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古語辞典比較〜神(かみ kamï )③古語辞典(中型~小型)一般用〜岩波・学研新他

❂新選古語辞典/初版(中田祝夫編、1963年4月、小学館

かみ【神】〔名〕〘語源不詳。高く霊なるものの義か〙
①この世界を創造し、生育し、支配する最高で神聖な存在。
天皇を神格化していう語。「橿原(かしはら)のひじりの御代ゆ、生(あ)れましし━━のことごと」〈万・29〉
③すべて強力で人力を超越した存在。「(オオカミニ対シ)『汝(な)は是貴(かしこ)き━━』」〈欽明紀・即位前〉。「(富士山ハ)霊(くす)しくもいます━━かも」〈万・319〉。
④かみなり。「━━のごと聞こゆる滝の白波」〈万・3015〉。
⑤近世、太鼓持ち・取り巻き連中の異称。
※新選古語辞典/新版(中田祝夫編、1974年2月、小学館)も同じ。



❂学研古語辞典(吉沢典男編、1968年9月、学習研究社

かみ【神】〘名〙
①「天皇」を尊敬していうことば。「橿原(かしはら)の日知(ひじり)の御代ゆ生(あ)れましし神のことごと……天の下知らしめししを」〔万・29〕
②雷。「神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、」〔伊勢・6〕[同]いかづち。なるかみ。
③[近世]「太鼓持ち(たいこもち)」の別名。
※「学研要約古語辞典」(1987年11月)も同じ。



講談社古語辞典(佐伯梅友・馬淵和夫編、1969年12月、講談社

かみ【神】(名)
①神。「八百万(やほよろづ)の━━」〈記・神代〉
②[天皇アマテラスオオミカミの子孫とすることから]天皇の尊称。「生(あ)れましし━━のことごと……天の下知らしめししを」〈万・29〉「すめろぎの━━の命(みこと)」〈万・4089〉
③人力を超越した動物。霊感を与える自然。「韓国(からくに)の虎(とら)といふ━━を生け取りに八頭(やつ)取り持ち来(き)」〈万・3885〉
※「講談社学術文庫古語辞典」(1979年3月)も同じ。



❂精解古語辞典(金子武雄・三谷栄一編、1970年4月、金園社)

かみ〔神〕(名)
天皇の尊敬語。
「皇祖〈すめろぎ〉の━━の御門〈みかど〉を懼〈かしこ〉みと侍従〈さもら〉ふ時に」〈万〉
②神聖なもの。おそるべきもの。
「韓国〈からくに〉の虎とふ━━を生取りに」〈万〉
③雷。
「━━〈雷〉のごと聞えしかども」〈記〉
④取巻き。お太鼓たたき。
「お太鼓だの━━だのといふものが、しみじみ憎いよ」〈三馬・浮世風呂〉 



