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古語辞典比較~前書・後書(3)旺文社古語辞典/中型新版~旺文社全訳古語辞典/第三版

❄旺文社古語辞典/中型新版(守随憲治・今泉忠義監修、鳥居正博編集責任、1965年2月初版1965年3月重版、旺文社)

【監修者のことば】
 古典を原文で読むことはもちろん容易でない。しかし、困難な古語を克服して読む古典は時代を越えてわれわれの共感を呼ぶ。時の試練にたえぬいてきた古典の力づよさ、それはときに人間の心を正す鑑ともなり、情をいやすいこいの場ともなり、あすへ向かう人間の精神的糧ともなる。古語を学ぶことは古人の心にじかにふれる道であり、古典の精神を読みとる要件である。
 古典を通じてひとりでも多くの人に古の心に触れてもらいたい。━━そうした願いから古典を学び、鑑賞するうえに真に役立つ古語辞典として五年前に「旺文社古語辞典」(小型版)が世に出され、私どもも校閲の責任と労苦と、さらには喜びを共にしたのであった。幸い高校では「古典」学習の必携辞典として使われ予想以上に多数の活用を受けた。その間、古典の研究もむろん一所にとどまっていようはずもない。今まで正しいとされてきたことが否定されたり、幾多の新しい事実の解明もあった。当初から古語辞典の校閲に携わってきた私どもはそれに無関心ではいられない。そのつど、編集部に連絡することを怠らず、また内容・形式に関して気づいた点や読者からの批判なども随時メモして、最も理想的な「古語辞典」のあり方を頭に描きつづけてきた。
 このたび中型新版刊行に当たり、監修の任を再び求められたので、ここに日ごろの考えをすべて結集して、学習者が本当に満足することのできる古語辞典を作ろうと努力してきた。まず、なによりも古典を愛し古典を学ぼうとする人達の立場にたって、いよいよ正確にいよいよわかりやすくなるよう常に念頭におき、現在の学界の成果もじゅうぶんに取り入れた。すなわち、型を中型化して内容の収容力を全面的に高めるとともに、助詞・助動詞を含めた重要語の徹底した詳解に入念な配慮を加え、語感欄によって古語の微妙なニュアンスまでも説明するなど、随所に創意工夫を凝らし、真に学習に活用することのできる新しい辞書編纂の労を惜しまなかった。さらに有職故実を中心として学習・教育ならびに鑑賞上意義のある参考資料をできうる限り大幅に増補し、古典の背景をも広く学ぶことができるよう考慮した。
 いまこの新しい辞典の誕生をみることは、たとえようもない喜びと感慨にたえない。この辞典が高校生諸君をはじめ、大学生にも一般人にも広く利用されて、古典学習や研究の良き伴侶となることを祈ってやまない。
 なお、企画の作成から、資料の準備、文献出典の調査にいたるまで監修者の陰になって日夜奮闘せられた編集部の方々の労を多とするとともに、執筆の面で御協力いただいた学友諸氏に深甚の謝意を表する次第である。
昭和三十九年 初冬
守随憲治
今泉忠義

