つれづれ思うこと

特にテーマは決めずに書きます

知恵袋の回答(2021.4.11)

「最新詳解古語辞典」(佐藤定義、1991年、明治書院)ではこう書かれています。

【まじ】
未然形:[本]○
    [補]まじから

連用形:[本]まじく、まじう
    [補]まじかり

終止形:[本]まじ
    [補]○

連体形:[本]まじき、まじい
    [補]まじかる、まじかん

已然形:[本]まじけれ
    [補]○

命令形:[本]○
    [補]○

※「まじう」「まじい」「まじかん」は音便形です。

※マドンナの方は全部補助活用ですね。補助活用だけに限れば正しいと言って良いでしょう。
他の参考書の方は本活用と補助活用とが入り混じっているようです。
正確には⇧にある通りです。

知恵袋への回答 2021.4.2

「日本文法事典」(北原保雄鈴木丹士郎・武田孝・増淵恒吉・山口佳紀編、1981年、有精堂)より

《間投助詞》
 文節の終わりについて、語勢を強めたり、感動を表したりする。

 文語では「や・よ・を」、口語では「ね・さ」などが、これに含まれる。学説によっては、間投助詞を特に立てないで、終助詞の中に含めることがある。確かに、間投助詞は終助詞に類似した性格を持っているけれども、いくつかの相違点もある。まず、その用いられる位置に違いがある。すなわち、終助詞が、常に文末に置かれるのに対し、間投助詞は文末だけではなく、文節の終わりにも自由に置くことができる。次に、終助詞は、それを省けば文の成立に重大な影響を及ぼす。例えば、「そんなに苦しい[か]。」の中で、「か」を省けば、文章は全く変わってしまう。このように、終助詞の機能は極めて大きいが、間投助詞は、それを省いても、文の成立に大きな影響はない。〈参考文献/山口明穂「間投助詞」(『日本文法大辞典』昭46、明治書院)〉
 以下、間投助詞の各語について説明していく。
【や】 文語の「や」は、詠嘆および呼びかけを表す。例えば、「声絶えず鳴け[や]鶯ひととせにふたたびとだに来(く)べき春かは」〈『古今集』131〉、「吾妹子(わぎもこ)[や]我(あ)を忘らすな石上(いそのかみ)袖布留川(そでふるかは)の絶えむと思へや」〈『万葉集』3013〉のように用いられる。
【よ】 文語の「よ」は、詠嘆および呼びかけを表す。例えば、「今生(こんじゃう)でこそあらめ、後生(ごしゃう)てだに悪道へおもむかんずる事のかなしさ[よ]」〈『平家物語』巻一〉、「少納言[よ]、香炉峰の雪いかならむ」〈『枕草子』「雪のいと高う降りたるを」〉のように用いられる。
【を】 文語の「を」は、語調を整えたり、詠嘆を表したりする。例えば、「萩が花散るらむ小野の露霜(つゆじも)にぬれて[を]ゆかむさ夜はふくとも」〈『古今集』224〉、「つひにゆく道とはかねて聞きしかど昨日今日とは思はざりし[を]」〈『伊勢物語』)のように用いられる。
【ね】 口語の「ね」は、念を押す意を表す。例えば、「僕は[ね]、そんな事で驚いたりしないよ。」のように用いられる。なお、「ねえ」の形も用いられる。
【さ】 口語の「さ」は、相手の注意を引きとめる場合に用いられる。例を示す。「彼が[さ]、きっと来てくれるよ。」
   《桑山俊彦》



なお、辞書によって間投助詞として挙げられている語に若干の相違があるので、各辞書の記載を調査してみた。


【い】
★角川古語辞典/改訂版(武田祐吉久松潜一、1963年、角川書店
★角川新版古語辞典(久松潜一・佐藤謙三、1973年、角川書店
★新選古語辞典/新版(中田祝夫、1974年、小学館
★基本古語辞典/第三版(小西甚一、1974年、大修館書店)
★角川最新古語辞典/増補版(佐藤謙三・山田俊雄、1980年、角川書店
★学研要約古語辞典(吉沢典男、1987年、学習研究社
★角川必携古語辞典(山田俊雄・吉川泰雄、1988年、角川書店
★最新詳解古語辞典(佐藤定義、1991年、明治書院
★新明解古語辞典/第三版(金田一春彦、1995年、三省堂
★ベネッセ古語辞典(井上宗雄・中村幸弘、1997年、ベネッセコーポレーション

【え】
★基本古語辞典/第三版(小西甚一、1974年、大修館書店)

【こそ】
★新選古語辞典/新版(中田祝夫、1974年、小学館
★基本古語辞典/第三版(小西甚一、1974年、大修館書店)
★学研要約古語辞典(吉沢典男、1987年、学習研究社

【さて】
★基本古語辞典/第三版(小西甚一、1974年、大修館書店)

【し】
★角川古語辞典/改訂版(武田祐吉久松潜一、1963年、角川書店
★旺文社標準古語辞典(鈴木一雄、1973年、旺文社)
★旺文社学習古語辞典/改訂版(鈴木一雄、1977年、旺文社)

