)に挿せれどうつろひにけり」〈後撰・春下〉
❸むだなさま。いたずらなさま。無益なさま。
「和歌の道はただまこと少なく、━━・なるすさび(=なぐさみ)ばかりと思ふ人もやあらむ」〈十六夜(いざよい)」

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❂ベネッセ古語辞典(井上宗雄・中村幸弘編、1997年11月初版、ベネッセコーポレーション

あた【仇・敵・賊】〔名〕
ꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫ
‖語相‖「当たる」と同じ語根とされ、対峙するもの、敵対するものを指すのが原義である。濁音化して「あだ」となるのは近世中期以降のこと。
ꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫ
❶害をなすもの。敵。「五百重山(いほへやま)い行きさくみ━━守る筑紫に至り」〈万六971〉
❷害。「丹波の国大江山には鬼神がすみて━━をなす」〈御伽・酒呑童子
❸恨み。「形見こそ今は━━なれこれなくは忘るる時もあらましものを」〈古今・恋四・746〉

あだ【仇】〔名〕⇨あた(仇)

あだ【徒】〔形動ナリ〕
ꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫ
‖語相‖ 内容がない、空虚であることから、動作の評価については❶①、過程については②、時間的には❷、人間の質については❸の意になる。
ꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫꙫ
❶①実のないさま。むだだ。無益だ。
「思ふかひなき世なりけり年月を━━・に契りて我や住まひし」〈伊勢・21〉
②いいかげんだ。疎略だ。たよりにならない。
「たしかに御枕上に參らすべき祝ひの物に侍る。あなかしこ、━━・にな」〈源・葵〉
❷一時的なさま。はかないさま。かりそめだ。
「露をなど━━・なるものと思ひけむわが身も草に置かぬばかりを」〈古今・哀傷・860〉
「ただ━━・にうち見る人の、浅はかなる語らひだに」〈源・松風〉
❸誠実でない。浮気だ。
「花といへば名こそ━━・なれ女郎花なべての露に乱れやはする」〈源・蜻蛉〉
❶❷[対]忠実(まめ)⇒[相関図]4
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あだ-くらべ【徒比べ】〔名〕男女が、互いに相手を浮気だと言い合うこと。
「━━かたみに(=互いに)しける男女の」〈伊勢・50〉

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⇒『あた』か『あだ』か④
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