しこしこ書くブログ

特にテーマは決めずに書きます

樺美智子さんの命日

今日6月15日は樺美智子さんの命日。
もう樺美智子さんの名を記憶している人も少数しか居ないだろうが。


ふと樺美智子さんのWikipedia
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%BA%E7%BE%8E%E6%99%BA%E5%AD%90
を読んでみて、「え?」と思った。
樺美智子さんが一般学生ではなくブントの活動家であり、だから殺害されても仕方なかったみたいな書き方には憤りを覚える。

形容詞本活用の未然形について

形容詞本活用の未然形については

①未然形を認めない
②接続助詞「は」が下接する場合に限り未然形を認める

の二つの考え方があります。


例えば伊勢物語82段の

おしなべて峯もたひらになりななむ
山の端なくは月も入らじを

という歌の「なくは」は、古くは「なくば」と読まれ、【「無し」の未然形「無く」+接続助詞「ば」】と考えられていました。

ところが、橋本進吉氏が「万葉集ではこのような箇所には『波』の字が使われており、これは清音の『は』を表す字なので、『なくば』ではなく『なくは』であり、【「無し」の連用形+係助詞「は」】である。従って形容詞本活用には未然形は無い」と述べた事で、形容詞本活用の未然形は無いとの見解が主流になりました。

これに対して「この『は』は係助詞ではなくて接続助詞の『ば』が清音化したものであって、形容詞本活用に未然形はある」と主張する人も出て来たのですが、「ゆくさきおほく」の場合は「は」に接続しているわけでは無いので、①説②説のいずれでも未然形とは認められず、連用形と考えるしかありません。
この場合は連用中止法でしょう。

知恵袋の回答(2021.6.8)

【用例】

《未然形接続》
★春日野の若紫のすり衣
 しのぶのみだれかぎり[知ら]〘れ〙ず
伊勢物語1段〉
★男はた[寝]〘られ〙ざりけれは
伊勢物語69段〉
★これに物脱ぎて[取ら]〘せ〙ざらむ者は座 
 より立ちね
〈大和物語146段〉
★われ負けて人を[喜ば]〘しめ〙んと思はば
徒然草130段〉
★なかなかに恋に[死な]〘ず〙は桑子にぞ
 なるべかりける玉の緒ばかり
伊勢物語14段〉
★君[来]〘む〙といひし夜ごとに過ぎぬれば
 頼まぬものの恋ひつつぞ寝る
伊勢物語23段〉
★その人のもとへ[往な]〘むず〙なりとて
伊勢物語96段〉
★世中にたえて桜のなかりせば
 春のこころは[のどけから]〘まし〙
伊勢物語82段〉
★一年にひとたび来ます君待てば
 宿かす人も[あら]〘じ〙とぞ思ふ
伊勢物語82段〉
名取川いかなる名を取りたるならむと[聞か]〘まほし〙
枕草子、河は〉
★名にし[負は]〘ば〙いざ言問はむ都鳥
 我が思ふ人はありやなしやと
伊勢物語9段〉
★あひ[思は]〘で〙かれぬる人をとどめかね
 わが身は今ぞ消えはてぬめる
伊勢物語24段〉
★赤紐のとけたるを「これ[結ば]〘はや〙」といへば
枕草子、宮の五節出ださせたまふに〉
★はや夜も[明け]〘なむ〙と思ひつつゐたりけるに
伊勢物語6段〉

《連用形接続》
★忘れては夢かとぞ思ふ[思ひ]〘き〙や
 雪ふみわけて君を見むとは
伊勢物語83段〉
★しるよしして狩に[往に]〘けり〙
伊勢物語1段〉
★わが心なぐさめ[かね]〘つ〙更級や
 姨捨山に照る月を見て
〈大和物語156段〉
★年だにも十とて四つは経にけるを
 いくたび君をたのみ[来]〘ぬ〙らむ
伊勢物語16段〉
★その沢にかきつばたいとおもしろく[咲き]    〘たり〙
伊勢物語9段〉
★竹取がよよに泣きつつ[とどめ]〘けむ〙
君は君にと今宵しもゆく
〈大和物語77段〉
★常に[聞き]〘たき〙は琵琶和琴
徒然草16段〉
★白玉か何ぞと人の問ひし時
 露と[答へ]〘て〙消えなましものを
伊勢物語6段〉
★病の重るも住する隙[なく]〘して〙死期既に近し
徒然草241段〉
★から衣[き]〘つつ〙なれにしつましあれば
 はるばるきぬるたびをしぞ思ふ
伊勢物語9段〉
★武蔵野はけふはな[焼き]〘そ〙若草の
 つまもこもれり我もこもれり
伊勢物語12段〉
★いかでこの在五中将に[あはせ]〘てしが    な〙と思ふ心あり
伊勢物語63段〉
★いかでこの人に思ひ知りけりとも[見え]〘にしがな〙とつねにこそおぼゆれ
枕草子、よろづのことよりも情あるこそ〉
★霍公鳥無かる国にも[行き]〘てしか〙
 その鳴く声を聞けば苦しも
万葉集1467〉
★伊勢の海に遊ぶ海人とも[なり]〘にしか〙
 浪かきわけてみるめかづかむ
後撰和歌集891〉

金井直の詩(高島ツネに捧げた二編)

金井直の年譜の昭和19年には《夏から叔父の事務所に勤務する。ボードレールなどを読む。同僚の高島ツネを愛するようになる。ツネは、ぼくより五才年上だった。ツネの影響で、樋口一葉を読み、クラシック音楽にも興味をもつようになる。》とある。
そして、昭和20年の年譜には《空襲が激しくなる。三月十日、本所千歳町でツネ戦災死。死体のるいるいたる焼跡を探しまわったが、ついにツネの死体は発見できなかった。その体験は、「白い花」「木琴」「あじさい」などのモチーフとなる。》と書かれている。