【て】
★基本古語辞典/第三版(小西甚一、1974年、大修館書店)

【な】
★最新詳解古語辞典(佐藤定義、1991年、明治書院

【に】
三省堂古語辞典/修訂版(小松英雄、1974年、三省堂
三省堂セレクト古語辞典(桑原博史、1987年、三省堂
★最新詳解古語辞典(佐藤定義、1991年、明治書院
★例解古語辞典/第三版(佐伯梅友小松英雄鈴木丹士郎土井洋一・林史典・森野宗明、1992年、三省堂
★旺文社全訳学習古語辞典(宮腰賢・石井正己・小田勝、2006年、旺文社)
★旺文社全訳古語辞典/第五版(宮腰賢・石井正己・小田勝、2018年、旺文社)

【は】
★角川古語辞典/改訂版(武田祐吉久松潜一、1963年、角川書店

【も】
★角川古語辞典/改訂版(武田祐吉久松潜一、1963年、角川書店
★基本古語辞典/第三版(小西甚一、1974年、大修館書店)
★学研要約古語辞典(吉沢典男、1987年、学習研究社
★新明解古語辞典/第三版(金田一春彦、1995年、三省堂

【もや】
★例解古語辞典/第三版(佐伯梅友小松英雄鈴木丹士郎土井洋一・林史典・森野宗明、1992年、三省堂
★新明解古語辞典/第三版(金田一春彦、1995年、三省堂

【もよ】
★例解古語辞典/第三版(佐伯梅友小松英雄鈴木丹士郎土井洋一・林史典・森野宗明、1992年、三省堂
★新明解古語辞典/第三版(金田一春彦、1995年、三省堂

【や】
★角川古語辞典/改訂版(武田祐吉久松潜一、1963年、角川書店
★時代別国語大辞典上代編(上代語辞典編修委員会、1967年、三省堂
★角川新版古語辞典(久松潜一・佐藤謙三、1973年、角川書店
★旺文社標準古語辞典(鈴木一雄、1973年、旺文社)
三省堂古語辞典/修訂版(小松英雄、1974年、三省堂
★新選古語辞典/新版(中田祝夫、1974年、小学館
★基本古語辞典/第三版(小西甚一、1974年、大修館書店)
★旺文社学習古語辞典/改訂版(鈴木一雄、1977年、旺文社)
★角川最新古語辞典/増補版(佐藤謙三・山田俊雄、1980年、角川書店
★学研要約古語辞典(吉沢典男、1987年、学習研究社
三省堂セレクト古語辞典(桑原博史、1987年、三省堂
★角川必携古語辞典(山田俊雄・吉川泰雄、1988年、角川書店
★岩波古語辞典/補訂版(大野晋佐竹昭広・前田金五郎、1990年、岩波書店
★最新詳解古語辞典(佐藤定義、1991年、明治書院
★要語全訳必修古語辞典(平田喜信、1992年、学習研究社
★例解古語辞典/第三版(佐伯梅友小松英雄鈴木丹士郎土井洋一・林史典・森野宗明、1992年、三省堂
★新明解古語辞典/第三版(金田一春彦、1995年、三省堂
講談社キャンパス古語辞典(馬淵和夫、1995年、講談社
★旺文社高校基礎古語辞典/第二版(古田東朔、1997年、旺文社)
★ベネッセ古語辞典(井上宗雄・中村幸弘、1997年、ベネッセコーポレーション
★完訳用例古語辞典(小久保崇明、1999年、学習研究社
三省堂詳説古語辞典(秋山虔渡辺実、2000年、三省堂
★全訳用例古語辞典/第二版(菅野雅雄・中村幸弘、2002年、学習研究社
★角川全訳古語辞典(久保田淳・室伏信助、2002年、角川書店
小学館全文全訳古語辞典(北原保雄、2004年、小学館
★旺文社全訳学習古語辞典(宮腰賢・石井正己・小田勝、2006年、旺文社)
★東書最新全訳古語辞典(三角洋一・小町谷照彦、2006年、東京書籍)
三省堂全訳基本古語辞典/第三版増補新装版(鈴木一雄・桑原博史・山口佳也・鈴木康史、2007年、三省堂
★ベネッセ全訳古語辞典/改訂版(中村幸弘、2007年、ベネッセコーポレーション
★古典基礎語辞典(大野晋他、2011年、角川学芸出版
★学研全訳古語辞典/第二版(小久保崇明、2014年、学習研究社
★旺文社古語辞典/第十版増補版(松村明・山口明穂・和田利政、2015年、旺文社)
★学研学習用例古語辞典/改訂第三版(菅野雅雄・中村幸弘、2015年、学研教育出版
三省堂全訳読解古語辞典/第五版(鈴木一雄・小池清治・倉田実・石埜敬子・森野栄・高山善行、2017年、三省堂
★新全訳古語辞典(林巨樹・安藤千鶴子、2017年、大修館書店)
★旺文社全訳古語辞典/第五版(宮腰賢・石井正己・小田勝、2018年、旺文社)