【刊行にあたり】
 ルネサンスの目標となり原動力となったものは古典であり、古典に驚異と感激とをもって人間性の真実と自由を発見した。長い年月と歴史の批判に堪えてきた古典には無類の人間的な暖かみがあり、調和と安定があってわれわれに安らぎと生きる力を与えてくれる。幸いにわが国も万葉・源氏・古今を初め、他国に誇り得る幾多のすぐれた古典に恵まれている。わが古典に宿る知性や情趣にふれて自己をゆたかにし、現代に生きる知恵を学びとることこそ古典を生かす道であろう。
 私は五年前、多年の宿願を果たして、日本古典の道しるべとして「旺文社古語辞典」を世に出した。中心的指導者として守随・今泉両博士の全面的な御指導のもとに多数のベテラン執筆陣の献身的な御協力によって、当時としては幾多の新機軸を打ち出し、辞典界に新風を吹き込んだ。しかし、何事も永久に完全であることはあり得ない。初版発刊以来、数年の間における国語・国文学界の進歩は著しく、加えて高校新指導要領による古典重視の傾向などを考え合わせるとようやく不備が目につくようになった。そこで思いきって改訂にふみきり、高い活用性と学習性を色こく打ちだし、古典学習を能率化する辞典として新時代の要望に応ずべく、次の諸点に新たな配慮を加えた。すなわち、学界の成果に応じ字音かなづかいの改正、語源・語史の指示、語義の修正等を十分にとり入れ、用例を新採厳選すること、および古語学習の要である助詞・助動詞ほか基本古語には重点主義による徹底的詳説を加えることなどを根本方針とし、他方においては後述のように編集面にいくつかの新機軸を出し、学習者の立場を考えて細心の配慮を加え、また型を中型化して紙面にゆとりをもたせ、盛るべきことを十分に盛ってここに「旺文社古語辞典(中型新版)」として刊行する運びとなったのである。
 次に、この辞典の特長とする主要な点をあげてみよう。
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一、教科書や主要古典から広汎に語句約四万一千語を収録し、重要見出し語には星標指示をした。
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高校・大学における古典学習に十分な約四万一千語を採録したが、古典の学習研究や入試対策上特に重要な語約五千を選び、古語辞典としては初めての二段階の星標指示を行ない、能率学習に直結せしめた。また特に重要語、漢熟語の語根には現代かなづかいにもとづく見出し語を掲げて検索の便をはかり、さらに読めない語も引けるように、巻末には総画引き漢字難音訓表を付して、検出をいっそう容易にするよう工夫した。
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一、見出しには、地名・人名・作品名・作中人名のほか和歌・俳句などを積極的に収録して、古語辞典に立体的な活用性を与えた。
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一般古語のほかに国文学史上における人名・地名・作品名・作品中の登場人名などの固有名詞約三千五百余、さらに、高校教科書および過去の大学入試に二度以上出題された和歌・俳句・狂歌・川柳など約一千二百も見出しとして取り上げ、これに全釈を施すなど、古典学習に万全の利便を考慮した。
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一、語義解説は簡潔・正確・平易を期したことはもちろん、活用度の高い重要語には徹底的詳説を施し、辞典の学習性を高めた。
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解説は最近の学界の成果を十分にとり入れ、適確で平易をモットーとし、特に助詞・助動詞・補助動詞・敬語動詞、その他の重要な基本古語には、あくまで「重点主義」を貫き、詳細で相当突込んだ語釈を施すとともに、必要に応じて語法欄を創設して学校文法に即した実際的文法解説を添え、語感欄を新設して語義理解の一助とし、さらに補説欄や参考欄を充実させて補足説明および語義比較、関連事項の解説その他の有用参考記事を掲げるなど、あらゆる角度から検討を加え語義理解の徹底をはかった。
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一、用例は適切で典型的なものを厳選して新採し、同意語・対語も示して、語いの理解や対照に便ならしめた。
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語義分類に応じて、教科書・有名古典から適切な用例を厳選し、助詞・助動詞その他の重要語には一語義につき二つ以上の用例を挿入し、実際の用例を示す一方、典拠は詳記して原典照合の便も計り、やや難解と思われる用例には注釈も添え、同意語・対語なども随所に指示するなど、対照理解の指針とした。
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一、豊富なさし絵と図鑑により、視覚的・有機的解説を目指し、また俳句学習上の手引きも完備させた。
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本文中六百五十個以上に及ぶさし絵と二十頁にわたる付録の参考図鑑、巻頭には六色刷りで襲(かさね)や鎧(よろい)の縅(おどし)、古典にあらわれる色や絵巻物、また写真版による古写本や行事・風俗などの参考資料により、視覚的・総合的学習を完璧ならしめたほか、季題となる語にはすべて季を示し、季語集を付録に添えて歳時記の役も果たせるなど、俳句学習にも配慮を怠らなかった。
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一、古語・古典の学習に際して、必要で欠くことのできない実用記事を積極的に採りいれ、これを付録に掲げた。
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一八五頁にわたる多大のスペースをさいて、古語・古典理解の道しるべとなる「古語解釈の要領」「歴史的かなづかい一覧」などを掲げ、巻末には「国語・国文法用語解説」「主要文法事項」「主要文飾語句」「古典の背景」「季語集」「有職故実参考図」「総画引き漢字難音訓表」、その他の有益な付録を設け、古語・古典理解に必須の基礎的、背景的知識の習得にそなえた。
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 以上に特長をしるしたが、最後に監修者として立案から校正に至る長い期間適確な後指導と御労苦を賜った守随・今泉両博士をはじめ、秋山茂・阿辻見知子・渥美かをる・乙葉弘・金田弘・黒瀬崇・小林元江・佐合和子・笹岡洋一・三条西公正・竹松宏章・寺田泰政・中山崇・原道生・平賀幸五郎・待井新一・村上保夫・森昇一・矢島房利・山極圭司の各先生(五十音順)、および貴重な資料を提供下さった長谷章久先生に心からの謝意を表したい。
一九六四年 初冬
旺文社社長 赤尾好夫


