つらつら思うこと

特にテーマは決めずに書きます

辞書における『ねこ』㈢

http://nobinyanmikeko.hatenadiary.jp/entry/2019/11/18/082618


㈢は百科事典。


★世界原色百科事典(岡田要・海後宗臣・河竹繁俊金田一京助etc.、1965年、小学館

ネコ 猫
ほ乳類・ネコ科。一般に家庭で飼われるイエネコの総称。アフリカ・南ヨーロッパ・インドに分布するリビアヤマネコを古くから飼いならしたものとされている。
〔形態と生態〕
 形態上のネコは、同科に属するライオン・トラ・ヒョウ・ジャガーピューマチーターなどの食肉獣とともに、均整のとれたしなやかな体をもち、四肢がよく発達し、背を下にして低いところから落としてもかならず足から着地する。舌には突起があってざらざらし、骨をしゃぶったり水を飲むのに適し、口のまわり、あご下、ほお、目の上に長くのびた触毛(ひげ)があって暗所の活動を容易にし、瞳孔が明暗に応じて大きく開閉するので、かすかな光でもよく物が見えるし、両眼が平面的に並んで、正確に立体的にながめられる双眼視(ヒトやサル以外にはネコ科動物だけ)となっており、獲物を発見し捕えるのにつごうがよい。また、足の裏はやわらかい肉掌となっているので音をたてずに獲物に近づける。つめは鋭くて攻撃の武器となり、地面にすれて摩滅しないようにふだんは上方に引きあげ、チーター以外のネコ科動物はさやにしまい込む。歯はいずれも鋭く、臭覚はあまり発達しないが、視覚と聴覚は鋭い。前肢は手のように器用に使う。
 生態上のネコは、集団生活をせず孤独で狩猟をする動物であり、人に飼われてからも独立性が強く、社交性・従属性に乏しい。この性質が人によって好ききらいの原因となる。マタタビを好むが、この成分は大脳や延髄を刺激して麻痺させ、一種の恍惚状態におちいるが、これはネコ科動物に共通の習性である。
 雌ネコは一年じゅう断続的に発情する。妊娠期間は約六〇日で、ふつう四〜五匹、多いときで九匹ぐらいうむ。生後約一週間は目があかず、約一か月半で離乳する。約一年で成熟するが、雌ネコはまれに生後八か月ぐらいで妊娠する。寿命は一二〜一三年がふつうで、一五年以上は長寿にはいる。
 伴性遺伝の関係で三毛ネコは雌しかうまれないのがふつうであり、まれに雄がうまれても繁殖能力のないものが多いが、雄は船霊様とよばれて船乗りに珍重される。
〔種類〕
 イヌと異なり、人口交配による品種の作成が少なく、おもに毛色などで、一応次のように区別されている。
(1)ペルシアネコ 長毛で、毛色は各種あるが白色がよく、おっとりした性格で、上下肢とも短い。
(2)シャムネコ シャム(現在のタイ)の王宮で保護されていたのが、一八八四年にイギリスに渡り、欧米に広まった。目は青く、毛色は白色で先端部が茶色系、よくなつく。
(3)マンクスネコ 無尾種で、前肢より後肢が長く、はねるように歩く。毛色は各種あり、欧米に多い。
(4)アビシニアネコ 体格がシャムネコに似ているが、耳が大きく、尾がふさふさしており、毛色はかっ色にこげ茶色のすじがうず巻き、とくに尾に強く現われ、目は緑・黄・茶の三色がある。
(5)ビルマネコ 毛色は濃いこげ茶色と青色の二種があって、体の先端がいくらか濃くなっており、シャムネコによく似る。
(6)その他 各国内産のイエネコは、いわゆる雑種であるが、なかでも黒ネコ・白ネコ・三毛ネコ・青ネコなどは毛色が美しく、欧米ではそれぞれの系統的な種族保存のため、計画繁殖して品種を固定し、これを純血種としているものが多い。日本でも国内産ネコの交配管理が、種族保存のうえで必要となり、青ネコの交配が普及しつつある。
〔飼育の歴史〕
 約五〇〇〇年前、野生のリビアネコが、古代エジプト人によりはじめて飼育され、そのネコが国外につれだされるようになって、しだいに世界各地へ広まったとされているが、その記録は、古代エジプト遺跡の壁画やネコのミイラ(ネコを神聖なものとして祭った)などからみてもたしかである。しかし、古代エジプトで飼われたものが現在のすべてのネコの先祖となったことには疑問がもたれている。日本でも前期縄文時代(六〇〇〇〜七〇〇〇年前)の遺跡を含む多くの遺跡からネコの骨が発掘されている。どの骨も食用とされた形跡はなく、一四〇〇〜一五〇〇年前の土師式時代の遺跡からでた骨では、歯が丸みを帯びてやわらかく、人間からえさをもらっていたことを示している。また、これらの骨格は現在東南アジアのジャングルにすむヤマネコの骨格とよく似ており、日本が大陸と地つづきだった洪積世のころに日本にすみついたものであろう。一方、リビアヤマネコは、ヨーロッパや東南アジアのヤマネコとは同一種と考えられるほどよく似ている。このことから同一種のネコが有史前に世界各地で別々に飼いならされて現在のイエネコになったと考えるのが、もっとも妥当なようである。
〔ネコと民俗〕
 日本でネコが文献に出てくるはじめは『日本霊異記』であり、伝来経路などは不明。鍋島や有馬の猫騒動や、がん具の「招き猫」などのほか、飼育の歴史が古いだけに、たくさんの伝承・民話が残されている。