【やし】
★例解古語辞典/第三版(佐伯梅友小松英雄鈴木丹士郎土井洋一・林史典・森野宗明、1992年、三省堂
★新明解古語辞典/第三版(金田一春彦、1995年、三省堂

【よ】
★時代別国語大辞典上代編(上代語辞典編修委員会、1967年、三省堂
★角川新版古語辞典(久松潜一・佐藤謙三、1973年、角川書店
★旺文社標準古語辞典(鈴木一雄、1973年、旺文社)
三省堂古語辞典/修訂版(小松英雄、1974年、三省堂
★新選古語辞典/新版(中田祝夫、1974年、小学館
★基本古語辞典/第三版(小西甚一、1974年、大修館書店)
★旺文社学習古語辞典/改訂版(鈴木一雄、1977年、旺文社)
★角川最新古語辞典/増補版(佐藤謙三・山田俊雄、1980年、角川書店
★学研要約古語辞典(吉沢典男、1987年、学習研究社
三省堂セレクト古語辞典(桑原博史、1987年、三省堂
★角川必携古語辞典(山田俊雄・吉川泰雄、1988年、角川書店
★岩波古語辞典/補訂版(大野晋佐竹昭広・前田金五郎、1990年、岩波書店
★最新詳解古語辞典(佐藤定義、1991年、明治書院
★要語全訳必修古語辞典(平田喜信、1992年、学習研究社
★例解古語辞典/第三版(佐伯梅友小松英雄鈴木丹士郎土井洋一・林史典・森野宗明、1992年、三省堂
講談社キャンパス古語辞典(馬淵和夫、1995年、講談社
★旺文社高校基礎古語辞典/第二版(古田東朔、1997年、旺文社)
★完訳用例古語辞典(小久保崇明、1999年、学習研究社
三省堂詳説古語辞典(秋山虔渡辺実、2000年、三省堂
★角川全訳古語辞典(久保田淳・室伏信助、2002年、角川書店
★全訳用例古語辞典/第二版(菅野雅雄・中村幸弘、2002年、学習研究社
小学館全文全訳古語辞典(北原保雄、2004年、小学館
★旺文社全訳学習古語辞典(宮腰賢・石井正己・小田勝、2006年、旺文社)
★東書最新全訳古語辞典(三角洋一・小町谷照彦、2006年、東京書籍)
三省堂全訳基本古語辞典/第三版増補新装版(鈴木一雄・桑原博史・山口佳也・鈴木康史、2007年、三省堂
★古典基礎語辞典(大野晋他、2011年、角川学芸出版
★学研全訳古語辞典/第二版(小久保崇明、2014年、学習研究社
★旺文社古語辞典/第十版増補版(松村明・山口明穂・和田利政、2015年、旺文社)
★学研学習用例古語辞典/改訂第三版(菅野雅雄・中村幸弘、2015年、学研教育出版
三省堂全訳読解古語辞典/第五版(鈴木一雄・小池清治・倉田実・石埜敬子・森野栄・高山善行、2017年、三省堂
★新全訳古語辞典(林巨樹・安藤千鶴子、2017年、大修館書店)
★旺文社全訳古語辞典/第五版(宮腰賢・石井正己・小田勝、2018年、旺文社)

【よし】
★例解古語辞典/第三版(佐伯梅友小松英雄鈴木丹士郎土井洋一・林史典・森野宗明、1992年、三省堂

【よな】
★例解古語辞典/第三版(佐伯梅友小松英雄鈴木丹士郎土井洋一・林史典・森野宗明、1992年、三省堂

【ろ】
★角川古語辞典/改訂版(武田祐吉久松潜一、1963年、角川書店
★時代別国語大辞典上代編(上代語辞典編修委員会、1967年、三省堂
★角川新版古語辞典(久松潜一・佐藤謙三、1973年、角川書店
★基本古語辞典/第三版(小西甚一、1974年、大修館書店)
★角川最新古語辞典/増補版(佐藤謙三・山田俊雄、1980年、角川書店
★学研要約古語辞典(吉沢典男、1987年、学習研究社
★角川必携古語辞典(山田俊雄・吉川泰雄、1988年、角川書店
★例解古語辞典/第三版(佐伯梅友小松英雄鈴木丹士郎土井洋一・林史典・森野宗明、1992年、三省堂
★ベネッセ古語辞典(井上宗雄・中村幸弘、1997年、ベネッセコーポレーション

【わ】
★時代別国語大辞典上代編(上代語辞典編修委員会、1967年、三省堂

【ゑ】
★角川古語辞典/改訂版(武田祐吉久松潜一、1963年、角川書店
★時代別国語大辞典上代編(上代語辞典編修委員会、1967年、三省堂
★角川新版古語辞典(久松潜一・佐藤謙三、1973年、角川書店
★新選古語辞典/新版(中田祝夫、1974年、小学館
★基本古語辞典/第三版(小西甚一、1974年、大修館書店)
★角川最新古語辞典/増補版(佐藤謙三・山田俊雄、1980年、角川書店
★学研要約古語辞典(吉沢典男、1987年、学習研究社
★角川必携古語辞典(山田俊雄・吉川泰雄、1988年、角川書店
★最新詳解古語辞典(佐藤定義、1991年、明治書院
★例解古語辞典/第三版(佐伯梅友小松英雄鈴木丹士郎土井洋一・林史典・森野宗明、1992年、三省堂
★ベネッセ古語辞典(井上宗雄・中村幸弘、1997年、ベネッセコーポレーション