❂岩波古語辞典/初版(大野晋佐竹昭広・前田金五郎編、1974年12月、岩波書店

かみ【神】《古形カムの転。奈良時代の発音ではカミ(神)は kamÏ 、カミ(上)は kami で別であったから、カミ(上)にいるからカミ(神)というとする語源説は成立し難い》
❶《上代以前では、人間に対して威力をふるい、威力をもって臨むものは、すべてカミで、カミは人間の怖れと畏みの対象であった。人間はこれに多くの捧げ物をして、これがおだやかに鎮まっていることを願うのが基本的な対し方であった》
①雷・虎・狼・蛇など、荒れると人間に対して猛威をふるうもの。「伊香保嶺(ね)に━━な鳴りそね」〈万3421〉。「韓国の虎とふ━━を生け取りに八頭(やつ)取り持ち来」〈万3885〉
②姿が人間の目に見えず、威力を持ち、時に人間にとりつき、神がかりするもの。「丈夫(ますらを)に憑(つ)きたる━━そよく祭るべき」〈万406〉。「『吾は……葛城の一言主(ひとことぬし)の大━━そ』と申しき。天皇ここに惶畏(かしこ)みて白(まを)さく『恐し、我が大━━。〔姿ノ見エル〕うつしおみにましまさむとは思はざりき』と申して……故(かれ)この一言主の大━━は彼(そ)の時に顕はれたまひしなり」〈記雄略〉
③山・坂・川・海・道などを領有し、鎮座して、そこを通行する人間に威力をふるうもの。それに対して人間は通行の許しを乞うて幣(ぬさ)などを奉る。「鳥が鳴く東(あづま)の国の恐(かしこ)きや━━の御坂に」〈万1800〉。「玉桙の道の━━たち幣(まひ)はせむ」〈万4009〉
④天上界を支配し、森や木に降下してくるもの。「天つ神」といわれ、「国つ神」と共に地上を統治する権力を持ち、また、社会生活を平穏に保つ力があると信じられた。人間はこれを統治者の祖先と認め、また、降雨・鎮風・鎮火・戦乱平定などを祈った。「是に左の御目を洗ひたまふ時に成れる━━の御名は天照大御神(あまてらすおほみかみ)」〈記神代〉
⑤地域を領有して支配するもの。「越(こし)の中国内(くぬち)ことごと山はしもしじにあれども川はしもさはに行けども、すめ━━のうしはきいます新川のその立山に」〈万4000〉。「幣帛を五畿内の群神(かみたち)に奉る。其の丹生の河上の━━には黒毛の馬を加ふ。旱(ひでり)すればなり」〈続紀天平宝字7・5・28〉。「越前国言(まう)す、山災止まずと。使を遣はして部内の━━に奉幣して之を救ふ」〈続紀慶雲3・8・3〉。「薩摩隼人を征する時に、大宰、部する
所の━━九処に禱祈る」〈続紀大宝2・10・3〉
⑥最高の支配者。天皇。「大君は━━にしませば天雲の雷(いかづち=雷丘)の上に廬(いほ)らせるかも」〈万235〉
⑦祖先神。「大倭忌寸五百足(おほやまとのいみきいほたり)を以て氏の上と為し、━━の祭を主(つかさど)らしむ」〈続紀和銅7・2・9〉
❷《平安時代以後、古いカミの観念の大部分は引きつがれたが、奈良時代に始まる本地垂迹〈ほんぢすいしやく〉の説が広まり、仏とカミとに多少の融合が起り、カミは荒荒しく威力をふるう存在としてよりも、個個人の行為に禁止や許可を与える面が強く現われる。しかし仏が人間を救い、教導し、法を説くものとして頼られたのに対し、カミは好意・親愛の念で対されることなく、場合によっては鬼・狐・木魂と同類視されて畏れ憚られた。また、中世末期キリスト教の伝来に際し、デウスはカミと訳されず、日葡辞書のカミの項には「日本の異教徒の尊ぶカミ」とだけ説明されている》
①人間の行動を禁じたり判定したりするもの。「争へば━━も憎ます」〈万2659〉。「霊(たま)ぢはふ━━も我をば打棄(うつ)てこそ(見捨テテ下サイ)しゑや命の惜しけくも無し」〈万2661〉。「━━のいさむる〔道〕よりもわりなし」〈源氏浮舟〉
②仏の化身。本地垂迹説では、神は仏がこの世(日本)にあらわれた仮の姿であるとされる。「誠に跡を垂れ給ふ━━ならば、助け給へ」〈源氏明石〉。「大海江河等の━━も、皆各懺悔を至して所居に還りぬ」〈今昔3ノ34〉
③㋑鬼や狐などの類。人間をおびやかすもの。「狐は、さこそは人をおびやかせど……鬼か、━━か、狐か、木魂か」〈源氏手習〉
㋺強くて勇武なもの。「鬼にも━━にも逢はうといふ一人当千の兵(つはもの)なり」〈平家9・木曽最後〉。「〔勇武ニヨッテ〕名を後代にあげ、今は━━と祝はれたる鎌倉権五郎景政が四代の末葉」〈保元中・白河殿攻め落す〉
▶世界の神観念には垂直に降下する神と、水平に移動する神があるとされる。わが国には後者にあたる、人間を訪れて来て、去る神もあったというが、古典には、それはカミの語で表現されてはいない。
✝ kamÏ
※「補訂版」(1990年2月)も同じ。



