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古語辞典比較〜神(かみ kamï )①古語辞典(大型)

各古語辞典・国語辞典の「神(かみ kamï )の語釈を比較してみる。派生語関連は除く。



❂時代別国語大辞典上代編(上代語辞典編修委員会編〈代表:沢瀉久孝〉、1967年12月、三省堂

かみ〈乙〉[神・雷](名)
❶神。複合語を作る場合、交替形カムとなることもあるが、カミ・カム両形をもつものもあり、どちらかを決定する基準がない。ここでは不明の場合は原則としてカムの形であげた。神の在る場所はカムナビ・ミモロ・モリなどと呼ばれた。「みもろに築くや玉垣つき余し誰(タ)にかも依らむ加微(かみ)の宮人」(記雄略)「太秦(ウツマサ)は柯微(かみ)とも柯微(かみ)と聞こえ来る常世の柯微(かみ)を打ち懲(キタ)ますも」(皇極紀三年)「天地の可未(かみ)を祈(コ)ひつつ我待たむ」(万3682)「高千穂の岳(タケ)に天降(アモ)りしすめろきの可未(かみ)御代より」(万4465)「吾が祭る神(かみ)にはあらずますらをにつきたる神(かみ)ぞよく祀るべし」(万406)「大汝(オホナムチ)少彦名(スクナビコナ)の神(かみ)こそば名づけそめけめ」(万963)「夫筑波岳、高秀于雲、最頂西峯崢嶸、謂之雄神(かみ)、不令登臨」(常陸風土記筑波郡)「於是ニノ神(かみ)誅(ツミナフ)諸不順鬼神(かみ)等(タチ)」(神代紀下)
❷人間に危害を及ぼすもの、特に猛獣など。その威力を畏怖し、幾分尊敬の念をこめて神と呼んだ。「韓(カラ)国の虎(トラ)といふ神(かみ)を生け取りに八つ取り持ち来(キ)」(万3885)「大口の真神(かみ)の原に」(万1636)「山逢二狼相闘汗血……祈請曰、汝是貴神(かみ)、而楽(コノム)麁行」(欽明前紀)「狼 於保加美(オホカミ」(和名抄)
❸雷。ナルカミとも。「道の後古波陀嬢子(シリコハダヲトメ)を迦微(かみ)のごと聞こえしかども相枕まく」(記応神)「伊香保嶺(イカホネ)に可未(かみ)な鳴りそね我が上(へ)には故はなけども子らによりてぞ」(万3421)「天雲をほろに踏みあだし鳴る神(かみ)も今日にまさりてかしこけめやも」(万4235)「神(かみ)のごと聞こゆる滝の白浪の」(万3015)
【考】上代人は、汎神論的な考え方の下にすべての自然物に神秘的な力を認めて畏怖し、信仰の対象とした。「ゆきそふ川之神(カハノカミ)も大御饌に仕へ奉ると上つ瀬に鵜川を立ち下つ瀬に小網(サデ)さし渡す」(万38)などの川の神は川を支配する神で、獲物を与えるとともに洪水などの祟りをおこす神であり、「次ニ生月神(ツキノカミ)」(神代紀上)は、月の、夜を照らし、日月を数えさせる働きを神格化したものである。「時飛廉(カゼノカミ)起風、陽侯(ウミノカミ)挙浪」(神功前紀)では固有の自然神と中国に典拠をもつ文字とを結びつけている。山や森そのものも、時として神とみなされた。神の力に対する恐れと、その好意をのぞむ心持とから数々の禁忌があり、また交通の要所ではそこを支配する神に対して幣帛が捧げられた。神の意を損ずると、人間に対して災いをなす。これが、荒ブル神・チハヤブル神である。自然神に対しては、国土経営の実をあげた大汝(オホナムチ)少彦名(スクナビコナノ)神のような人間神がある。これら国ツ神に対して、さらに優位にある天ツ神の観念があり、国家態勢が確立してゆくとともに皇祖神の観念と結びつき、天皇を神とみる思想を生み出したといわれる。これらの神々は宮に祀られ、公に祭祀の対象となり、朝廷の儀礼と密接に結びついていた。神社の領地として定められた地がカムトコロであり、そこに属する人民がカムべである。これとともにそれぞれの氏族においても「右依可私氏神泰、暇所請如件」(古文書六、宝亀三年)のような氏神の観念があり、祖先に当たる神を祭った。偶像崇拝の風も「又在石神、高二丈、周四丈」(出雲風土記飯石郡)「此嶋西辺在石神、形似仏像……此神顔有五色之玉、又胸有流涙是亦五色」(播磨風土記揖保郡)などに見えるし、大和飛鳥寺周辺に残る神像などにその実態を見ることができる。なお、カミのミは乙類で、上(カミ)の場合と異なるが、「上岡(カミヲカ)里……出雲国阿菩大神聞大倭国畝火・香山・耳梨三山相闘、此欲諌止上来之時、到於此処、乃聞闘止、覆其所乗船而坐之、故号神阜(カミヲカ)」(播磨風土記揖保郡)によれば「上」と「神」とを相通させているから、両者を語源的に結ぶ意識もあったようだ。