★世界大百科事典改訂新版(林達夫安倍能成大内兵衛久松潜一etc.、1972年、平凡社

ねこ 〔猫〕
 ネコ科ネコ属に属する食肉獣。ネコ(カイネコ)Felis domestica(またはF.catus)の祖先は温暖な地方から出たものであろうことは、ネコが寒がりなことから知られる。カイネコの先祖はエジプトの野生ネコであるリビヤネコで、初め猟犬のように狩猟に使うのにナイル川上流地方の原住民が馴致した。それをエジプト人が受け継ぎ数世紀の間努力を続け、やっと今日のように従順な家畜に仕上げたが、それでもイヌなどに比べると野生がかなり残っている。リビヤネコ F.libyca はアフリカから南ヨーロッパ、インドにかけて分布するが、エジプトの第5王朝(2494〜2345 B.C.)にすでに人間にならされた証拠に、首輪をつけたネコの絵が残っており、第12王朝(1991〜1786 B.C.)にはミイラが多数発見された。1世紀にはラテン民族にも飼われるようになり、各地で別々に飼われ、少しずつ違ったカイネコができたにちがいない。やがてアルプスの北にも広まり、しだいに東洋にも及んだが、その経路については明らかでない。カイネコの品種はイヌほど多くない。人目を引くのは大形・長毛で尾もふさふさとしたペルシアネコ(アンゴラネコ)である。またシャムネコは幼時は純白であるが、成長すると顔、耳、四肢、尾といった端部のみ黒かっ色となり、他は銀灰色、目は青くて高貴感がある。白ネコで片目が青、片目が黄なのを、〈金目銀目のネコ〉〈福ネコ〉などと呼び、商売繁盛のマスコットに喜ばれる。福ネコは雄が多い。また雄の三毛ネコはきわめてまれで、昔から船の守り本尊として船霊様などと呼んで敬愛している。三毛の雄は大部分が雌性化するので実在するのは希有である。
 野生のネコはヤマネコといわれ、世界各地にいる。対馬から朝鮮、中国東北などに住むヤマネコ Felis bengalensis はその1種である。カイネコと体の大きさは同じであるが、耳介はとがりが少なくて先が丸く、その背面に白斑があり、体の斑紋は点紋で縦に並ぶ。横じまや、点紋でも横に並んでいるのが、カイネコの特徴である。カイネコはときに野生化することがあり、それらは人家近くにこないで山野を歩きまわる。
 ネコは当初は狩猟用に、後にはネズミの駆除を目的に飼われるようになったが、体の構造はネズミの大敵たるにふさわしい。両眼は体の真正面についていて獲物が立体的によく見え、獲物までの距離もよくわかって、とびかかるのに便利である。顔の随所に生じている長いひげ(触毛)は、神経に富み、感覚が鋭く、夜間もこれをたよりに小さいすきまをくぐり、やぶを通り抜けたりする。目はかすかな光を集めることができるし、臭覚が発達し、指の構造は音を立てないで進むことができる。前足をくり出して獲物を打つ動作は迅速強力である。親指のつめは他のつめと対向しているので獲物をしっかりつかみ、後肢の発達は跳躍を容易にする。前歯も奥歯も鋭く、かみつき、肉をかみ取るのに有利である。
 ネコがいつごろ日本に渡来したか、平安期以後とばかりでその渡来経路、ネコという名の起りもすべて不明である(金沢庄三郎)。ネコの名は《古事記》《日本書紀》《万葉集》のような古い典籍に見あたらないから、古い時代にはいなかったものと思われる。日本の文献に初めてネコが現れるのは、上原虎重によれば《日本霊異記》においてであって、文武天皇のとき豊前の国のある人が、死んでからネコになって自分のむすこの家に飼われていたという話がある。本物のネコが現われるのは宇多天皇の日記(《宇多天皇御記》)で、元慶8年(884)光孝天皇のときに、唐土から送られてきた黒ネコを天皇がひじょうにかわいがったことがつづられている。この御記から、当時日本にはすでに相当数のカイネコがおり、また絶えず外国から輸入されていたこともわかる。宇多天皇に次いでネコを愛したのは一条天皇で、そのことは《枕草子》に見えるが、高麗から献上されたネコで、従五位下に叙され、馬の命婦という女官が乳母として付きそい、長保元年(999)7月19日に宮中で出産した。その後《源氏物語》《狭衣物語》と相次いでネコが現われ、平安朝末期に入ってからはネコが庶民階級にも広く飼育されるようになった。
 平岩米吉によれば、そのころにはネコに関する二つの伝説が生じた。一つは年経た雌ネコが化けて人を害するという説、いま一つはネコが品物を持ってきて飼主に報恩するという説である。前者には猫股という名がついたが、尾が二またに割れたのが特徴で、初めは後足で立って踊ったり、ものを言ったりするが、やがて人を食い殺してその人に化けるといわれる。化けネコは江戸時代には大名のお家騒動と結びついて鍋島の猫騒動、有馬の猫騒動などの怪談を成した。主人を殺されたカイネコが残虐な方法であだを討つ筋になっている。
 ネコの好物にマタタビがある。マタタビの中に含まれる揮発油性のマタタビ酸が麻酔作用を呈せしめるのであるが、ネコにとって媚薬である。マタタビを見つけると鼻でかぎ、次に全身にこすりつけて無我こうこつの境に入り、やがて熟睡してしまう。《南総里見八犬伝》にも、マタタビの材で柄を装った短刀を奪おうとして化けネコが人にのりうつるが、八犬士の1人に射殺されるところが出てくる。 (高島春雄