★白い花

静かに魂のなげく夜
焼野は月の光に濡れ
道に落ちて動かない
私の影
恐ろしい紅薔薇の燃える前の日
また明日と言って別れたまま
もう地上では逢えぬ人よ
かぎりない追憶にさそわれて
頬に散る白い花



★木琴

妹よ
今夜は雨が降っていて
お前の木琴がきけない

お前はいつも大事に木琴をかかえて
学校へ通っていたね
暗い家の中でもお前は
木琴といっしょにうたっていたね
そして よくこう言ったね
「早く街に赤や青や黄色の電燈がつくといいな」

あんなにいやがっていた戦争が
お前と木琴を焼いてしまった

妹よ
お前が地上で木琴を鳴らさなくなり
星の中で鳴らし始めてからまもなく
街は明るくなったのだよ

私のほかに誰も知らないけれど
妹よ
今夜は雨が降っていて
お前の木琴がきけない

終りのない始まり

北村太郎の年譜には「1952年8月、妻子、川崎の海で奇禍により死亡」とある。進駐軍ジープに撥ねられたと書かれたものを読んだような記憶もある。




★終りのない始まり

ぼくらはやがて冷たい闇に沈むだろう
さよなら、あまりに短いぼくらの夏の強い光りよ!  ボードレール


いま、何時?
   夢ばかり見つめていた黒い眼と、
   ぼくの髪をさぐった指の焼かれるときだ。

いま、何時?
   馬車の鈴ばかり聴いていた小さな耳と、
   葡萄のような乳房の焼かれるときだ。

いま、何時?
   冒険の林ばかり駆けていたほそい脚と、
   蜜を滴らした唇の焼かれるときだ。

いま、何時?
   犬ばかり追っていた冷たい鼻と、
   いい匂いのした頬の焼かれるときだ。

いま、何時?
   お互いに深く愛しあった八歳の
   男の子と、若い母の焼かれるときだ。

いま、何時?
   おお、夕ぐれの横浜子安火葬場、
   夏の光りが、生けるものたちの影を
   長々と敷石にうつす、午後六時!

骨をひろう人たちよ、
どうか、泣かないでください。
泣いて鉄の箸に挟んだ昭彦の骨を
落したりしないでください。まだ熱い
この子の骨を、ひとつでもコンクリートの床に落すと、
そのひびきが、ぼくの骨に伝わりそうです。
骨をひろう人たちよ、
どうか、泣かないでください。
泣いて錆びた箸に挟んだ和子の骨を
落したりしないでください。まだ赤い
和子の骨を、ひとつでも靴のうえに落すと、
その音が、ぼくの骨を折りそうです。
しずかな、しずかな、夏の
夕方の火葬場、光りが斜めに射す窓の
向うにある空は、沈黙して
ひろがっています。ああ、どうか
泣かないでください。死んだものたちの
影も、あの鰯雲のあたりで
おしゃべりをして、にこにこと
ほほえんでいるころかも知れません。どうか
泣かないで、骨を
ひろう人たちよ、泣いて昭彦と
和子の骨を落したりしないでください…

つちくれを一握り、ぱらぱらと
落す、これで終りだ、とパスカルはいいました。ぼくはシャヴェルで
二つの骨壺のうえに、しめった土を
落しました。微かな
音が、生の終りをつげました。たしかに
これで終りです。晩夏の昼の
しずかな郊外の墓地で、そのあと
墓掘人夫が思いきりよく、たくさんの
土をほうり込みました。さよなら、
和子と昭彦よ、さよなら。ぼくは
粗末な、新しい木の墓標のうえから、水を
かけました。和子よ、この水で
気持よく乳房をぬらしておくれ、昭彦よ、
この冷たい水を、ほそい咽喉をあけて
飲んでおくれ。たしかに
これで終りです。百舌が高い樹のうえから
生きのこったものの心臓を
裂きました。そよかぜがコスモスの
草むらをなでてゆきました。遠くから
電車の走る音がきこえます。たしかにこれで終りました。
何が? 生けるものと
生けるものとの関係が、です。そして
いま、この郊外の
晩夏の昼、もっとスイートな関係が、死せるものたちと
生けるものとの関係が、始まったのです。たしかに、それは、
スイートな、スイートな、終りのない始まりでした。

ウイスキーかジンを、ほんの
グラスに一杯、飲むと、すぐにぼくは
酔っぱらう。そして、すぐに
睡ってしまう。笑わないでおくれ、陽気な唄の一つも歌えないからといって。
ぼくははやく睡りたいのだ。だって
暗い夢のなかで、おまえたちに逢えるからね。笑わないでおくれ、冗談の
一つもいえないからといって。ぼくは
はやく睡りたいのだ。だって
夢のなかには、生のなかよりも充分の
死があるのだから。秋の
夜は寂しい。コオロギの声が、ぼくの
睫毛をくすぐるよ。だから
ぼくははやく睡りたいんだ。ウイスキーかジンを、
ほんのグラスに一杯飲むというわけなんだ。
そうすれば、揺れて光るアルコールの鏡のなかで見るよりも、はっきりと
おまえたちの微笑が見えるからね。昭彦の
栗鼠のような眼と、和子の
レモンのような頬が、闇のドアの向うにのぞくからね。
秋の
夜は長い。電灯の光りが壁にうつすのは、
生きているぼくのレントゲン写真だ。すぐに酔っぱらって
睡ってしまうからといって、笑わないでおくれ、ほんのグラスに
一杯でさ。