つらつら思うこと

特にテーマは決めずに書きます

古語辞典比較〜神(かみ kamï )⑤古語辞典(中型~小型)全訳型

❂全訳古語例解辞典/初版(北原保雄編、1987年1月、小学館

【神】〔名〕〘他の語の上に付いて複合語となる時には「かむ」とも〙
❶天地・自然を創造・統治する偉大なもの。信仰の対象ともなる神聖な超能力的存在。神様。
[例]天地〈あめつち〉の━━も助けよ草枕旅行く君が家に至るまで」〈万葉・4・549〉
[訳]天地の神様も助けたまえ。旅に出るあなたが(目的地の)家に着くまで。
❷(広く)人間を超越した存在。特に、猛獣など、人間に危害を加える恐るべきもの。
[例]「韓国〈からくに〉の虎とふ━━を生け捕りに」〈万葉・16・3885長歌
[訳]韓国の虎という恐ろしい悪神を生けどりにして。
[注]「虎」ハ平安初期マデ、生キタママ輸入サレナカッタガ、ソノ存在ハ知ラレテイタ。
天皇を神格化していう語。天皇の敬称。
[例]「聖〈ひじり〉の御代〈みよ〉ゆ生〈あ〉れましし━━のことごと」〈万葉・1・29長歌
[訳]神武天皇の御代以来お生まれになった天皇のすべてが。
❹雷。かみなり。
[例]「━━さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ」〈伊勢・6〉
[訳](夜もふけた上に)雷までが大変ひどく鳴り、雨もざあざあ降ってきたので。



❂全訳古語例解辞典/第三版(北原保雄編、1998年1月、小学館

【神】〔名〕〘他の語の上に付いて複合語となる時には「かむ」とも〙
❶天地・自然を創造・統治する偉大なもの。信仰の対象ともなる神聖な超能力的存在。神様。
[例]天地〈あめつち〉の━━も助けよ草枕旅行く君が家に至るまで」〈万葉・4・549〉
[訳]天地の神様も助けたまえ。旅に出るあなたが(目的地の)家に着くまで。
❷(広く)人間を超越した存在。特に、猛獣など、人間に危害を加える恐るべきもの。
[例]「韓国〈からくに〉の虎とふ━━を生け捕りに」〈万葉・16・3885長歌
[訳]韓国の虎という恐ろしい悪神を生けどりにして。
天皇を神格化していう語。
[例]「聖〈ひじり〉の御代〈みよ〉ゆ生〈あ〉れましし━━のことごと」〈万葉・1・29長歌
[訳]神武天皇の御代以来お生まれになった天皇のすべてが。
❹(神として恐れたことから)雷。かみなり。
[例]「━━さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ」〈伊勢・6〉
[訳](夜もふけた上に)雷までが大変ひどく鳴り、雨もざあざあ降ってきたので。
※「小学館全文全訳古語辞典」(北原保雄編、2004年1月、小学館)もほぼ同じだが、❷の例と訳は省略されている。



❂要語全訳必修古語辞典(平田喜信編、1992年2月、学習研究社

かみ【神】名
❶〔人の目には見えないが、超自然的能力をもつ存在〕神。
「ゆき副〈そ〉ふ川の━━も([訳]あたりをめぐって流れる川の神も)」〈万・38〉
❷〔神話で、人格化され、国土を創造し支配したとされる存在〕神。
「次に成りませる━━の名は、国之常立〈くにのとこたち〉の━━([訳]次にお生まれになった神の名は、国の常立の神)」〈記・神代〉
❸最高の支配者である天皇を神としてみた語。
「かけまくもあやにかしこし天皇〈すめろき〉の━━の大御代〈おほみよ〉に([訳]口に出して言うのもまことに恐れ多い、祖先の天皇の御代に)」〈万・4111〉[同]現人神〈あらひとがみ〉
❹雷
「━━さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ([訳]雷までもとてもひどく鳴り、雨も激しく降ったので)」〈伊勢・6〉
❺〔神社の〕祭神。神。
「━━は、松の尾([訳]祭神は、すばらしいのは、松の尾の神社である)」〈枕・神は〉
[参考]①の神は、日常の微細なものから宇宙に至るまでのあらゆるものに、それぞれ宿っているとされ、キリスト教イスラム教などの一神教の神とは異なっている。
[学習の要点]
(1)現代語にはない③④の意味があることに注意しよう。
(2)同訓の「上〈かみ〉」「長官〈かみ〉」と混同しないようにしよう。