❄旺文社古語辞典/新版(松村明今泉忠義・守随憲治・山口明穂・和田利政編、1960年2月初版、1981年10月新版1982年重版、旺文社)

【編者のことば】
 ここ数年来、一般社会人の間で古典を学ぼうとする人たちの数がふえているようである。わが国には、「万葉集」「源氏物語」など民族の文化遺産ともいうべき多くの古典がある。時の試練にたえぬいてきたそれらのすぐれた文学にじかに接したいと願うのは、私たち日本人にとって、きわめて自然な感情であり、古典に親しむ人々の層が厚くなることはまことに喜ばしいことといわねばならない。
 ところで、古典を原文で読むことは容易ではない。現代人は、ある意味で古語に対して外国語と同様の隔たりを感じる。古典を読むためにはそれ相応の修練が必要である。そして、古典とのことばの隔たりをとり除くための手引き書として古語辞典は不可欠である。学校教育ではいうに及ばず、生涯教育が叫ばれる今日、正確でわかりやすい、学習者の立場に立った古語辞典の必要性はますます増大している。
 古典を学ぶために真に役だつ辞典をめざして「旺文社古語辞典」をはじめて世に出してから、もう二十余年になる。私共はその間、学生をはじめ多くの読者が古語辞典に求めるものは何かを探り、教育の現場や多くの読者諸氏からの助言に絶えず耳をかたむけ、考え得るあらゆる配慮を加えてきた。一方、学問上の研究成果を積極的にとり入れ、資料を整備し、いく度もの改訂を通じて、心をこめてこの辞典を磨き上げてきたつもりである。
 本辞典は、幸いにして学生諸君をはじめ広い層から絶大な評価を頂き愛用されてきた。これまで頂いてきた広範の読者諸氏のご支持に対し、心から感謝し、厚くお礼を申し上げる次第である。
 さて、過去四度にわたる改訂で、内容の充実をはかってきたが、今回、さらに全面改訂を行うことにより、本辞典のすみずみまで、検討、改善を加え、学問的により正確に、学習者により親切に、わかりやすくする努力を結集させた。創刊以来の特色にさらに磨きをかけて出すわけであるが、「旺文社古語辞典〈新版〉」が、これまで以上に高校生、大学生、また古典を学ぶ一般社会人の皆さんに受け入れられ、利用されることを願って止まない。
 このたびの新版編集に当たっては、新たに山口明穂氏と和田利政氏の参加を得た。両氏の献身的なご尽力に対し厚くお礼を申し上げるとともに、執筆にご協力をいただいた学友諸氏ならびに、私共を督励してくれた編集部の方々に深甚の謝意を表したい。
一九八一年 初秋
編者