❂角川古語大辞典/第一巻(中村幸彦・岡見正雄・阪倉篤義編、1982年6月、角川書店

かみ【神】名
「ミ」の上代特殊仮名遣いは乙類で、甲類の「ミ」を用いる上(かみ)と異なるが、『播磨風土記』に「上岡」と「神阜」を相通させて地名伝説としているから、両者を語源的に結ぶ意識は早くから生じていたと見られる。複合語を作る場合、交替形「かむ」となることが多い。
❶人間を超越した能力を持つ絶対者。宗教的信仰の対象。古代の日本人にとって、八百万神(やほよろづのかみ)の語が示すように、神はきわめて多数であったと考えられ、汎神論的な考え方のもとに、すべての自然物に神秘的な力を認めて畏怖し、信仰の対象としたが、「もの」が、精霊を意味し、随所に活発な活動をするのに対して、神は本来、公的な威厳を持った性格を帯びていたものと考えられ、それぞれの神の属性は、それをいただいている集団の性格や能力を反映していた。『古事記』や『日本書紀』の神話に語られているように、天照大神(あまてらすおほみかみ)を祭る祭祀圏の拡大は、大和朝廷の進展と密接な関係を持ち、服従させられた集団の神は、しばしば悪神の性格を付せられ、また、国神(くにつかみ)に対する天神(あまつかみ)の優位の観念が生じた。国家体制が確立してゆくとともに、「神」の文字から、儒教における祖先崇拝に基づく皇祖神の観念と結びつき、天皇を神と見る思想を生み出した。それぞれの氏族も、氏神(うぢかみ)を祭った。一方、集団内部の者から畏敬の念をもって見られていた神が一般化し、「もの」と呼ばれていた雑神・小神の類も神と呼ばれるようになった。神は、高い山の峰に降って来ると考えられたり、海のかなたから訪れて来ると考えられたりした。神の在る所は、「かむなび」「もり」などと呼ばれ、降臨のための「みもろ」を築くほか、もとは殿舎を造ることがなかったが、やがて神社(じんじや)が造られるようになった。律令神祇官(じんぎくわん)が置かれて、神社制度が整えられ、『延喜式神名帳』には全国の三千百三十二座が登録せられ、平安中期には二十二社の制度がとられた。神社の祭神に位階を授けることも奈良時代に始り、特に平安時代には祈願の報賽(ホウサイ)などのため、しばしば神位が贈られた。民間では御霊(ごりやう)の神の信仰が盛んになり、室町時代には特に福神(ふくのかみ)が喜ばれ、貧乏神(びんばふがみ)が嫌われた。また、それぞれの神々の祭祀団体が思い思いに活動し、仏教との習合が見られ、本地垂跡(ほんぢすいじやく)の思想が生じ、中世以降
神道(しんたう)が形成せられた。偶像崇拝の風も石神(いしがみ)などに早く見られるが、神仏混淆に伴って多くの神像が作られている。神意を慰め、神に奉納する芸能が早くから発達し、能楽では、五番立(ゴバンダテ)の第一に、神をシテとする脇能(わきのう)がある。神の詠んだ和歌、神の納受(なふじゆ)した歌の説話も多く語られ、勅撰集には神祇(じんぎ)の部立(ぶたて)が置かれる。連歌では一座三句物、名神(なのかみ)と名所(めいしよのかみ)に分ける。中世末期、キリスト教が伝来し、その「でうす」をも神と呼んだ。
㋑天地自然の万物を領有し、支配する存在。また、その霊。「天地の可未(かみ)を祈(こ)ひつつあれ待たむはや来ませ君待たば苦しも」〔万葉・3682〕
神武天皇より前に存在した人間神。「天地初めて発けし時、高天の原に成れる神の名は、天之御中主神」〔記・上〕
天皇の尊称。現人神(あらひとがみ)とも。「あぐらゐの加微(かみ)の御手もち弾く琴に舞するをみな常世にもがも」〔記歌謡・96〕
㋥神社の祭神。「君も御馬よりおり給ひて、御社のかたををがみ給ふとて、神にまかり申しし給ふ」〔源氏・須磨〕
㋭恐るべき存在。その威力を畏怖し、いくぶん尊敬の念を込めていう。「韓国の虎といふ神を」〔万葉・3885〕「獣と云へども此れ神也」〔今昔・5・17〕
㋬雷(かみなり)。「なるかみ」とも。「道の後古波陀少女を迦微(かみ)の如聞えしかども相枕まく」〔記歌謡・45〕「神鳴るさわぎにえ聞かざりけり」〔伊勢・6〕
❷江戸神(えどがみ)の略。「わる井志庵・北里喜之介なぞかみにつれ、一ぱいにしやれる」〔江戸生艶気樺焼〕「アノもう幇間(おたいこ)だの神(かみ)だのといふ者がしみ\"/にくいよ」〔浮世風呂2・下〕
❸②より転じて、居候。食客。「それから大うちにうつて、おとゝしのくれから、なには丁のおじのかみだ」〔大通秘密論〕