❂ベネッセ全訳古語辞典(中村幸弘編、1996年11月、ベネッセコーポレーション

かみ【神】[名詞]
❶自然界の神聖な存在。天地・山河・草木などに宿り、これを支配する精霊。
❷(神として恐れたことから)雷。
「神は落ちかかるやうにひらめきかかるに…。」〈竹取・竜の頸の玉〉
[訳]雷は(船に)落ちかかるようにぴかっと光りかかるので…。
❸人間の力を超越した能力を有するもの。畏怖すべき存在。
「神ならねば、何わざをか仕うまつらむ。」〈竹取・竜の頸の玉〉
[訳](私は)人間の力を超越した能力を有するものではないので、どんなことをして差し上げられようか。
❹神話に出てくる神。
天照大御神〈あまてらすおほみかみ〉」「大国主神〈おほくにぬしのかみ〉」など。
❺神社に祭られ神格化された人やものの霊。祭神。
「北野の神にならせたまひて…。」〈大鏡・時平〉
[訳](菅原道真は)北野(天満宮)の祭神におなりになって…。
天皇を敬った言い方。
〚発展〛❷は「なるかみ」とも。❺は、政治抗争に敗れ、不幸な死に方をした人が祭られることが多い。
※「ベネッセ全訳コンパクト古語辞典」(中村幸弘編、1999年11月、ベネッセコーポレーション)もほぼ同じだが用例・訳・発展は無い。



❂角川必携古語辞典/全訳版(山田俊雄・吉川泰雄・室伏信助編、1997年11月、角川書店

かみ【神】名〘他語と複合する形は「かむ」とも〙
人間を超越した能力の所有者。信仰の対象となる神聖なもの。
❶おもに自然界にあって、人間に禍福をもたらすとされたもの。
㋐天地・山川・草木などに宿る精霊。
「天地〈あめつち〉の━━も助けよ草枕(=枕詞)旅行く君が家にいたるまで」〔万葉・4・549〕
[訳]天地の神もどうか苦難をのがれさせてください。旅をして行くあなたが無事に家に着くまで。
㋑雷。
「━━さへいといみじう鳴り」〔伊勢・6〕
[訳](そのうえ)雷までもたいそう激しく鳴り、
㋒一般に、恐るべきもの。
「韓国〈からくに〉の虎とふ━━を生け捕りに八つ捕り持ち来」〔万葉・16・3885・長歌
[訳]朝鮮の虎という恐るべきものを生け捕りにして、(それも)八頭も捕って持ち帰って来て。
❷特に、日本神話で、国土の創造・支配にあずかるとされた神。神代の神々。
❸〘現人神〈あらひとがみ〉と見られたことから〙天皇の尊敬語。「楽浪〈ささなみ〉の(=枕詞)大津の宮に天〈あめ〉の下知らしめしけむ天皇〈すめろき〉の━━の命〈みこと〉の大宮はここと聞けども」〔万葉・1・29・長歌
[訳]大津の都で天下をお治めになったという(天智)天皇の皇居はここと聞くけれど。
❹神社に祭られた、神格化した人・物の霊。



❂完訳用例古語辞典(金田一春彦監修、小久保崇明編、1999年4月、学習研究社

かみ【神】名詞
❶神。▷人の目には見えないが、超自然的能力をもつ存在。
今昔物語集]31・33「なんぢ、されば、何者ぞ。鬼かかみか」
[訳]ではお前は何者か。鬼か、それとも神か。
❷神。▷神話で、人格化され、国土を創造し支配したとされる存在。
古事記]神代「次に成りませるかみの名は、国之常立〈くにのとこたち〉のかみ」
[訳]次にお生まれになった神の名は、国の常立の神。
天皇。▷最高の支配者である天皇を神格化。
万葉集]29「橿原のひじりの御代ゆ生〈あ〉れまししかみのことごと」
[訳]橿原の天皇(=神武天皇)の御代以来お生まれになった天皇のすべてが。
❹雷。
伊勢物語]6「かみさへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ」
[訳](夜も更けたうえに)雷までとてもひどく鳴り、雨も激しく降ったので。
❺(神社の)祭神。神。
徒然草]52「かみへ参るこそ本意なれと思ひ、山までは見ず」
[訳](岩清水八幡宮〈いわしみずはちまんぐう〉の)祭神へお参りすることが最初からの目的であると思って、山までは見なかった。