【刊行にあたり】
 旺文社古語辞典を初めて刊行したのは一九六〇年のことである。今までの約二十一年間に四回の改訂を経、今回が五度目の全面改訂ということになる。ほぼ四年間に一度の割の改訂回数で、これは類書中最多であろうと思う。それには二つの理由がある。年ごとに見るべきものの多い国語国文学関係の研究成果をいち早く適切に反映させようとしたことがまずその一つ。もう一つは、創意・工夫のあくなき追求・取り入れである。時代とともに利用者の望むところも変わるから、それに応じた諸々の要素を盛り込む必要がある。この積極的な編集態度が幅広い方々の賛同を得、長年にわたって多数の愛用者に迎えられた最大の因ではなかろうかと考える。まことにありがたいことで、辞典を編集・出版する者にとって、これにすぎる喜びはない。
 さて、今回の改訂で最も力を入れた点は次の四つである。㈠、最新の研究成果を適切に踏まえて学問的な正確さを期したこと。㈡、活用本位の充実した内容と学習直結の行きとどいた解説を徹底させたこと。㈢、初めて古語辞典を手にする方々の身になって考え、引きやすさ・見やすさ・わかりやすさを十分に勘案したこと。㈣、とかく古典敬遠に傾きかねない現代の高校生の心を古典の世界へ誘い入れるべく、随所に興味深い参考学習記事を挿入したこと。以上の四点をさらに具体的に述べると、左記のとおりである。
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一、上代奈良時代)から近世(江戸時代)までの古典の中から語句四万三千を見出し語として採録し、重要語には星印をつけて示した。
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高校・大学での古典の学習や研究に十分役立つよう、有名古典を中心に、基本古語から難解な語句までを幅広く収めた。また、見出し語全部を学習上の重要度に基づき、大活字使用と星印とによって三段階に分けて標示し、重点学習が能率的になされるよう工夫した。なお、現代かなづかいによる見出しをも多く掲げて、歴史的かなづかいに不慣れな場合でも楽に引けるよう配慮した。
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一、古典にかかわりの深い地名・人名・作品名や、著名な和歌・俳句なども積極的に見出しに収録して解説した。
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一般古語のほかに、古典に出る人名・地名・作品名などの固有名詞約二千余を採録して解説し、また、教科書・大学入試問題によく出る和歌・俳句・狂歌・川柳ほぼ一千三百を全釈・補注つきで収めた。なお、見出し語で俳句の季語となるものにはその季を明示して俳句学習の一助とした。
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一、語義解説は的確・平明をむねとする一方、語の組成・語感を示し、重要語には関連事項の解説や掘り下げた詳説を付した。
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訳語や説明文では学問的な正しさとわかりやすさを第一義に考えた。また、ことばの成り立ちや構成を「組成」欄で、その語本来の意味・ニュアンスを「語感」欄で明らかにし、「参考」欄で語義の補足説明や関連事項の説明を行った。今回新たに設けた枠囲み記事の「学習」では、古文解釈上まちがえやすいところやわかりにくい点、覚えていると学習に便利なことなどを記した。
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一、文法に関する項目は特に目立たせて詳細な解説を施し、語の歴史的変遷にも言及した。
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文法上の解説は一般の教科書に載るいわゆる学校文法にのっとった。「接続」「語法」「語史」欄では、その語の接続関係や文法機能、時代による語の移り変わりを詳述した。形式の上では、今回、主要な助詞・助動詞を特別の大活字で目立たせ、さらに上部に飾りけいをつけた。助動詞には活用表を組み入れた。敬語にも十分なスペースを割いて詳しく説明した。
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一、用例には、語義の理解を助け、深める、適切でわかりやすい短文・短句を精選し、難しい部分には注釈や補足を添えた。
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見出し語の用例は、語義の区分に応じて、教科書・有名古典を軸に適切な例文を採用した。助詞・助動詞やその他の最重要語には、一語義に二つ以上の用例を掲げて、実際の用法がよくわかるよう配慮した。また、難解な用例には補説・部分訳を加え、引用箇所だけでは意味のとりにくいものには適宜語句を補足して文意をつかみやすくした。出典はつとめて詳しく示し、原典照合の便を図った。なお、今回、用例中の和歌・俳句が見出しとしても採録されている場合は、例えば、(歌意は987ページ)のように記し、理解の深化と関連学習に意を払った。
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一、本文中の挿絵や付録の図鑑、カラー版の口絵等を豊富に掲げた。
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視覚による理解を重視し、本文中に挿絵六百八十個、付録に二十五ページにわたる参考図鑑を収めた。また、カラーでなければ表すことのできない「古典にあらわれる色」「襲の色目」「鎧の縅」や絵巻類を口絵に、「旧国名地図」「万葉大和地図」「京都・伏見付近図」を見返しに掲げた。
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一、古典学習全般にかかわる実用記事や各種の表を付録に網羅し、別冊「古典学習の手引き」(四十八ページ)を特別付録とした。
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巻頭に「歴史的かなづかい一覧」、巻末に「国語・国文法用語解説」「主要文法事項一覧」「古典の背景」「国文学史年表(付、時代別文学概観)」「画引き 古典難読語一覧」「和歌・俳句索引(付、歌謡・狂歌・川柳・百人一首)」、その他の有益な内容を充実させた。今回新たにつけた特別付録「古語学習の手引き」は、初心者のための古語辞典入門書であり、また、古語・古文の効果的能率的学習法をコンパクトにまとめたものでもある。
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 おわりに、新版の刊行にあたり、立案から校正までの長い期間、熱心なご指導とご労苦を賜った編者の先生方に心から謝意を表したい。また、執筆・校正に多大のご協力をいただいた方々を左に記して、厚くお礼を申し上げる次第である。