日本大百科全書〈ニッポニカ〉(1994年、小学館
コトバンクより

ネコ
ねこ / 猫
catdomestic cat

広義には哺乳(ほにゅう)綱食肉目ネコ科に属する動物の総称で、狭義には家畜化されたイエネコFelis catusをさす。普通、欧米では前者の、日本では後者の意味で用いられることが多い。
 ネコ科の動物は肉食性で、食肉目のなかで、獲物をとらえるのにもっとも高度に特殊化している。南・北アメリカ、ユーラシア、アフリカに分布し、約35種が知られている。分類学的にネコ科は大きく3群に分けられる。(1)イリオモテヤマネコ、ヨーロッパヤマネコなど一般に小形の種が多く含まれるネコ族、(2)ライオン、トラ、ヒョウといった自分より大形の獲物を倒すことができる大形ネコ類のヒョウ族、(3)チーター1種が属するチーター族、である。たいていのネコ類はつめを鞘(さや)の中に引っ込めることができ、歩行時にはつめを出さないが、チーターはつめを引っ込めることができない。
 ネコ科の動物は以上のような特徴をもつ。以下、本項においては、日本で一般にネコとよばれるイエネコについて論述する。〈成島悦雄

[起源]
イエネコはヨーロッパヤマネコF. silvestrisの亜種リビアヤマネコF. s. lybicaを家畜化したものと考えられている。リビアヤマネコとイエネコを交雑しても、繁殖力をもった子が生まれる。ネコを最初に家畜化したのは古代エジプト人である。紀元前3000年ごろのエジプト初期王朝の墓には、装飾品としてネコの姿が壁画などに描かれているが、これらのネコはおそらく野生のリビアヤマネコを飼いならしたものであろう。家畜化されたネコの絵で最古のものは、前1500~前1300年代に古代エジプト王朝の墓の記念碑に描かれたものである。古代エジプト人はネコを神聖な動物として崇拝し、国外持ち出しを禁じていたが、フェニキアの商人により小アジアへひそかに運ばれ、続いて紀元後1世紀ごろヨーロッパに伝わった。
 日本では縄文時代の地層からネコの骨が出土しているが、野生のネコと考えられている。日本にイエネコが渡来したのは、奈良時代の初期に中国から仏教の教典を運ぶときに、ネズミの害を防ぐため船にネコを乗せたのが最初であるといわれている。文書に残されたものでは平安初期の宇多(うだ)天皇の日記『寛平御記(かんぴょうぎょき)』がもっとも古く、884年(元慶8)中国から光孝(こうこう)天皇にネコが献上されたことが記されている。〈成島悦雄