❂全訳用例古語辞典/第二版/ビジュアル版(金田一春彦監修、菅野雅雄・中村幸弘編、2002年12月、学習研究社

かみ【神】名詞
❶神。▷人の目には見えないが、超自然的能力をもつ存在。
今昔物語集]31・33「なんぢ、されば、何者ぞ。鬼かかみか」
[訳]ではお前は何者か。鬼か、それとも神か。
❷神。▷神話で、人格化され、国土を創造し支配したとされる存在。
古事記]神代「次に成りませるかみの名は、国之常立〈くにのとこたち〉のかみ」
[訳]次にお生まれになった神の名は、国の常立の神。
天皇。▷最高の支配者である天皇を神格化。
万葉集]29「橿原のひじりの御代ゆ生〈あ〉れまししかみのことごと」
[訳]橿原の天皇(=神武天皇)の御代以来お生まれになった天皇のすべてが。
❹雷。
伊勢物語]6「かみさへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ」
[訳](夜も更けた上に)雷までとてもひどく鳴り、雨も激しく降ったので。
❺(神社の)祭神。神。
徒然草]52「かみへ参るこそ本意なれと思ひて、山までは見ず」
[訳](岩清水八幡宮〈いわしみずはちまんぐう〉の)祭神へお参りすることこそ本来の目的であると思って、山までは(行って)見なかった。



❂学研全訳古語辞典(金田一春彦監修、小久保崇明編、2003年12月、学習研究社

かみ【神】名詞
❶神。▷人の目には見えないが、超自然的能力をもつ存在。
今昔物語集]31・33「なんぢ、されば、何者ぞ。鬼かかみか」
[訳]ではお前は何者か。鬼か、それとも神か。
❷神。▷神話で、人格化され、国土を創造し支配したとされる存在。
古事記]神代「次に成りませるかみの名は、国之常立〈くにのとこたち〉のかみ」
[訳]次にお生まれになった神の名は、国の常立の神。
天皇。▷最高の支配者である天皇を神格化。
万葉集]29「橿原のひじりの御代ゆ生〈あ〉れまししかみのことごと」
[訳]橿原の天皇(=神武天皇)の御代以来お生まれになった天皇のすべてが。
❹雷。
伊勢物語]6「かみさへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ」
[訳](夜も更けた上に)雷までとてもひどく鳴り、雨も激しく降ったので。
❺(神社の)祭神。
徒然草]52「かみへ参るこそ本意なれと思ひ、山までは見ず」
[訳](岩清水八幡宮〈いわしみずはちまんぐう〉の)祭神へお参りすることこそ本来の目的であると思って、山までは(行って)見ない。



