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知恵袋の回答/2018.10.26

大野晋著「日本語の起源」(岩波新書、1957年初版)

第Ⅳ章 古代日本語とアルタイ語朝鮮語
〜4.古代日本語の母音調和の発見
〜古い母音と新しい母音

 では、これ(※a・i ・u ・o・ö)以外の(※母音調和に関与していない) ï・e・ë はどうしたのか。それらの母音は、古い日本語本来の母音ではなく、後世になって新しく発達した母音であるらしい。というのは、ï・e・ë という音は、単語の終りの部分や、活用語尾に多く現われ、単語のはじめにくることがほとんどない。(現代語の辞典で、エ・ケ・セ・テ・ネなどで始まるエ列の部分はページ数が非常に少ない。それは、古代の日本語で、エ・ケ・セ・テ・ネなどで始まる単語がほとんどなかったからである。もし、そこに収められている漢語を除いてみれば、いっそうそれがはっきりと分るだろう。)
 また e や ë の母音を重ねる単語がないことも、エ列の音が後世の発達だということを示すものである。たとえば、 taka (タカ)、mata (マタ)、naga (ナガ)など、a a という母音を重ねた単語は多く存在し、tökö(トコ)、mötö(モト)など、 ö öという母音を重ねた単語も多く存在する。しかし、teke(テケ)、mete(メテ)、nëgë(ネゲ)などという母音の結合の単語は一つも存在しない。これはつまり、エ・ケ・セ・テ・ネなどエ列の音が古代日本語の本来の音でなく、ai⇒ë、ia⇒e というような変化によって、後世(といっても奈良時代以前であるが)発達した母音だかららしい。イ乙類の Ï も、 ui⇒ ï 、 öi⇒ï というような変化によって後に発達したらしい。それゆえ、ï・e・ë の三母音は、日本語の母音調和に関係しないのである。