 青木一男・荒木雅実・安西廸夫・飯塚幸司・伊原昭・岩下裕一・宇田零雨・大野邦男・加藤裕一・川口祥子・河鰭実英・小泉淳子・幸村武・小久保崇明・三条西公正・島田耕治・瀬戸由美子・平館英子・千葉豊・坪内正紀・寺田純子・中野沙恵・花輪茂道・細川修・堀川昇・待井新一・松下進・森昇一・森澄夫・山崎一穎・山下富雄・吉野辰男(敬称略、五十音順)

なお、この辞典の編者である今泉忠義先生が先年お亡くなりになった。初版以来、先生には絶大なご尽力を賜ってきた。あらためて深く感謝するとともに、心からご冥福をお祈りする次第である。
旺文社社長 赤尾好夫


❄旺文社古語辞典/第九版(松村明・山口明穂・和田利政編、1960年2月初版2001年10月九版、旺文社)

【編者のことば】
 二十一世紀を迎え、本辞典も新たな第九版を刊行することとなった。本書がこのように版をくり返すことができたのは、多くの読者という支えがあったからであり、本書を編集した者として感謝の念を強くすると共に、大きな喜びを感じている。本書はこれまでの版において、既に高い段階にまで達した内容を持っていた。にもかかわらず、ここで版を新たにするのは、ここ数年の学問の進歩はめざましく、従来、見えていなかった事が見えてきたことなどがあり、それを取り込む必要に迫られたからである。新たな学問的発見によって、古典の読み方は今まで以上に正確なものとなった。それは、古典を読む楽しさを今まで以上に大きなものとしたということである。本書を活用し、古典を読む楽しさを味わう人が更に増えるならば、編者としてこれに優る喜びはない。
 古典は我々の心の故郷である。我々よりも前の時代の人たちが何を、どのように考えたか、それを知る手がかりが古典にあるといってよい。最近の社会では新しい文物を求め、古典とは無縁な生活をおくることが多い。確かに、古典を読んだからといって、生活が便利になるということはない。新しい物を手に入れ、便利で経済的にも富んだ生活は楽しい。しかし、それだけに満足していくならば、物質的な豊かさは手に入ったとしても、心の豊かさは欠け、真の意味での豊かな生活とはほど遠いものになると言わざるを得ない。古典を楽しみ、その上に立って人とのふれ合いを楽しむ、そういうことがあって、初めて楽しく豊かな生活を享受できたというべきである。古典を楽しもう。そして、生活を豊かなものとしよう。
 古典の中の言葉は、今の我々にとって、別の言語かと思えるほどに日常の言葉とかけ離れつつあり、さながら外国語と思えるという意見さえしばしば耳にする。そのかけ離れた距離を埋める手がかりが古語辞典にある。今回の改訂により、本書は、これまで以上に読者の希望にこたえられる内容を備えたと確信する。
 古典の中の言葉を自分たちの身近なものとする。それによって、何気なく使っている日常の言葉の中に、これまで気付かなかった深い意味のあることに気付くこともあるであろう。その経験を積み重ねることで日本語に対する理解も深まる。そして、毎日の言語生活は一層内容の濃い、味わいのあるものとなり、充実した毎日となるはずである。古語を知り、古典を楽しみ、正活を豊かなものとしたい。
 既に以前より、我々と海外各地の人たちとの交流が盛んになっている。その際、我々が自分自身を理解し、自己を確立することが最も重要なこととして求められる。その一助となるのが古典であることを考え、その点からも古典を読むことを続けたい。本書は古典理解に大いに役立つ書となるに違いない。
 ここで第九版の刊行にあたり、執筆・校正等に多大のお骨折りをいただいた方々を左に掲げ、心からの感謝を申し上げる。