[形態]
体長約75センチメートル、尾はその3分の1。肩高30センチメートル、体重3~5キログラム。他のネコ科の動物同様、飛びかかって獲物をとらえるに適したしなやかな体と、鋭い歯と鉤(かぎ)づめが特徴となる。後肢は前肢に比べ非常に長く、ばねの役目をして跳躍を容易にしている。指は前肢に5本、後肢に4本あるが、前肢の第1指は高く位置し着地しない。人間はかかとをつけて歩く蹠行(しょこう)性であるが、ネコは指を地面につけて歩く指行性である。運動時には左の前肢と右の後肢をいっしょに踏み出す。歩行時はつめが鞘の中に引っ込められているが、獲物をとらえるときは、つめを鞘から引き出すとともに、指の間隔も広げられて幅が広くなり強力な武器に変化する。着地する指の裏側には毛の生えていない柔らかな肉球があり、クッションの働きをする。この肉球のおかげで音もたてずに獲物に忍び寄る。木に登るのは巧みであるが、木から降りるのは下手で、木の高いところに登ったまま降りられなくなったネコをときにみかける。歯は獲物を突き刺したり、肉をかみ切るのに適応している。子は歯の生えていない状態で生まれるが、生後4~5週間で乳歯が上顎(じょうがく)に14本、下顎に12本、合計26本生えそろい、7か月齢になると30本の永久歯で置き換わる。歯式は以下の通り。

  3・1・3・1
 ━━━━━━━━━━
  3・1・2・1

 目はよく発達し、丸い顔の前面についているため立体視が可能となっている。これは獲物までの距離を正確に測るのに役だつ。目の色はブルー(青)、グリーン(緑)、ゴールド(金色)、ヘーゼル(淡褐色)などさまざまの色合いがみられるが、品種により色の基準が決められている。被毛が白く目の青い個体は、聴力障害を伴う場合が多い。網膜の背部にタペータムtapetumとよばれる光の反射板状の構造を備え、夜間の弱い光を増幅する働きをもつ。夜、目が光ってみえるのはこの反射板のためである。瞳孔(どうこう)は大きく形を変え、暗い場所では円形に開くが、明るい場所では縦のスリット状に狭まる。生まれたばかりの子ネコは目が閉じているが、生後8~12日で開く。しかし、物がよく見えるようになるにはさらに2~3日を要する。すばらしい視力をもつが、色の識別は困難である。口の周囲、目の上などに生えている長いひげ(触毛)は、感覚器官として重要で、毛根部に知覚神経が密に分布している。自分の体がやっと通り抜けられるような狭い通路も、ひげをアンテナがわりにして障害物を探知する。肉食性のため消化管は短く、小腸は体長の約3倍ほどの長さである。消化器系で特徴的な器官は舌である。舌の表面と、辺縁は舌乳頭とよばれる棘(とげ)状の突起で覆われ、やすりのようにざらざらしている。舌乳頭はその形により、糸状、茸(きのこ)状、葉状、有郭、円錐(えんすい)(糸状の変形)の5種に分けられるが、とくに糸状乳頭は先が鉤状に鋭くとがり、のどの奥に向いて並んでいる。これら舌乳頭の役目は、骨についている肉の細片をなめ取ったり、毛づくろいの際に櫛(くし)の働きをすることである。
 染色体は19対38本で、雄の性染色体はXY、雌はXXである。三毛ネコは黒・茶・白の3色まだらの被毛をもつネコであるが、そのほとんどが雌に限られるのは、茶の遺伝子がX染色体上にあり伴性遺伝をするからである。雄が生まれるのは、まれにX染色体とY染色体が交叉(こうさ)し、茶の遺伝子がY染色体に移るためと考えられている。〈成島悦雄