❂例解古語辞典/初版(佐伯梅友・森野宗明・小松英雄編著、1980年1月、三省堂

かみ【神】〈名〉
❶「天〈あま〉つ神」や「国つ神」など、天上や地上を統治するもの、自然界にあって山・海などに宿り、それを支配するものなど、人間に対して危害や加護を加えると思われる神聖なもの。神。
[用例]「━━など、空に(=空カラ)めでつべき容貌〈かたち〉かな」〔源氏・紅葉賀〕
[解]光源氏の顔かたちについていったところ。
天皇に対する敬称。
[用例]「山川も依〈よ〉りて仕ふる━━の御代〈みよ〉かも」〔万葉1・38・人麿〕
❸恐怖の対象となるような恐ろしいものをさしていう語。
[用例]「韓国〈からくに〉の虎〈とら〉といふ━━を生け捕りに」〔万葉16・3885〕
❹【雷】かみなり。
[用例(a)「━━鳴り静まらで、日ごろ(=数日)になりぬ」〔源氏・明石〕
[用例(b)「夜に入りて━━鳴り、雨しきりに降りて、臥〈ふ〉せる上より漏〈も〉り」〔奥の細道・飯坂〕
※「第二版」(1985年1月)も同じ。



❂例解古語辞典/三版(佐伯梅友顧問、小松英雄鈴木丹士郎土井洋一・林史典・森野宗明編著、1992年11月、三省堂

かみ【神】〈名〉
❶「天〈あま〉つ神」や「国つ神」など、天上や地上を統治するもの、自然界にあって山・海などに宿り、それを支配するものなど、人間に対して加護、ときには危害を加えると思われる神聖なもの。神。
[用例]「海賊の恐りありと言へば、━━、仏を祈る」〔土佐・一月二十三日〕
天皇に対する敬称。
[用例]「山川も依りて仕ふる━━の御代かも」〔万葉1・38・人麿〕
❸恐怖の対象となるような恐ろしいもの。
[用例]「韓国(からくに)の虎(とら)といふ━━を生け捕りに」〔万葉16・3885〕
❹【雷】かみなり。
[用例(a)「━━鳴り静まらで、日ごろ(=数日)になりぬ」〔源氏・明石〕
[用例(b)「夜に入りて━━鳴り、雨しきりに降りて、臥〈ふ〉せる上より漏〈も〉り」〔奥の細道・飯坂〕



❂学研新古語辞典(市古貞次編、1986年12月、学習研究社

かみ【神】{名}
❶〔人の目には見えないが、超自然的能力をもつ存在〕神。「ゆき副(そ)ふ川の━━も大御食(おほみけ)に仕へまつると」〈万・38〉
❷〔神話で、人格化され、国土を創造し支配したとされる存在〕神。「次に成りませる━━の名は、国之常立(くにのとこたち)の━━」〈記・神代〉
❸最高の支配者である天皇を神としてみた語。「かけまくもあやにかしこし天皇(すめろき)の━━の大御代(おほみよ)に」〈万・4111〉[同]現人神(あらひとがみ)
❹雷。「━━のごと聞こゆる滝(たき)の白波の」〈万・3015〉「━━いたう鳴り騒ぐ暁に」〈源・賢木〉
❺神社の祭神。「━━は、松の尾」〈枕・神は〉
❻江戸時代、遊里の外に住み、遊客の供をする取り巻き連中。「幇間(おたいこ)だの、━━だのといふ者がしみじみ憎いよ」〈滑・浮世風呂・2下)



❂ベネッセ古語辞典(井上宗雄・中村幸弘編、1997年11月、ベネッセコーポレーション

かみ【神】〔名〕
❶自然界の神聖な存在。天地・山河・草木などに宿り、これを支配する精霊。
「山の━━、河の━━、また穴戸の━━を、皆言向〈ことむ〉け和〈やは〉して」〈記・中〉
❷雷。雷神。
「━━の鳴りつる音になむ」〈蜻蛉・中〉
❸強いもの。恐ろしいもの。畏怖すべき存在。
「獣といへどもこれ━━なり」〈今昔5・17〉
❹神話に出てくる神。
大国主の━━の兄弟、八十神〈やそがみ〉ましき」〈記・上〉
❺神社に祭られ神格化された人や物の霊。「(菅原道真は)北野の━━にならせ給ひて」〈大鏡・2〉
天皇の敬称。
天皇〈すめろき〉の御子のいでましの手火〈たび〉の光そここだ照りたる」〈万2・230〉
❼[遊里語]遊客のとりまきの異称。幇間
《事典》
かみ【神】[宗教]
一般に、人間を超えた力をもつ霊的存在をいう。八百万〈やおよろず〉の神、八十万〈やそよろず〉の神ということばもあるように、、古来、日本では山川・草木など森羅万象に神々が宿ると信じられた。こうした多くの神々を祭ることによって、生活の安寧を願った。この土着の神に対して、異郷から時を定めて来訪し、幸せをもたらす客神〈まろうどがみ〉の存在も信じられた。このような神々が零落して、オニ・モノ・タマとなり、一方で神格化され『古事記』『日本書紀』にみえる神々となったと考えられる。