秋元誠・安達雅夫・新井一夫・飯塚幸司・五十嵐一郎・池田匠・石井正己・伊東昭彦・伊東達矢・岩下裕一・岩田秀行・大野一志・大野邦男・小田勝・小野利長・金子一彦・熊谷春樹・佐多芳彦・佐藤雅通・鮫島満・澤邊侃・高熊哲也・高橋正幸・瀧康秀・多比羅拓・土淵知之・冨岡豊英・中野沙恵・長尾直茂・永由徳夫・西井邦紀・長谷川康子・花部英雄・春田裕之・堀川昇・丸山哲哉・宮崎弘一・村上秀夫・森澄夫・若林孝輔(敬称略、五十音順)

平成十三年初秋
編者



❄旺文社高校基礎古語辞典/第二版(古田東朔監修、旺文社編集部編、1987年10月初版1997年2版、旺文社)

【はじめに】
 『枕草子』に「八つ、九つ、十ばかりなどの男児(をのこご)の、声はをさなげにてふみ読みたる、いとうつくし」とありますが、この「うつくし」を「美しい」と訳してはまちがいです。作者清少納言は「いかにもかわいらしい」の意味で使っているのです。このように昔と今とで意味の異なることばがあります。古文を学ぶときは、そうしたことばを理解する必要があります。同じく大切なのが文法です。例えば、「花咲きなむ」とあれば「花が咲いてしまうだろう。マタハ、花がきっと咲くだろう」、「花咲かなむ」とあれば「花が咲いてほしい」と訳し分けることになりますが、そうした力を養うことも肝要です。さらに欠かせないのが古典に関する一般常識です。『枕草子』に「方違へに行きたるに、あるじせぬ所(「方違え」に行ったたところ、ごちそうをしてもてなしてくれない家がおもしろくない)」と言っていますが、この部分をしっかりと理解するためには、当時の「方違へ」の慣習について知らなければなりません。
 本書は、古文学習に必要なことばと文法と一般常識が、本文の中に網羅されている辞典です。“はじめて古典を学ぶ人にもよくわかる内容にする”という点を第一義に考えて編集しましたから、初心者に使いやすいように必修知識を融合の形でまとめたわけです。この基本路線は、改訂版においても初版と同様です。
 今回の改訂では、特に教科書に即した内容の充実と見やすさを重視し、次のような特長を加えました。
 一、教科書に採られている単語・複合語・連語(古文独特の“言いまわし”を含む)、和歌(長歌)・俳句、名言などを幅広く増補した。
 ◯古語の関連学習を考慮し、「御覧じー」「ー 出づ」「ー渡る」などの基本動詞に他の語がついてできた複合動詞を新たに「学習」欄に掲げた。
 ◯教科書に頻出する長歌を新たに増補し、全訳をつけた。
 ◯古文に出てくる有名な名言を新たに用例に加え、そのことばの解説を施した。
 一、まぎれやすい語の「区別」欄を新設した。
 一、助動詞の活用・意味・接続を表組みで掲げた。
 一、係り結び・副詞の呼応のポイントを表組みで掲げた。
 一、有名古典(一六作品)の冒頭文を訳文つきで掲げた。
 一、付録の「文法のまとめ」を大幅に増補した。
 なお、この辞典の特長として好評であった「古典の常識」欄および「学習」欄は、増補したりわかりやすく整理しなおしたりして掲げました。
 この度の改訂では、新たに杉浦克己先生、肥爪周二先生にお加わりいただき、特に助動詞・助詞、敬語動詞を全面的に見ていただきました。次に、初版編集のさい執筆・校正に御尽力を頂いた先生方、今回新たに御協力を賜った先生方のお名前を記し、心から謝意を表する次第です。
 芦田川康司、東節夫、飯塚幸司、井上久美、岩佐美代子、上原信義、大木淑子、日下力、小室善弘、近藤泰弘、坂梨隆三、鈴木泰、鈴村一成、高沢健三、千葉千胤、鳥羽田重直、樋田賢二、中村一基、中村悟郎、中山崇、原田貞義、福田応彦、武藤元昭、望月善次、柳沢良一、渡辺剛志(五十音順、敬称略)
 この「高校基礎古語辞典」が、初版に引き続いて皆さんに活用され、大いに学習の実を上げられますよう心から期待しております。
一九九六年 初秋
監修者