[生態]
ネコは夜行性の動物である。また、イヌの仲間は普通、群れをつくって獲物を追いかけるが、イエネコを含むネコ類は、単独で獲物に忍び寄るか、待ち伏せして獲物をとらえる。全力疾走で追いかけるので追跡できる距離が短いため、不意に襲いかかる方法をとる。イエネコの食性は本来肉食性のため、イヌに比べはるかにタンパク質の要求度が高い。
 生後7~12か月で性成熟する。繁殖期は一定しないが、1~3月と5~6月が多い。雌の発情は3~10日続き、この間に交尾がなければ1~3週後にふたたび発情が現れる。交尾が刺激となり、交尾後24~30時間で排卵がおこる。妊娠期間は平均63~65日であるが、56~67日までの幅がある。普通4~6頭の子が生まれ、子の数が多いほど妊娠期間は短くなる傾向にある。寿命は15年前後であるが、イギリスのネコに34年という長寿記録がある。
 ネコは本来単独生活者で、繁殖期の雌雄と、子別れするまでの親子関係以外は、互いに出会うことを避けている。ネコの行動圏は大きく三つに分類できる。一つは他のネコの侵入を許さない絶対の自由圏で、自分の飼われている家とその庭が範囲である。絶対の自由圏から半径数百メートルは狩猟圏で、狩り場、見張り場、休憩所が含まれ、そのおのおのはネコの通り道で網の目のように結ばれている。ネコどうしの狩猟圏は互いに重なり合っているが、行動する時間をずらして時間的すみ分けを行っており、ネコどうしが鉢合わせすることはない。狩猟圏の中で普段は顔をあわせないようにしているネコも、夜に集会を開く。集会場は狩猟圏の中にある。ときに小競り合いのみられることもあるが、ほとんどの場合、和やかな雰囲気で集会は進行し、狩猟圏を共有しあうネコどうしの親睦(しんぼく)を図っているらしい。狩猟圏の外側には普通は立ち入らないが、繁殖期になると雄ネコはパートナーを求めて足を踏み入れることもある。
 狩猟圏を共有するネコが顔をあわせないですむのは、マーキングにより相手に自分の存在を教えているからである。マーキングとは印をつけることで、ネコはいくつかの方法でマーキングを行う。尿によるマーキングは、(1)尿をかけようとする草、木、電柱などに臀(しり)を向け、(2)方向を定め、(3)垂直に立てた尾を震わせ、(4)勢いよく尿を後方に噴射する、といった順序で行われる。あとからきたネコは残された尿のにおいをかいで、先に通ったネコと鉢合わせしないように行動する。尿以外のにおいでは肛門腺(こうもんせん)など体に分布する臭腺からの分泌物も物にこすりつけて利用する。また、つめ研ぎ行動も単につめの手入れのためだけでなく、物につけられたつめ跡が目印となる。
 昔から「ネコにマタタビ」といわれるようにネコはマタタビを異常に好み、マタタビにより一種の恍惚(こうこつ)状態に陥る。マタタビに含まれるマタタビラクトン・アクチミジンという有機物が原因とされている。マタタビのほかにリンドウ科のミツガシワも同様の効果をもち、西洋ではイヌハッカcat nipがネコに恍惚状態をおこすことが知られている。この効果は個体差が大きいが、普通は雌より雄に強く現れ、子ネコはまったく反応しない。〈成島悦雄

[品種]
被毛の長さにより長毛種と短毛種に2大別される。毛質や毛色は品種によりさまざまのものがみられる。イヌほど体形の差異がなく、品種も少ない。〈成島悦雄

長毛種

〔1〕ペルシアネコ 単にペルシアともよばれる。長毛種の代表的な品種。アフガニスタン在来のペルシアネコとトルコ在来のアンゴラネコをもとに、イギリスで作出された。毛色により多くの種類があるが、そのいくつかを以下に列挙する。ブルー(被毛は青1色)、ホワイト(純白)、ブラック(黒)、クリーム(淡黄色)、レッド(赤)、チンチラ(銀白色で先端のみわずかに黒)、シェーデッドシルバー(チンチラに似るが毛の先端の黒が多い)、タビー(縞(しま)模様をもつ)、トーティシェル(黒、赤、淡黄色のべっこう色)、キャリコ(トーティシェルの色に白が加わる)、バイカラー(黒と白、青と白など)。
〔2〕ヒマラヤン シャムネコとペルシアネコを交配して作出された。体形と被毛の長さはペルシアネコから、被毛の色はシャムネコから受け継いだ。ポイント(被毛先端の色の濃い部分)の色によってシールポイント(アザラシのような茶褐色)、ブルーポイント、チョコレートポイント、ライラックポイント(薄紫)、フレームポイント(鮮やかな橙(だいだい)色)などの種類がある。
〔3〕バーマン ミャンマービルマ)の寺院で飼われていたネコをもとに、フランスで作出された。ヒマラヤンに似るが、四肢の先端が白く、白い手袋をはめているようにみえる。
〔4〕バリネーズ 毛の長いシャムネコ。突然変異を利用してアメリカで作出された。〈成島悦雄