❂古語林(林巨樹・安藤千鶴子編、1997年11月、大修館書店)

かみ【神】(名)
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高天原〈たかまのはら〉に成れる神の名は、天之御中主〈あめのみなかぬし〉の神
高天原に現れ出た神様の名は、天の御中主の神]
 〈記・上〉
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❶天地自然を創造・統治する偉大なもの。
[例]天地〈あめつち〉の神も助けよ
[天地の神様も助け給え]〈万・4〉
❷人間の力を越えた強いもの・恐ろしいものなど。
[例]獣といへどもこれ神なり
[獣といってもこれは人間の力を越えた強いものである]〈今昔・5〉
❸神社にまつられ神格化された人や物の霊。
[例]北野の神にならせ給ひて
[北野神社の霊とおなりになって]〈大鏡・時平〉
❹雷。いかずち。
[例]鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り
[鬼のいる所とも知らずに、雷までたいへん激しく鳴り]〈伊勢・6〉
❺〔尊敬語〕天皇の敬称。
[例]橿原のひじりの御世ゆ生〈あ〉れましし神のことごと
[橿原の天皇(=神武天皇)の御代以来お生まれになった天皇のすべての方々が]〈人麻呂・万・1〉



三省堂詳説古語辞典(秋山虔渡辺実編、2000年1月、三省堂

かみ【神】[名]〘他の語の上に付いて複合語を作るときには「かむ」とも〙
❶天地万物を創造・支配する神聖で偉大な存在。人間の知恵でははかりしれない能力をもち、宗教的民族的信仰の対象となる存在。神。
[例]「天地〈あめつち〉の神を乞ひつつ我〈あれ〉待たむはや来ませ君待たば苦しも」〈万葉・15・3682〉
❷神話の中で、人格化され、国土を創造・支配したとされる存在。人格神。神。
❸広く人間の能力を超越した畏怖すべき存在。幸福をもたらして加護を与える超越的存在。災いをもたらして罰を与える超越的存在。また、とくに、猛獣など、人間に危害を加える恐ろしいもの。
[例]「韓国〈からくに〉の虎といふ神を生け捕りに八つ捕り持ち来〈き〉」〈万葉・16・3885長歌
天皇を神格化していう語。天皇の尊称。
[例]「玉だすき 畝火〈うねび〉の山の 橿原の 聖の御代ゆ 生〈あ〉れましし 神のことごと つがの木の いや継ぎ継ぎに 天の下 知らしめししを 天〈そら〉にみつ 大和を置きて あをによし 奈良山を越え いかさまに 思ほしめせか 天離〈あまざか〉る 鄙〈ひな〉にはあれど 石走〈いはばし〉る 近江〈あふみ〉の国の 楽浪〈ささなみ〉の 大津の宮に 天の下 知らしめしけむ 天皇〈すめろき〉の 神の尊〈みこと〉の 大宮は ここと聞けども 大殿は ここと言へども 春草の 繁く生ひたる 霞立ち 春日〈はるひ〉の霧〈き〉れる ももしきの 大宮所 見れば悲しも」〈万葉・1・29長歌柿本人麻呂
[訳]たすきのような畝傍山の、そのふもとにある橿原で即位された天皇の、その御世いらい神としてこの世に姿を現された歴代の天皇たちが、つがの木のように次々とあの地で天下を治められてきたのに、〔そらにみつ〕そのすばらしい地を捨てて、〔あをによし〕奈良山を越え、いったいどうお考えになってなのか、畿内を離れたいなかではあるが、〔いはばしる〕近江の国の、楽浪の、大津の宮で、天下を治められたという、その天皇の宮殿はここだと聞くけれど、その御殿はここだというけれど、春草が茂り生えている、霞が立って春の日がおぼろに霞んでいる、荒涼とした〔ももしきの〕宮殿の廃墟、そこを見ると悲しいことだ。
❺死後に神社などに祭られた霊。祭神。また、その霊が祭られた神社。
❻(神のように恐れたことから)雷神。雷。雷鳴。
[例]「神さへいといみじう鳴り」〈伊勢・6〉