❄旺文社全訳古語辞典/第三版(宮腰賢・桜井満・石井正己・小田勝編、1990年11月初版2003年10月3版2010年重版、旺文社)

【編者のことば】━━第三版の刊行にあたって━━
 日本には、一千年以上の歳月の風化に耐えて、読み継がれてきた古典があります。追体験ではあっても、自分の目で一語一語を追い、一千年以上の人生を味わうことができるとしたら、すばらしいことではありませんか。古典の学びはじめは、この一千年以上にも及ぶ人生の扉を開く瞬間だと言えましょうか。
 古典の学びはじめに、引きやすく、わかりやすく、覚えやすい古語辞典がほしい━━。こんな切実な声に応じて『旺文社全訳古語辞典』が生まれたのは、一九九〇年十一月のことであります。引きやすさ、わかりやすさ、覚えやすさに徹した、私どものさまざまな工夫が認められ、幸い、驚くほど多くの方々にご利用いただくことができました。たいそうありがたいことであります。
 初版の刊行以来、直ちに改訂の作業に着手しました。一語一語を吟味して筆を加え、補うべき語を新たに執筆しました。一九九六年十月刊行の第二版は、収録語数が二二、〇〇〇語になりました。
 今回の改訂では、次のことに意を用いました。見やすさを重視し、より引きやすく、よりわかりやすく、より覚えやすい古語辞典にすることをめざしたものであります。
 第一に、全編にわたって見出し語の一語一語を吟味して筆を加えただけでなく、差し替えが適切な語は差し替え、第二版刊行後の教科書・大学入試問題調査等に基づいて選び出された語などを補いました。その結果、新たに五〇〇語が加わり、収録語数が二二、五〇〇語になりました。また、形容詞・形容動詞については全活用形を{ }に示しました。
 第二に、カラー口絵を全面改稿し、色・服装・武具・地図・古典文学の展開など二一項目を巻頭にまとめました。
 第三に、語義パネル・意味用法ガイド・類語パネル・図解学習・発展などの囲みを設けました。
 今回の改訂の執筆にあたっては、青木俊明・伊東昭彦・大野一志・佐多芳彦・瀧康秀・多比羅拓・丸山哲哉・吉村逸正の諸先生のお力をお借りしました。お名前を記して、御礼申し上げます。
 初版以来お力尽くしをいただき、第二版に向けての改訂作業の半ばに急逝なさった桜井満先生に代わり、石井正己小田勝の両先生を編者にお迎えしました。
 末尾ながら、この辞書のために、惜しみなくお力をお貸しくださった諸先生、困難な編集作業に校正にとがんばってくれた辞書編集部の皆さんに心より御礼申しあげる次第であります。

 この『旺文社全訳古語辞典 第三版』が古典を学ぶ多くの方々に活用され、豊かな古典の扉を開く助けとなることを願っております。

 二〇〇三年 初秋
宮腰賢

[初版・第二版 校閲] 近田孝雄 野本寛一 林田孝和
[図版作成] 石垣栄蔵 神谷一郎 松原巖樹 さくら工芸社
[デザイン] 山下智子 吉田正子(中デザイン)   (敬称略 五十音別)