短毛種

〔1〕シャムネコ 代表的な短毛種。タイ王室で飼われていたネコが1800年代にイギリスに渡り、現在のシャムネコのもとになったといわれる。ほっそりした体形で、気品にあふれ美しい。顔は逆三角形のV字形で耳は大きく根元は幅広い。目は青く、つり上がっている。シャムネコのいちばんの特徴は、顔、耳、尾、足先などのポイントで、シールポイント、チョコレートポイント、ライラックポイント、ブルーポイント、レッドポイント、タビーポイントなどがある。
〔2〕アビシニアン アビシニア高原(エチオピア高原)原産。リビアヤマネコにもっとも近いといわれ、古代エジプトの壁画に描かれているネコに姿が似る。毛の1本ずつが2、3色に分かれ、毛の先端にいくほど色が濃くなるティッキングといわれる被毛をもつ。
〔3〕ビルマネコ 別名バーミーズ。ビルマ在来のネコにシャムネコを交配してアメリカで作出された。筋肉質で骨格はがっしりしている。毛色はセーブル・ブラウンとよばれる濃い褐色で、下腹部は色が薄くなっている。被毛は体に密着し、絹のような光沢をもつ。
〔4〕ロシアンブルー スカンジナビア原産。全身が明るい青色の毛で覆われ、毛先は銀色。目は濃い緑色。上毛とともに下毛も長く、密生し、ダブルコート(二重毛)のようにみえる。寒さに強く、雪の上でも遊び回る。
〔5〕レックス 突然変異で生まれた縮れ毛のネコを固定した品種。上毛を欠き、下毛は短く柔らかで、縮れて巻いている。ローマン・ノーズとよばれる高く盛り上がった鼻すじも特徴の一つ。体は長く、ほっそりしている。
〔6〕マンクス イギリスのマン島原産。生まれつき尾を欠くのが特徴で、本来尾のある部分はへこんでいるか、毛の房となっている。前肢に比べ後肢が著しく長いため腰高で、ウサギが跳ねるような歩き方をする。
〔7〕ジャパニーズボブテール ボブテールとは切り尾のことで、尾の短いことに由来する。日本の三毛ネコをもとにアメリカで改良固定された。途中で曲がっている短い尾は、扇形に生えた毛で覆われている。
〔8〕日本ネコ 起源は、前述のように仏教の教典とともに中国から渡ってきた唐猫(からねこ)であるといわれている。額は広く、顔が丸い。尾の長さは一定しない。短毛で毛色は単色、斑(はん)(三毛など)、縞といろいろみられる。鳴き声も美しい。なじみ深い日本ネコもまだ品種としては固定されていない。現在、基準をつくり品種として確立する試みがなされている。〈成島悦雄

[飼育方法]
ネコを飼い始めるには、離乳の済んだ2~3か月齢がよい。これ以前では哺乳の必要があるとともに、まだ雌親からネコとして必要な基本的生活方法を学びきっていないため、成長しても正常な行動をとれなくなるおそれがある。一方、月齢数のいったネコでは飼い主になつきにくくなる。子ネコは健康な個体を選ぶ。健康な子ネコは毛並みがきれいで毛に光沢があり、目やに、涙、耳垢(あか)、鼻水、よだれ、下痢症状といった体の汚れがない。
 ネコは本来、肉食性のため肉や魚が餌(えさ)として最適であるが、内容に変化をもたせ栄養のバランスを考える。餌に味つけは必要なく、塩気の多いものは水出しして与える。魚や鶏肉は骨がのどや消化管に刺さる危険があるので、骨を取り除いて与える。給餌(きゅうじ)回数は1日1、2回、時間と場所は一定にする。
 ネコと人間が上手につきあっていくには、ネコにマナーを教えなくてはならない。とくにトイレとつめ研ぎのしつけが重要である。トイレは、中で向きを変えられるぐらいの大きさの箱に、市販のトイレ用砂や新聞紙の細片を入れて用意する。ネコが糞(ふん)や尿をするそぶりをみせたら、すぐにトイレに連れて行き用を足させる。何回か繰り返すうちにトイレを覚えるようになる。トイレの場所は人目のつきにくい部屋の隅がよい。柱や家具をつめで傷められるのを防ぐには、つめ研ぎ板を用意し、つめを研ぐしぐさをみせたらただちにつめ研ぎ板の前に連れて行き、この板でつめを研ぐことを覚えさせる。しつけのこつは、飼い主の希望どおりの行動をしたときに大いに褒め、そそうをしたときはその場でしかることである。
 ネコは普通、交尾後63~65日で子を産む。妊娠中は食欲が増すため給餌量を増やすとともに、栄養的にカルシウムやビタミンDの多く含まれる食物、たとえば牛乳やチーズを与えるようにする。妊娠末期になると落ち着きをなくし、家具と壁のすきまや押し入れなど人目のつきにくい場所に入りたがる。このようなようすをみせたら産室を用意する。産室は、雌親がゆったりと横になれる広さの木箱や段ボール箱でよく、箱の蓋(ふた)はあったほうが雌親が落ち着く。箱の底には新聞紙を敷く。普通4~6頭の子ネコが生まれる。子が生まれる間隔は30~40分で、軽いお産なら2~3時間で終了する。子ネコが生まれたら、目が開いて歩き始めるまで雌親に育児を任せ、産室を過度にのぞくのは避ける。子を欲しくないときは不妊手術を行う。雄の場合は精巣を、雌の場合は卵巣と子宮を摘出する。生後1年ぐらいが手術の適期である。不妊手術後は雌雄とも体重が増加し性質もおとなしくなる。〈成島悦雄