【を】
★角川古語辞典/改訂版(武田祐吉久松潜一、1963年、角川書店
★時代別国語大辞典上代編(上代語辞典編修委員会、1967年、三省堂
★角川新版古語辞典(久松潜一・佐藤謙三、1973年、角川書店
★旺文社標準古語辞典(鈴木一雄、1973年、旺文社)
三省堂古語辞典/修訂版(小松英雄、1974年、三省堂
★新選古語辞典/新版(中田祝夫、1974年、小学館
★基本古語辞典/第三版(小西甚一、1974年、大修館書店)
★旺文社学習古語辞典/改訂版(鈴木一雄、1977年、旺文社)
★角川最新古語辞典/増補版(佐藤謙三・山田俊雄、1980年、角川書店
★学研要約古語辞典(吉沢典男、1987年、学習研究社
三省堂セレクト古語辞典(桑原博史、1987年、三省堂
★角川必携古語辞典(山田俊雄・吉川泰雄、1988年、角川書店
★岩波古語辞典/補訂版(大野晋佐竹昭広・前田金五郎、1990年、岩波書店
★最新詳解古語辞典(佐藤定義、1991年、明治書院
★要語全訳必修古語辞典(平田喜信、1992年、学習研究社
★例解古語辞典/第三版(佐伯梅友小松英雄鈴木丹士郎土井洋一・林史典・森野宗明、1992年、三省堂
★新明解古語辞典/第三版(金田一春彦、1995年、三省堂
講談社キャンパス古語辞典(馬淵和夫、1995年、講談社
★旺文社高校基礎古語辞典/第二版(古田東朔、1997年、旺文社)
★ベネッセ古語辞典(井上宗雄・中村幸弘、1997年、ベネッセコーポレーション
★完訳用例古語辞典(小久保崇明、1999年、学習研究社
三省堂詳説古語辞典(秋山虔渡辺実、2000年、三省堂
★全訳用例古語辞典/第二版(菅野雅雄・中村幸弘、2002年、学習研究社
★角川全訳古語辞典(久保田淳・室伏信助、2002年、角川書店
小学館全文全訳古語辞典(北原保雄、2004年、小学館
★旺文社全訳学習古語辞典(宮腰賢・石井正己・小田勝、2006年、旺文社)
★東書最新全訳古語辞典(三角洋一・小町谷照彦、2006年、東京書籍)
三省堂全訳基本古語辞典/第三版増補新装版(鈴木一雄・桑原博史・山口佳也・鈴木康史、2007年、三省堂
★ベネッセ全訳古語辞典/改訂版(中村幸弘、2007年、ベネッセコーポレーション
★古典基礎語辞典(大野晋他、2011年、角川学芸出版
★学研全訳古語辞典/第二版(小久保崇明、2014年、学習研究社
★旺文社古語辞典/第十版増補版(松村明・山口明穂・和田利政、2015年、旺文社)
★学研学習用例古語辞典/改訂第三版(菅野雅雄・中村幸弘、2015年、学研教育出版
三省堂全訳読解古語辞典/第五版(鈴木一雄・小池清治・倉田実・石埜敬子・森野栄・高山善行、2017年、三省堂
★新全訳古語辞典(林巨樹・安藤千鶴子、2017年、大修館書店)
★旺文社全訳古語辞典/第五版(宮腰賢・石井正己・小田勝、2018年、旺文社)

知恵袋の回答(2021.3.28)

「日本文法事典」(北原保雄鈴木丹士郎・武田孝・増淵恒吉・山口佳紀編、1981年、有精堂)の「文法学説」の項より。

【解説】

《橋本文法》
 橋本進吉の文法学説は、言語の形式面を重視するという特徴がある。形式文法あるいは形式主義の文法などと言われることもあるが、この、形式面を重視し、それに基づいてすぐれた成果を挙げたというところに、この文法が世に広く受け入れられた、大きな理由があると考えられる。
 橋本文法では、意味を有する言語単位として、「文」「文節」「単語」の三つが考えられているが、この「文節」という単位を創案したところに、大きな特徴がある。文を幾つかの単位に句切る考え方は、古くからあり、殊に、本居春庭が『詞通路(ことばのかよいじ)』の中で、

f:id:nobinyanmikeko:20210328014737j:plain

というように区分けしたのは、橋本文法における「文節」の区分けと共通するものである。これは、橋本文法の「文節」の考え方の普遍性を確かめるものとも言える。
 この文節をもとに、文の構造をとらえ、また、語の性格を判断して行くというように、橋本文法と「文節」との関連は、きわめて密接である。「文節」という単位は、非常にとらえやすく、そこに橋本文法のすぐれている点があるとも言える。ただし、「文節」をもとに文の構造を考える時、例えば、「白い花が咲いた。」のような場合、「白い」の語は「花」を修飾していると考えたいところであるが、「文節」論の立場に立つと、まず「白い 花が 咲いた」と分けて考えを進めるため、「白い」の文節が「花が」の文節を修飾するととらえることになり、語の一般的な感覚に合致しない不自然さがもたらされる、ということもある。