三省堂全訳読解古語辞典/第二版(鈴木一雄・伊藤博・外山映次・小池清治編、2001年1月、三省堂

かみ【神】[名]〘他の語の上に付いて複合語をつくる場合には「かむ」とも〙
❶天地万物を創造・支配し人間の知恵でははかり知れないふしぎな威力をもった最高の存在で、古代人のおそれと、宗教的信仰の対象。神様。
[例]「天地〈あめつち〉の━━を乞〈こ〉ひつつ我〈あれ〉待たむはや来ませ君待たば苦しも」〈万葉・15・3682〉
[訳]天地の神様に祈りながら、わたしは待ちましょう。すぐ帰って来てください、あなた。(これ以上)待っていたら苦しい。
❷猛獣など、あばれると人間に猛威をふるう恐ろしいもの。
[例]「韓国〈からくに〉の虎といふ━━を生け捕りに八つ捕り持ち来。」〈万葉・16・3885長歌
[訳]朝鮮の虎という恐ろしいものを生けどりにして、八頭も持ち帰って来て。
❸山・坂・川・海・道などを支配し、通行する人間に威力をふるうもの。
[例]「ちはやふる━━のみ坂に幣〈ぬさ〉奉〈まつ〉り斎〈いは〉ふ命は母父〈おもちち〉がため」〈万葉・20・4402〉
[訳](ちはやふる)神のいらっしゃるというけわしい御坂に幣帛〈へいはく〉をささげ、つつしみ祈るこの命は、母父のためなのだ。
〔注〕「ちはやふる」は「神」の枕詞。
❹神話で、人格化された存在。人格神。
天皇を神格化していう語。
[例]「大君は━━にしませば天雲〈あまくも〉の雷〈いかづち〉の上に廬〈いほ〉りせるかも」〈万葉・3・235〉
[訳]わが天皇は神でいらっしゃるので、天雲の中にいる雷〈かみなり〉の上に仮の宮殿をつくって一時住んでいらっしゃる。
❻人間にわざわいや幸福をもたらし、また、加護や罰・戒めを与える超能力的存在。
[例]「━━など、空にめでつべき容貌〈かたち〉かな。うたてゆゆし」〈源氏・紅葉賀〉
[訳]神などが空から魅入〈みい〉って、神隠しにしそうな(美しくりっぱな)姿だこと。おおいやだ、不吉だこと。
❼仏がこの世にあらわれた仮の姿。仏の化身。
[例]「まことに迹〈あと〉を垂れたまふ━━ならば助けたまへ」〈源氏・明石〉
[訳]ほんとうに仏の化身である(住吉の)神でおはしますならば、お助けください。
❽(鬼や狐など)人間をかどわかしたり、危害を加えるもの。
[例]「打物〈うちもの〉もっては鬼にも━━にもあはうどいふ一人当千〈いちにんたうぜん〉の兵者〈つはもの〉なり」〈平家・9・木曽最期〉
[訳](巴は)刀をとっては、恐ろしい鬼でも神でも相手にしようという、千人の敵に当たることのできる力を持った兵士である。
❾(「鳴る神」とも)雷。雷鳴。
[例]「━━のいたう鳴るをりに、雷鳴〈かみなり〉の陣こそ、いみじう恐ろしけれ」〈枕・神のいたう鳴るをりに〉
[訳]雷が激しく鳴るときに、雷鳴の陣(=雷害の警護の陣)こそまことに恐ろしい。



❂大修館全訳古語辞典(林巨樹・安藤千鶴子編、2001年11月、大修館書店)

かみ【神】〔名〕
❶天地自然を創造・統治する偉大なもの。
[例]高天原〈たかまのはら〉に成れる神の名は、天之御中主〈あめのみなかぬし〉の神
[訳]高天原に現れ出た神様の名は、天の御中主の神〈記・上〉
❷人間の力を越えた強いもの・恐ろしいものなど。
[例]獣といへどもこれ神なり
[訳]獣といってもこれは人間の力を越えた強いものである〈今昔・5〉
❸神社にまつられ神格化された人や物の霊。
[例]北野の神にならせ給ひて
[訳]北野神社の霊とおなりになって〈大鏡・時平〉
❹雷。いかずち。
[例]鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り
[訳]鬼のいる所とも知らずに、雷までたいへん激しく鳴り〈伊勢・6〉
❺〔尊敬語〕天皇の敬称。
[例]橿原のひじりの御世〈みよ〉ゆ生〈あ〉れましし神のことごと
[訳]橿原の天皇以来神としてこの世に姿を現された歴代の天皇がみな〈人麻呂・万葉・1〉
※「新全訳古語辞典」(林巨樹・安藤千鶴子編、2017年、大修館書店)もほぼ同じだが、用例の引用部分が一部省略されている。



