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『なぞらふ』の自動詞四段用法について

古語辞典・国語辞典で『なぞらふ』の自動詞四段用法について調べるとこんな結果になった。

🔴『なぞらふ』の自動詞四段用法を挙げている辞書

★旺文社古語辞典/増補版(守随憲治・今泉忠義校閲、1962年2月、旺文社)
●なぞら・ふ【準ふ・准ふ・擬ふ】㈠〔自四〕準ずる。類する。比べられる。「見ぬ人の形見がてらは折らざりき身に━━・へる花にしあらねば」〈後撰・春中〉

★角川古語辞典/改訂版(武田祐吉久松潜一編、1963年1月、角川書店
●なぞら・ふ【準ふ】㈠自ハ四 類する。肩を並べる。「身に━━・へる花にしあらねば」〔後撰・春〕※自動詞下二段活用も挙げている。

★角川新版古語辞典(久松潜一・佐藤謙三編、1972年12月、角川書店
●なぞら・ふ【準ふ】㈠自ハ四 類する。肩を並べる。「身に━━・へる花にしあらねば」〔後撰・春中・52〕

三省堂古語辞典/修訂版(小松英雄編、1974年1月、三省堂
●なぞら・ふ【準ふ・准ふ・擬ふ】㈠(動四)準ずる。類する。並ぶ。「見ぬ人の形見がてらは折らざりき身に━━・へる花にしあらねば」[後撰・春中]

★新選古語辞典/新版(中田祝夫編、1974年2月、小学館
●なぞら・ふ【準ふ】〘「なずらふ」とも〙㈠〔自ハ四〕準ずる。類する。比べられる。「見ぬ人のかたみがてらは折らざりき身に━━・へる花にしあらねば」〈後撰・春中〉※自動詞下二段活用も挙げている。

★旺文社学習古語辞典/改訂版(鈴木一雄編、1977年1月、旺文社)
●なぞら・ふ【準ふ・准ふ・擬ふ】㈠自ハ四 ……と同じ程度である。……に準ずる。類する。肩を並べる。「見ぬ人の形見がてらは折らざりき身に━━・へる花にしあらねば」〈後撰・春中〉

★角川最新古語辞典/増補版(佐藤謙三・山田俊雄編、1980年1月、角川書店
●なぞら・ふ【準ふ】自ハ四 類する。肩を並べる。「身に━━・へる花にしあらねば」〔後撰・52〕

★古語大辞典(中田祝夫・和田利政・北原保雄編、1983年12月、小学館
●なぞら・ふ【準ふ・擬ふ】㈠〔自ハ四〕同列に並ぶ。準ずる。類する。比べられる。「見ぬ人のかたみがてらは折らざりき身に━━・へる花にしあらねば」〈後撰・春中・52〉

★例解古語辞典/第二版(佐伯梅友・森野宗明・小松英雄編、1985年1月、三省堂
●なぞら・ふ【準ふ・准ふ・擬ふ】㈠(動四)準ずる。類する。並ぶ。
[用例]「見ぬ人の形見がてらは折らざりき、身に━━・へる花にしあらねば」〔後撰・春中〕

★学研新古語辞典(市古貞次編、1986年12月、学習研究社
●なぞら・ふ【準ふ・准ふ・擬ふ】{[成立]「なずらふ」の母音交替形}
㈠{自ハ四}肩を並べる。準ずる。匹敵する。「見ぬ人の形見がてらは折らざりき身に━━・へる花にしあらねば」〈後撰・春中〉

★学研要約古語辞典(吉沢典男編、1987年11月、学習研究社
●なぞら・ふ【準ふ・擬ふ】㈠(自ハ四)準ずる。くらべられる。

★岩波古語辞典/補訂版(大野晋佐竹昭広・前田金五郎編、1990年2月、岩波書店
●なぞら・ひ【準ひ・准ひ・擬ひ】〘四段〙《ナゾヘの派生語。ナズラヒの母音交替形》甲でない乙が甲とほぼ同様の資格・価値をそなえていて、甲と同様に機能する。類する。準ずる。「見ぬ人にかたみがてらは折らざりき身に━━・へる花にしあらねば」〈後撰52〉

★最新詳解古語辞典(佐藤定義編、1991年10月、明治書院
●なぞら・ふ【準ふ・准ふ・擬ふ】㈠〈自ハ四〉比べられる。準ずる。類する。「身に━━・へる花にしあらねば」〈後撰・春中〉