《時枝文法》
〈詞・辞の分類〉
 時枝文法は、自身の創案になる言語理論である「言語過程説」に基づく。まず、語の分類としては、(1)概念過程を含む形式(=詞)、(2)概念過程を含まぬ形式(=辞)の二類を考える。この(1)に属する語は、客観的な事態を表現するもので、(2)に属する語は、表現者の主観的な判断を表現するものである、とされる。この考え方は、言語主体の心理作用に関連することが大きく、その点から、橋本文法の「形式的な文法」に対して、「心理的な文法」というように呼ばれることがある。時枝文法の「詞・辞」の分類は、『手爾葉大概抄(てにはたいがいしょう)』(伝藤原定家)や『言語四種論(げんぎょししゅろん)』(鈴木朖すずきあきら〉)などの江戸時代以前の書物に見られる言語観と一致する点があると、時枝は説明する。右の書では、「詞(ことば)」「てにをは」という二類に分ける考え方が示されているが、特に、鈴木朖が「てにをは」を「心ノ声」と説いたのは、「辞」を「主観的な判断」とする時枝文法の考え方と、密接に関連する。この鈴木朖の「心ノ声」という考えは、中国の前漢の学者である揚雄(ようゆう、B.C.53〜18)の『法言』にある、「言ハ心ノ声也」に基づくものと考えられるが、その「心ノ声」という考えに立って、鈴木朖は、一般に言う「てにをは」のほかに、「アハレ」や「又」などの語も、これに含めている。これは、感動詞や接続詞を「辞」に分類する時枝文法と共通するものがある、と言える。『手爾葉大概抄』『言語四種論』、及び、それと類似する考え方をとる、江戸時代以前に、ことばについて書かれた書物、それらと共通する考え方を持つ時枝文法は、時枝自身の説明によれば、時枝誠記によって翻案されたものではなく、日本古来の考え方を受け継ぎ、それに基づいて体系立てられたものてある、ということになる。
〈入子(いれこ)型構造〉
 時枝文法での、文の構造を示す図式を「入子型構造」という。時枝文法では、「文」を構成する単位として、「詞」と「辞」との結合した「句」を考えるが、この場合、「詞」「辞」は対等の関係で結合するのではなく、「辞」が「詞」を包み、統一するとして、その関係は、

f:id:nobinyanmikeko:20210328024907j:plain

と図解されるとする。このように、「辞」が「詞」を包み込む形式を、「風呂敷型構造」と名づける。文は、この「句」の重なった形で表現されることが多い。例えば「梅の花が咲いた。」の文でいえば、

f:id:nobinyanmikeko:20210328025408j:plain

のように図解されるが、このように、「句」が入れ子のように重ねられて行くところから、「入子型構造」と名づけられたのである。この「入子型構造」によると、右の例文で「咲い―た」の部分が最も外側に来ているように、文の中で最も外側に来る、大きな枠は、述語の枠である。主語の枠(右の例文で言えば「梅の花―が」)なども、述語の中に含まれることになる。これは、述語が文末に来て、しかも、位置の確定しているのは述語だけであり、最重要な要素を占めるのは述語であるという、日本語の構造をとらえるのに、「入子型構造」がふさわしい形式であることを示すものだと、時枝は説明している。西欧語の場合は、述語は文の中間にあり、その前に主語が、その後に補語や目的語が、それぞれ来る、という構造を持っている。これは、時枝によれば、述語を中心に、その両側に諸要素が来るという、「天秤型統一形式」とでも呼ばれるべきもので、そこに日本語との大きな違いがあり、日本語では「入子型構造」のような独自なとらえ方が考えられるべきだという。「入子型構造」では、「辞」が「詞」を統括するという考えに立つが、「美しい花が咲く。」のような文の場合、「美しい」と「咲く」との「句」には「辞」が現れて来ない。時枝文法では、このような場合、

f:id:nobinyanmikeko:20210328031922j:plain

のように図解し、🔳の部分は表現内容が言語形式に現れていないとして、「零記号の辞」と名づけている。この「零記号の辞」については、言語として表現されていない部分に言語を考えるというところに無理が認められるし、「時枝氏のゼロ符号なるものは無意義であり、まちがひである」(橋本進吉『国文法体系論』)とする考え方もある。