❂角川全訳古語辞典(久保田淳・室伏信助編、2002年10月、角川書店

かみ【神】〔名〕
❶天地万物を創造・統治し、人間の知恵でははかり知れない偉大なもの。神様。
[例]天地〈あめつち〉の神も助けよ草枕〈くさまくら〉旅行く君が家〈いへ〉に至るまで〔万葉・4・549〕
[訳]天地の神様もどうか困難をのがれさせてください。(草枕)旅をして行くあなたが無事に家に着くまで。
❷人間の力を超えた能力をもつもの。
[例]神ならねば、何わざをか仕うまつらむ〔竹取・竜の頸の玉〕
[訳](わたしは)人間の力を超えた能力をもつものではないので、どんなことをしてさし上げられようか。
❸神話で、人格化された存在。神武天皇に至るまでの人格神。
[例]天地〈あめつち〉初めて発(あらは)れし時に、高天原〈たかあまのはら〉に成りし神の名は、天之御中主神〈あめのみなかぬしのかみ〉〔古事記・上〕
[訳]天地がはじめてあらわれ(動きはじめ)たときに、高天原に成った神の名は、天之御中主神
天皇を神格化した言い方。
[例]橿原の聖〈ひじり〉の御代ゆ生〈あ〉れましし神のことごと〔万葉・1・29・長歌
[訳]橿原の天皇(=神武天皇)の御代以来お生まれになった天皇のすべての方が。
❺雷。雷鳴。
[例]神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ〔伊勢・6〕
[訳]雷までもたいそうひどく鳴り、雨もひどく降ったので。



❂旺文社全訳古語辞典/第三版(宮腰賢・桜井満・石井正己・小田勝編、2003年10月、旺文社)

かみ【神】(名)
❶人間を超えた能力を持つ存在。恐れかしこむべきもの。神。
〔記〕中「この沼の中に住める━━、いとちはやぶる━━なり」
[訳]この沼の中に住んでいる神は、ひどく荒れすさぶ神である。
❷雷。
〔伊勢〕6「━━さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ」
[訳]雷までもたいそうひどく鳴り、雨も激しく降ってきたので。
❸神話で、国土を創造・支配したとされる神。
〔記〕上「高天の原になれる━━の名は、天之御中主の━━」
[訳](天上界である)高天の原に生まれた神の名は、天之御中主の神。
天皇の尊称。
〔万葉〕1・29「玉たすき畝火の山の橿原の日知〈ひじり〉の御代ゆ生〈あ〉れましし━━のことごと」
[訳]畝火の山の橿原の天皇(=神武天皇)の御代から、お生まれになった天皇のすべてが。(「玉たすき」は「畝火」にかかる枕詞)
🔴発展【神仏習合の世界】
徒然草」第五二段は、仁和寺の老法師が石清水八幡宮を訪ねたつもりで、末寺の極楽寺末社の高良〈こうら〉社を拝んで帰った話である。神社に末寺があるというのは不自然な感じがするかもしれないが、明治の神仏分離令以前には、こうした現象がどこでも見られた。仏教が日本に定着する際、土着の神道を取り込んでいったのである。それを、神仏習合または神仏混交と呼んでいる。
※「旺文社全訳学習古語辞典」(宮腰賢・石井正己・小田勝編、2006年10月、旺文社)もほぼ同じだが、❸・🔴発展は無い。



❂全訳全解古語辞典(山口堯二・鈴木日出男編、2004年10月、文英堂)