★要語全訳必修古語辞典(平田喜信編、1992年2月、学習研究社
★なぞら・ふ【準ふ・擬ふ】㈠自ハ四 肩を並べる。準ずる。「見ぬ人の形見がてらは折らざりき身に━━・へる花にしあらねば」〈後撰・春中〉

★新明解古語辞典/第三版(金田一春彦編、1995年1月、三省堂
●なぞら・ふ【準ふ】㈠(自動ハ四)準ずる。類する。「身に━━・へる花にしあらねば」〔後撰・春中〕

講談社キャンパス古語辞典(馬淵和夫編、1995年11月、講談社
●なぞら・ふ【準ふ・擬ふ】㈠(自ハ四)準じる。肩を並べる。「見ぬ人の形見がてらは折らざりき身に━━・へる(=私などと肩を並べる)花にしあらねば」〈後撰・春中〉

★ベネッセ全訳古語辞典(中村幸弘編、1996年11月、ベネッセコーポレーション
●なぞら・ふ【準ふ・擬ふ】㈠[動詞][自](ハ四段)準じる。類する。肩を並べる。

★角川必携古語辞典全訳版(山田俊雄・吉川泰雄・室伏信助編、1997年11月、角川書店
●なぞら・ふ【準ふ】㈠自ハ四 類する。肩を並べる。「見ぬ人のかたみがてらは折らざりき身に━━・へる花にしあらねば」〔後撰・春中・52
〕[訳]逢えない人の形見をを兼ねて折ったのではない。(わが)身に比べられる花ではないので。

★旺文社高校基礎古語辞典/第二版(古田東朔監修、1997年、旺文社)
●なぞら・ふ【準ふ・准ふ・擬ふ】㈠自ハ四 準ずる。類する。肩を並べる。「見ぬ人の形見がてらは折らざりき身に━━・へる花にしあらねば」〈後撰・春中〉

三省堂全訳読解古語辞典/第二版(鈴木一雄・伊藤博・外山映次・小池清治編、2001年1月、三省堂
●なぞら・ふ【準ふ・准ふ・擬ふ】㈠[自ハ四]類する。準ずる。匹敵する。
〈参考〉自動詞は古くは「なずらふ」で「なぞらふ」の確かな例は少ない。

★旺文社古語辞典/第九版(松村明・山口明穂・和田利政編、2001年10月、旺文社)
●なぞら・ふ【準ふ・准ふ・擬ふ】㈠(自ハ四)準じる。匹敵する。肩を並べる。「身に━━・へる花にしあらねば」〈後撰・春中〉

★角川全訳古語辞典(久保田淳・室伏信助編、2002年10月、角川書店
●なぞら・ふ【準ふ・准ふ・擬ふ】㈠〔自ハ四〕類する。肩を並べる。匹敵する。

★全訳用例古語辞典/第二版ビジュアル版(菅野雅雄・中村幸弘編、2002年12月、学習研究社
●なぞら・ふ【準ふ・擬ふ】㈠自動詞・ハ四 肩を並べる。準ずる。
後撰集]春中「身になぞらへる花にしあらねば」私などと同列に並べられる(つまらない)花ではないので。

★旺文社全訳古語辞典/第三版(宮腰賢・桜井満・石井正己・小田勝編、2003年10月編、旺文社)
●なぞら・ふ【準ふ・准ふ・擬ふ】㈠(自ハ四)類する。肩を並べる。

★学研全訳古語辞典(小久保崇明編、2003年12月、学習研究社
●なぞら・ふ【準ふ・擬ふ】㈠自動詞・ハ四 肩を並べる。準じる。
後撰集]春中「身になぞらへる花にしあらねば」[訳]私などと肩を並べている(つまらない)花ではないので。

小学館全文全訳古語辞典(北原保雄編、2004年1月、小学館
●なぞら・ふ【準ふ・准ふ・擬ふ】㈠〔自ハ四〕同列に並ぶ。類する。準ずる。なぞらえる。[例]「見ぬ人の形見がてらは折らざりき身になぞらへる花にしあらねば」〈後撰・春中〉[訳](その桜の花は)お逢いしていないあなたへの(私の)形見にすることを兼ねて折り取ったのではありません。私などと肩を並べるような(つまらない)花ではありませんから。

★全訳全解古語辞典(山口堯二・鈴木日出男編、2004年10月、文英堂)
●なぞら・ふ【準ふ・准ふ・擬ふ】㈠[動](ハ四)匹敵する。同列に並ぶ。準じる。[例]身になぞらへる花にしあらねば〈後撰・春中〉