《山田文法》
 山田孝雄は、日本古来の文法学を基盤にして、ヴント(W.Wundt)、スウィート(H.Sweet)、ハイゼ(W.L.C.Heyse)などの西欧の言語学を採り入れて文法論を展開した。論理的な立場に立とうとするもので、その意味から、橋本文法の「形式的な文法」、時枝文法の「心理的な文法」に対して、「論理的な文法」という名称の与えられることもある。山田文法は、江戸時代の富士谷成章(ふじたになりあきら、1738〜1779)の考え方からの影響が大きかったと考えられる。富士谷成章は、語を、「名」「よそい(=用言)」「かざし(=名詞以外の、文中で用言よりも上に用いられる語。副詞・感動詞・接続詞・代名詞なども含む)」「あゆひ(=助詞・助動詞・接尾語の類)」と四分類するが、山田孝雄の「体言・用言・副詞・助詞」という四分類の、「副詞」のとらえ方と「かざし」とは、類似している。語の問題で言えば、いわゆる「助動詞」を、「複語尾」とよび、動詞の語尾の複雑に屈折・分出したものとして、一品詞にたてなかったこと、助詞を「関係語」として、他の三類の品詞を統合する「観念語」と対比させてその機能を定めるとともに、その中を「格助詞」「接続助詞」「副助詞」「係助詞」「終助詞」「間投助詞」の六類に分類したことが、殊に注目される。この助詞の六分類は、現在でも最も普及している分類方法である。山田孝雄は、文法を体系的に説いた書として、『日本文法論』(明35〈一部〉、明41〈完結〉)、『日本文法講義』(大11)、『日本口語法講義』(大11)、『日本文法学概論』(昭11)などを著しており、『日本文法学概論』において、最も完備した形のものが見られるわけであるが、彼の最初の書である『日本文法論』は、日本文法を学問のレヴェルに置いた最初の書として現在でも高く評価されている。

《松下文法》
 松下文法では、意義論的な立場から語の分析を行う。「断句(いわゆる文に当たる)」「詞(それだけの力で観念を表すことができるもの)」「原辞(詞を構成する材料となるもの。助詞・助動詞などはこれに入るが、詞であって同時に原辞となるものもある)」と、言語の単位を三段階に分けるが、そのうち、「詞」については、「山が」「川に」などもこれに属させたり、助詞・助動詞の類を単独では一観念を表すことができないとして「原辞」として扱ったりするなど、橋本文法にあいて、「文節」という単位を考えたり、この「文節」の構成能力から「辞(いわゆる付属語)」を分類したりする点などと、共通する面も見られる。しかし、このように「文節」にあたるものを「詞」に分類すると同時に、「山」「川」なども「詞」として同様に考え、また、この「詞」を品詞論の次元にそのまま使用したことは、この文法を分かりにくいものにしてしまったように思われる。「詞」の分類に当たっては、名詞・動詞・副体詞・副詞・感動詞・複性詞という六類を立てている。このうち、動詞に「動作動詞(いわゆる動詞)」「形容動詞(いわゆる形容詞)」の区別を考えているが、これは、時間性の有無を考えて判断しようとしたものである。また、複性詞については、西欧語・漢語に存在するものであって、日本語にはないとしている。松下文法の中に、西欧語との対照ということがしばしば見られるが、これはその一つの現れであると同時に、松下文法が、いわゆる一般文法を志向すると考えられる所以の一つでもある。なお、松下大三郎が体系的に日本文法を説いた書としては、『日本俗語文典』(明34)、『標準日本文法』(大13)、『改撰標準日本文法』(昭3)、『標準日本口語法』(昭5)などがあり、その間に、学説の変化が、かなり認められる。ここでは、『改撰標準日本文法』を中心に述べた。

《大槻文法》
 大槻文法は、近代日本文法の祖と言われる。それ以前の、国学の伝統に立つ文法と、西欧言語学を日本語に適用した文法という、二つの文法の流れを統合し、近代的な文法としての体系を創始したものである。別の面から言えば、「和洋折衷の文法」ということにもなる。ただし、例えば、形容詞について、日本語の場合は、語尾の変化・法があって動詞に近い点があるとして、西欧語とは異なることを指摘するなど、従来の二つの流れを単に折衷したものでないことも、忘れてはならない。大槻文法では、「名詞」「動詞」「形容詞」「助動詞」「副詞」「接続詞」「弖爾乎波(てにをは)」「感動詞」の八品詞に分けるが、この品詞のとらえ方が、西欧言語学をただ機械的に適用するのでなく、日本語にふさわしい形でなされている点は、高く評価されてよい。

【参考文献】
橋本進吉国語学概論』昭21、岩波書店。 同『国語法研究』昭23、岩波書店。 同『国文法体系論』昭34、岩波書店。 時枝誠記国語学原論』昭16、岩波書店。 同『日本文法口語篇・文語篇』昭25・29、岩波書店。 山田孝雄『日本文法論』明41、宝文館。 同『日本文法学概論』昭11、宝文館。 松下大三郎『改撰標準日本文法』昭3、紀元社。 大槻文彦『広日本文典・同別記』明30、大槻家蔵版。 『日本文法講座2文法論と文法教育』昭32、明治書院。 『解釈と鑑賞』特集「文法学説の整理━━その長所と短所━━」昭40・10、至文堂。 古田東朔「文法研究の歴史(2)」(『岩波講座日本語6』昭51、岩波書店)。