[健康管理]
体調がおかしくなると元気や食欲もなくなり、うずくまってじっとしている。下痢、嘔吐(おうと)、咳(せき)、鼻汁、涙といった症状が病気により現れる。毎日の観察が病気の早期発見につながる。健康時の体温は38~39℃前後である。体温の測定には、デジタル式の体温計か、ガラス製ならじょうぶな獣医師用体温計を用いる。体温計の表面にワセリンを塗って滑らかにし、優しく肛門に挿入して測る。飼いネコの通常体温を知っておくとよい。
 伝染病のなかではネコ伝染性腸炎が幼若のネコにとって恐ろしい病気で、死亡率も高い。主症状は嘔吐で、ときに下痢も伴う。発病4日目には血液中の白血球がほとんど消失してしまうことから汎(はん)白血球減少症ともよばれる。子ネコには予防注射が勧められる。
 ネコインフルエンザは年齢を問わず多くのネコに感染するが、2~3週間の経過で治癒し、死亡率は低い。涙、鼻汁、くしゃみ、よだれが主症状である。感染力が強いため、かかったネコは他のネコから隔離し、湯たんぽなどで保温する。
 寄生虫では回虫、鉤虫(こうちゅう)、条虫、コクシジウムがよくみられる。食欲にむらがある、食べても太らない、変なものを食べる、下痢、便秘、消化不良といった症状が現れる。定期的な検便と、飼育環境を清潔に乾燥して保つことが予防となる。
 ネコは清潔好きで、被毛の手入れに余念がないが、このとき毛もいっしょに飲み込み、胃の中に毛の塊をつくってしまうことがある。普通、自分から吐き出してしまうが、ときに吐き出せなくなるほど毛の塊が大きくなると毛球症とよばれる。重症の場合は胃を切開して毛球を取り出す。とくに長毛種がかかりやすい。流動パラフィンを定期的に投与し、被毛のブラッシングを丹念に行って予防する。
 老齢のネコには腫瘍(しゅよう)も多くみられる。とくに雌では乳腺腫瘍がまれではない。〈成島悦雄

[民俗・伝承]

世界
ネコは、世界各地でさまざまな宗教的、神秘的観念と結び付けられている。もっとも早く家畜化していた古代エジプトにおいては神聖視もされ、バステトという名のネコの頭をした女神が広く崇拝されていた。またエジプトの遺跡からは何千というネコのミイラが、ときにはその餌(えさ)となるネズミのミイラとともに発掘されている。ペルーのインディオの社会でも、ネコは、山の神の使いのうちでもいちばん重要な精霊がとる姿だと信じられている。ヨーロッパでは、ネコは妖術(ようじゅつ)信仰と結び付いていたために、これに絡んだネコ殺しの風習が各地でみられたが、とりわけ黒ネコには魔性の力が宿るとされ、魔女が好んで姿を変える使い魔であるとも信じられてきた。また強く性的な意味合いで女性と連想づけられることも多く、ネコを表す幼児語プッシーpussyは俗語で女性の陰部をさしている。
 アフリカの南スーダンに住むアザンデの人々の間では、アダンダラとよばれる化け猫が非常に恐れられ、森でその姿を一目でも見た者は死ぬとされている。アダンダラは、ネコと性関係をもった女性がひそかに産み落とす動物であると考えられており、女性の異常な性行動一般に結び付けられている。そして男たちがひそかに恐れていることの一つである妻たちの同性愛もアダンダラとよばれている。タンザニアのカグルの人々はネコをイヌと並ぶ愛玩(あいがん)動物の一つとして飼っているが、一方でネコの愛液が人を殺害する強力な邪術の材料になると信じて、警戒している。
 ネコを特殊な方法で埋葬しなければならないとする所もあり、たとえば沖縄のある地域では、家で死んだネコは家人に災いをもたらすことのないように、木の枝からちょうど首つりをしたようなかっこうで葬り、特別な呪文(じゅもん)を唱えなければならなかった。ケニアのドゥルマ社会では、ネコはあらゆる獣のうちでも、人間と同じようにきちんと埋葬せねばならない唯一の動物とされる。〈濱本 満〉