❂古語大辞典(中田祝夫・和田利政・北原保雄編、1983年12月、小学館

かみ〈乙〉【神】〔名〕
①天地の創造主。自然を生育し支配する、最高で神聖な存在。古代人は自然物に神秘的な力を認めて畏怖(いふ)し、宗教的信仰の対象にした。「天地の━━[神]も助けよ草枕旅ゆく君が家に至るまで」〈万葉・4・549〉。「いとまばゆきまでねび行く人のかたちかな。━━などは目もこそとめ給へ」〈源氏・葵〉。
②神話で、人格化された存在。開闢以来、神武天皇に至るまでの人格神。「天地初めてひらけし時、高天(たかま)の原になれる━━[神]の名は、天之御中主の━━[神]」〈記・上・別天神五柱〉。「ここにいます━━[神]、名は道主日女命(みちぬしひめのみこと)、父なくして児を生みましき」〈播磨風土記・託賀郡〉。
天皇の尊厳を称する語。「あらひとがみ」とも。「呉床居(あぐらゐ)の━━[加微]の御手もち弾く琴に舞(まひ)する女(をみな)常世にもかも」〈記・下・雄略・歌謡96〉「橿原の日知(ひじり)の御代ゆ生(あ)れましし━━[神]のことごと」〈万葉・1・29〉。
④人力を超越した強力を有する存在。恐れかしこむべきもの。霊妙なる存在。「鼠のかたちを見るにただの鼠にあらず。獣といへどもこれ━━なり」〈今昔・5・17〉。「豹 奈賀豆加美」「豺狼 於保加美」〈和名抄〉。
⑤雷。雷鳴。「なるかみ」とも。「道の後(しり)古波陀嬢子(こはだをとめ)を━━[迦微]のごと聞こえしかども相枕まく」〈記・中・応神・歌謡45〉。「かきくらし雨降りて、━━いと恐ろしう鳴りたれば」〈枕草子・99※段数は日本古典文学大系に拠ると思われる〉。
⑥遊里以外の町方(まちかた)に住み、特定の旦那の御機嫌を取って、遊里などへの供をして暮らしている芸人の類。「のだいこ」とも。「わる井志庵、北里喜之介なぞ━━に連れ」〈黄・江戸生艶気樺焼〉。「幇間(おたいこ)だの、━━だのといふ者がしみじみ憎いよ」〈滑・浮世風呂・2下〉