(山口明穂)



また、「国語学辞典」(国語学会編、1955年、東京堂)には「連文節」について、このような図が載っています。

f:id:nobinyanmikeko:20210328160531j:plain


こうして見ると、連文節は時枝誠記の入子型構造に似ているようにも見えますが、文の構造についての基本的な考え方が橋本文法と時枝文法では異なっていると思います。

打消の助動詞「ず」の本活用の未然形「ず」「な」を認めるか否か

♦打消の助動詞「ず」の本活用の未然形「ず」「な」を認めるか否かを古語辞典で検証する


🟩「ず」

🔵未然形は「○」とする
★時代別国語大辞典上代編(上代語辞典編修委員会、1967年、三省堂
★旺文社古語辞典/改訂新版(守随憲治・今泉忠義松村明、1969年11月、旺文社)
※新訂版(1975年)・新版(1981年)・改訂新版(松村明・山口明穂・和田利政、1988年)・第八版(1994年)・第九版(2001年)・第十版(2008年)・第十版増補版(2015年)も同じ。
講談社古語辞典(佐伯梅友・馬淵和夫、1969年12月、講談社
講談社学術文庫古語辞典(1979年)も同じ。
三省堂古語辞典/初版(小松英雄、1971年、三省堂
※修訂版(1974年)も同じ。
★詳解古語辞典(佐藤定義、1972年、明治書院
※新訂詳解古語辞典(1982年)・最新詳解古語辞典(1991年)も同じ。
★岩波古語辞典/初版(大野晋佐竹昭広・前田金五郎、1974年、岩波書店
※補訂版(1990年)も同じ。
★旺文社学習古語辞典/改訂版(鈴木一雄、1977年、旺文社)
★例解古語辞典/初版(佐伯梅友・森野宗明・小松英雄、1980年、三省堂
※第二版(1985年)・第三版(1992年)も同じ。
★旺文社高校基礎古語辞典/初版(古田東朔、1982年、旺文社)
※第二版(1997年)も同じ。
★全訳古語例解辞典/初版(北原保雄、1987年1月、小学館
※第二版(1993年)・第三版(1998年)・全文全訳古語辞典(2004年)も同じ。
★角川古語大辞典・三(中村幸彦・岡見正雄・阪倉篤義、1987年9月、角川書店
三省堂セレクト古語辞典(桑原博史、1987年12月、三省堂
★旺文社全訳古語辞典/初版(桜井満・宮腰賢、1990年、旺文社)
※第二版(1997年)・第三版(宮腰賢・桜井満・石井正己・小田勝、2003年)・第四版(宮腰賢・石井正己・小田勝、2011年)・第五版(2018年)も同じ。
三省堂全訳基本古語辞典/初版(鈴木一雄・桑原博史・山口佳也・鈴木康史、1995年1月1日、三省堂
※第二版(2000年)・第三版(2003年)・第三版増補新装版(2007年)も同じ。
★新明解古語辞典/第三版(金田一春彦、1995年1月20日三省堂
三省堂全訳読解古語辞典/初版(鈴木一雄・伊藤博・外山映次・小池清治、1995年11月20日三省堂
※第二版(2001年)・第三版(2007年)・第四版(2013年)・第五版(2017年)も同じ。
講談社キャンパス古語辞典(馬淵和夫、1995年11月30日、講談社
★古語林(林巨樹・安藤千鶴子、1997年、大修館書店)
※大修館全訳古語辞典(2001年)・新全訳古語辞典(2017年)も同じ。
三省堂詳説古語辞典(秋山虔渡辺実、2000年、三省堂
★角川全訳古語辞典(久保田淳・室伏信助、2002年、角川書店
★旺文社全訳学習古語辞典(宮腰賢・石井正己・小田勝、2006年、旺文社)
★古典基礎語辞典(大野晋他、2011年、角川学芸出版

🔵未然形は「(ず)」とする
★角川古語辞典/初版(武田祐吉久松潜一、1958年、角川書店
※改訂版(1963年)も同じ。
★基本古語辞典/初版(小西甚一、1966年、大修館書店)
※改訂版(1969年)・三訂版(1976年)も同じ。
★旺文社標準古語辞典(鈴木一雄、1973年、旺文社)
★全訳用例古語辞典/初版(菅野雅雄・中村幸弘、1996年、学習研究社
※第二版(2002年)も同じ。
★完訳用例古語辞典(小久保崇明、1999年、学習研究社
★学研全訳古語辞典/初版(小久保崇明、2003年、学習研究社
※第二版(2014年)も同じ。
★全訳全解古語辞典(山口尭二・鈴木日出男、2004年、文英堂)
★最新全訳古語辞典(三角洋一・小町谷照彦、2006年、東京書籍)
★学研学習用例古語辞典/改訂第三版(菅野雅雄・中村幸弘、2015年、学研教育出版