日本
枕草子(まくらのそうし)』に、「上に候ふ御猫は冠(こうぶり)得て命婦(みょうぶ)のおとどとていみじうをかしければ……」と愛猫が五位の位を頂いたことがみえているが、イヌとともに古代から人家に飼われていたネコには、イヌと違っていろいろな怪談が語られている。とくに三毛ネコにその話が多く、ネコは各地で、一貫目近くになると化けるといわれている。また、年を経たネコは尾が二つに割れて「猫又(ねこまた)」になるといわれ、『徒然草(つれづれぐさ)』に「奥山に猫又といふものありて……」とあり、藤原定家(ていか)の日記『明月記(めいげつき)』にも、1233年(天福1)南都に猫又が現れて一夜に7、8人の死者が出たと記されている。このほか、近世における鍋島(なべしま)・有馬(ありま)両家の猫騒動が有名である。しかし逆に舟乗りなどは、三毛の雄猫を珍重して航海の守り神としている。
 ネコは昔話や伝説にも多く登場するが、「猫と狩人(かりゅうど)」では、狩人が山に出かけるので鉄砲玉を数えていると、それを見ていた飼い猫が山で怪物となって狩人を襲い、狩人は用意した隠し玉でネコを射ち殺し、助かる。またネコは3年飼っても3日の恩しか知らないというが、「猫檀家(ねこだんか)」では、貧乏寺の飼い猫がその呪力(じゅりょく)によって檀家を増やし、恩返しをする。ネコが十二支に入っていないいわれを語る話も各地にあるが、これには2通りあり、その一つは涅槃(ねはん)(釈迦(しゃか)入滅の日といわれる2月15日)のときにネコが駆けつけなかったからとするものと、神様が正月にやってきた順に十二支を決めるといわれた際、ネズミがネコに日を遅らせて告げたために除外されてしまったとするもので、それ以来怒ったネコはネズミをとるという。
 三重県松阪市では、12月8日を「猫随神(ねこずいしん)」といってこの日ネコに御馳走(ごちそう)をするが、岩手県気仙(けせん)郡では「猫の年取り」といって、2月1日の年重ねの祝いに銭と餅(もち)を十字路に捨てて厄払いをする。また葬式の際にネコを遠ざける風習は全国的にみられ、死体の上に刃物を置いてネコが近づくのを防ぐのは、葬送のときネコが火車(かしゃ)となって風雨をおこし、棺を空中に巻き上げるからという。〈大藤時彦

『大木卓著『猫の民俗学』(1979・田畑書店) ▽キャサリン・M・ブリッグズ著、アン・ヘリング訳『猫のフォークロア――民俗・伝説・伝承文学の猫』(1983・誠文堂新光社) ▽木村喜久弥著『ねこ――その歴史・習性・人間との関係』(1986・法政大学出版局) ▽平岩米吉著『猫の歴史と奇話』新装版(1992・築地書館) ▽バーバラ・ホーランド著、川合あさ子訳『猫のことなら――生態と行動 歴史と伝承』(1992・心交社) ▽ブルース・フォーグル著、山崎恵子訳『キャッツ・マインド――猫の心と体の神秘を探る』(1996・八坂書房) ▽ジェラルド・ハウスマン他著、池田雅之・桃井緑美子訳『猫たちの神話と伝説』(2000・青土社) ▽岩崎るりは著、小山秀一監修『猫のなるほど不思議学――知られざる生態の謎に迫る』(2006・講談社) ▽マイケル・W・フォックス著、奥野卓司・新妻昭夫他訳『ネコのこころがわかる本――動物行動学の視点から』(朝日文庫)』


🔷世界原色百科の飼育の歴史に関する記述は注目されるが、現在の定説とは大きく異なる。
世界大百科はやや期待はずれの印象。
ニッポニカは記述内容に問題がないわけではないが、なんと言っても圧倒的な情報量か凄い。