かみ【神】[名]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
天地の創造主。自然や人間を支配する、最高で神聖な存在。人間に対して威力をふるう神秘的な存在であり、脅かしもし加護もする威力を強く発揮する存在とみられてきた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
❶人間の生命や生活を脅かす威力ある存在。
[例]
(a)玉葛〈たまかづら〉実成らぬ木にはちはやぶる神そつくといふ成らぬ木ごとに
(=実のならない木には神が取りつくという、実のならない木には皆)〈万葉・2・101〉
[読解]
つれない女性を実のならない木にたとえて悪態をついた相聞歌。
(b)これ、鬼の人に変じて来たりてだむぜるか、また神の嗔〈いかり〉をなして、重ねて祟りをなせるか
(=これは、鬼が人に化けてやって来て食い殺したのか、または神が怒って加えて祟りをしたのか)〈今昔・20・37〉
❷人間の運命をつかさどる存在。人間を守護する存在。祈願の対象となる。
[例]
かからずもかかりも神のまにまにと立ちあざり我〈あれ〉乞ひ禱〈の〉めど
(=我が子の病気が治らないのも治るのも神のおぼしめしのままだと、取り乱して私は祈るが)〈万葉・5・904〉
❸道や坂・峠・川・海峡などの交通の難所を、畏怖の念をこめていう。
[例]
昔、この川の西に荒ぶる神ありて、路行く人、多〈さは〉に殺され
(=昔、この川の西に暴威をふるう神がいて、通行人は、多く殺され)〈肥前風土記
❹雷。「なるかみ」とも。
[例]
神鳴りひらめく
(=雷が鳴り稲妻が一瞬光る)〈源氏・須磨〉
天皇を、人間の力を越えた絶対的な支配者として畏敬の念をこめていう。
[例]
大君は神にしませば天雲の雷〈いかづち〉の上に廬〈いほ〉りせるかも
(=天皇は神でいらっしゃるから、空の雲に鳴る雷の上に仮の宮殿を建てて宿っていらっしゃることだ)〈万葉・3・235〉
[読解]
天皇行幸した雷〈いかづち〉の丘を雷神と見なして、天皇は神であるから、それさえも支配すると讃えた。
❻山・川や、地方の国々を領有している存在。
[例]
神武天皇ハ)荒ぶる神らを言向〈ことむ〉け平和〈やは〉し、伏〈まつろ〉はぬ人らを退〈そ〉け撥〈はら〉ひて
(=暴威をふるう神どもを服従させ平定し、従わない者どもを撃退して)〈記・中・神武〉
❼人間の時代以前に、天上・地上を支配したと考えられた存在。
[例]
天照〈あまて〉らす神の御代より
(=天照大御神のお治めになった昔から)〈万葉・18・4125〉
〚語誌〛
▶❶には、「韓国〈からくに〉の虎といふ神を」〈万葉・16・3885〉のように、虎・狼・蛇などの猛獣に対しても畏怖の念をこめて「神」という例もある。
▶❷には、生死をつかさどることや正邪を知り尽くすこと、男女の出会いと離別、旅の安全などをつかさどることも挙げられる。この意の神は『万葉集』では、多く「天地〈あめつち〉の神」と呼ばれる。平安時代は、春日・賀茂・住吉などの特定の社の神が意識されるようになるとともに、「仏神〈ほとけかみ〉」「神仏〈かみほとけ〉」と仏と並べられ、加護を求める対象としての性格を強める。さらに中世には仏の仮の姿とみなすことも広まる。《小川靖彦》



❂東書最新全訳古語辞典(三角洋一・小町谷照彦編、2006年1月、東京書籍)

かみ【神】[名]〘他の語の上に付いて複合語を作るときには「かむ」ともいう〙
❶天地万物を創造・統治する偉大なもの。神秘的な力をもつと考えられ、古代人の畏怖と宗教的信仰の対象であった。
[例]「天地〈あめつち〉のかみも助けよ草枕旅行く君が家に至るまで」〈万葉・4・549〉
[訳]「天地の神も助けたまえ。旅するあなたが(目的地の)家に着くまで」
[参考]用例中の「草枕」は「旅」にかかる枕詞。
❷〘神として恐れたことから〙雷。雷鳴。「鳴る神」
[例]「かみさへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ」〈伊勢・6〉
[訳]「雷までもたいへん激しく鳴り、雨もひどく降ってきたので」
❸人間の力を超えたもの。恐ろしいもの。
[例]韓国〈からくに〉の虎といふかみを生け捕〈ど〉りに」〈万葉・16・3885・長歌
[訳]「朝鮮の虎という恐ろしいものを生け捕りにして」
❹(神話で)人格化された存在。人格神。
[例]「天地〈あめつち〉初めてひらけし時、高天〈たかま〉の原になれるかみの名は、天之御中主〈あめのみなかぬし〉のかみ」〈古事記・上・別天神五柱〉
[訳]「天と地が初めてできたとき、天上界に生まれた神の名は、天之御中主の神」
❺神社にまつられたもの。祭神。
[例]「かみへ参るこそ本意〈ほい〉なれと思ひて、山までは見ず」〈徒然・52〉
[訳]「(石清水八幡宮〈いわしみずはちまんぐう〉の祭神へ参詣することが本来の目的であると思って、山までは見なかった(=石清水八幡宮の本殿にお参りしなかった)」
天皇の尊称。天皇を神格化していう。現人神〈あらひとがみ〉。
[例]「橿原の聖〈ひじり〉の御代ゆ生〈あ〉れまししかみのことごと」〈万葉・1・29・長歌
[訳]「橿原の天皇(=神武天皇)の御代からお生まれになった天皇のすべてが」