★東書最新全訳古語辞典(三角洋一・小町谷照彦編、2006年1月、東京書籍)
●なぞら・ふ【準ふ・准ふ・擬ふ】㈠〔自ハ四〕類する。準ずる。肩を並べる。匹敵する。

★国語大辞典(尚学図書編、1981年12月、小学館
●なぞら・う【準ふ・准ふ・擬ふ】㈠〘自ハ四〙=なずらう(準)・片仮名本後撰ー52、「身になぞらへるいろにかさねは」

🔴『なぞらふ』の自動詞を下二段活用とする辞書

★角川古語辞典/改訂版(武田祐吉久松潜一編、1963年1月、角川書店
●なぞら・ふ【準ふ】㈠自ハ下二 類する。肩を並べる。「━━・へ寄るべうもあらず」〔浜松中納言〕※自動詞四段活用も挙げている。

★新選古語辞典/新版(中田祝夫編、1974年2月、小学館
●なぞら・ふ【準ふ】〘「なずらふ」とも〙㈡〔自ハ下二〕準ずる。類する。比べられる。「中納言の世に知らずなまめい給へりし御けしき、(中略)━━・へよるべうもあらず」〈浜松中納言・3〉※四段活用も挙げている。

★ベネッセ古語辞典(井上宗雄・中村幸弘編、1997年11月、ベネッセコーポレーション
●なぞら・ふ【準ふ・擬ふ】㈠〔自ハ下二〕準じる。類する。「世に知らずなまめい給へりし御気色……━━・へよるべうもあらず」〈浜松・3〉

三省堂詳説古語辞典(秋山虔渡辺実編、2000年1月、三省堂
●なぞら・ふ【準ふ・准ふ・擬ふ】㈠[自ハ下二]準ずる。肩を並べる。[例]「譲位(おりゐ)の帝になぞらへて女院(にょうゐん)と聞こえさす」〈栄花・4〉

🔴『なぞらふ』の項目はあるが、自動詞は挙げていない辞書

★參考古語辞典學生版(江波煕編著、1940年2月、中文館書店)

講談社古語辞典(佐伯梅友・馬淵和夫編、1969年、講談社

★基本古語辞典/三訂版(小西甚一著、1974年1月、大修館書店)
●なぞら・ふ【準ふ・擬ふ】
〘四段の確かな例は未見。従来は「見ぬ人の形見がてらは折らざりき身に━━・へる花にしあらねば」〔後撰・春中〕を引くが、天福本・中院本・貞応二年本・堀河本・二荒山本、いずれも「なずらへる」となっている〙

★古語林(林巨樹・安藤千鶴子編、1997年11月、大修館書店)

★大修館全訳古語辞典(林巨樹・安藤千鶴子編、2001年11月、大修館書店)

🔴『なぞらふ』の項目が無い辞書

三省堂セレクト古語辞典(桑原博史編、1988年3月、三省堂

★ベネッセ全訳コンパクト古語辞典(中村幸弘編、1999年11月、ベネッセコーポレーション

三省堂全訳基本古語辞典/第三版増補新装版(鈴木一雄編、2007年12月、三省堂


三省堂全訳読解古語辞典が《自動詞は古くは「なずらふ」で「なぞらふ」の確かな例は少ない》と書いているが、少ないも何も用例として挙げられているのが総て後撰集の伊勢の歌であるという事は、これが唯一の用例なのだろうと判断するしか無い。
しかも大修館基本古語辞典の小西甚一氏の注記には〘四段の確かな例は未見。従来は「見ぬ人の形見がてらは折らざりき身に━━・へる花にしあらねば」〔後撰・春中〕を引くが、天福本・中院本・貞応二年本・堀河本・二荒山本、いずれも「なずらへる」となっている〙とあり、こうなるとどうも『なぞらふ』の自動詞四段活用の存在自体が疑われる。大修館基本古語辞典が高校生相手の辞書だからと言って学問的には決して妥協したり適当に済ませたりしていないのは清々しい。
『なずらふ』に自動詞四段活用があるのだから『なぞらふ』にもあっておかしくは無いのだが。

また一部の古語辞典で自動詞下二段活用の例として挙げられている浜松中納言物語や栄花物語の用例は別の辞書では他動詞下二段活用の用例として載っていたりするので自動詞下二段活用の存在も甚だ疑わしい。

語釈では何と言っても岩波古語辞典の語釈の独自性が光る。はっきり言って他の辞書の語釈はどれも同じ。