🔵未然形は「ず」とする
★例文通釋古語辞典(江波煕、1952年、蒼明社)
★明解古語辞典/初版(金田一春彦、1953年、三省堂
※改訂版(1958年)・新版(1962年)・修訂版(1967年)・新明解初版(1972年)・新明解第二版(1977年)も同じ。
★旺文社古語辞典/初版(鳥居正博、1960年、旺文社)
※増補版(1962年)・中型新版(1965年)も同じ。
★新選古語辞典/初版(中田祝夫、1963年、小学館
※改訂新版(1966年)・新版(1974年)も同じ。
★六万語古語辞典(金子武雄・三谷栄一、1964年、金園社)
※精解古語辞典(1970年)も同じ。
★学研古語辞典(吉沢典男、1968年、学習研究社
※学研要約古語辞典(1987年)も同じ。
★旺文社学習古語辞典/初版(鈴木一雄、1969年、旺文社)
★角川新版古語辞典(久松潜一・佐藤謙三、1973年、角川書店
★角川最新古語小辞典/初版(佐藤謙三・山田俊雄、1975年、角川書店
※角川最新古語辞典/増補版(1980年)も同じ。
★古語大辞典(中田祝夫・和田利政・北原保雄、1983年、小学館
★学研新古語辞典(市古貞次、1986年、学習研究社
★福武古語辞典(井上宗雄・中村幸弘、1988年9月、福武書店
※ベネッセ古語辞典(1997年)も同じ。
★角川必携古語辞典(山田俊雄・吉川泰雄、1988年11月、角川書店
※角川必携古語辞典全訳版(山田俊雄・吉川泰雄・室伏信助、1997年)も同じ。
★福武コンパクト古語辞典(中村幸弘、1990年、福武書店
★要語全訳必修古語辞典(平田喜信、1992年、学習研究社
★ベネッセ全訳古語辞典/初版(中村幸弘、1996年、ベネッセコーポレーション
※改訂版(2007年)も同じ。
★ベネッセ全訳コンパクト古語辞典(中村幸弘、1999年、ベネッセコーポレーション


🟩「な」

🔵未然形は「○」とする
★例文通釋古語辞典(江波煕、1952年、蒼明社)
★明解古語辞典/初版(金田一春彦、1953年、三省堂
※改訂版(1958年)も同じ。
★旺文社古語辞典/初版(鳥居正博、1960年、旺文社)
※増補版(1962年)・中型新版(1965年)・改訂新版(松村明・山口明穂・和田利政、1988年)・第八版(1994年)・第九版(2001年)・第十版(2008年)・第十版増補版(2015年)も同じ。
★六万語古語辞典(金子武雄・三谷栄一、1964年、金園社)
※精解古語辞典(1970年)も同じ。
★岩波古語辞典/初版(大野晋佐竹昭広・前田金五郎、1974年、岩波書店
※補訂版(1990年)も同じ。
★学研新古語辞典(市古貞次、1986年、学習研究社
★旺文社全訳古語辞典/初版(桜井満・宮腰賢、1990年、旺文社)
※第二版(1997年)・第三版(宮腰賢・桜井満・石井正己・小田勝、2003年)・第四版(宮腰賢・石井正己・小田勝、2011年)・第五版(2018年)も同じ。
★古語林(林巨樹・安藤千鶴子、1997年、大修館書店)
※大修館全訳古語辞典(2001年)・新全訳古語辞典(2017年)も同じ。
三省堂詳説古語辞典(秋山虔渡辺実、2000年、三省堂
★角川全訳古語辞典(久保田淳・室伏信助、2002年、角川書店

🔵未然形は「(な)」とする
★角川古語辞典(武田祐吉久松潜一、1958年、角川書店
※改訂版(1963年)も同じ。
★明解古語辞典/新版(金田一春彦、1962年、三省堂
※修訂版(1967年)・新明解初版(1972年)・新明解第二版(1977年)も同じ。
★新選古語辞典/初版(中田祝夫、1963年、小学館
※改訂新版(1966年)・新版(1974年)も同じ。
★基本古語辞典/初版(小西甚一、1966年、大修館書店)
※改訂版(1969年)・三訂版(1976年)も同じ。
★学研古語辞典(吉沢典男、1968年、学習研究社
※学研要約古語辞典(1987年)も同じ。
★旺文社学習古語辞典/初版(鈴木一雄、1969年3月、旺文社)
※改訂版(1977年)も同じ。
★旺文社古語辞典/改訂新版(守随憲治・今泉忠義松村明、1969年11月、旺文社)
※「新訂版」(1975年)・「新版」(1981年)も同じ。
★詳解古語辞典(佐藤定義、1972年、明治書院
★角川新版古語辞典(久松潜一・佐藤謙三、1973年1月10日、角川書店
★旺文社標準古語辞典(鈴木一雄、1973年1月10日、旺文社)
★角川最新古語小辞典(佐藤謙三・山田俊雄、1975年、角川書店
※角川最新古語辞典/増補版(1980年)も同じ。
★旺文社高校基礎古語辞典/初版(古田東朔、1982年、旺文社)
※第二版(1997年)も同じ。
★全訳古語例解辞典/初版(北原保雄、1987年1月、小学館
※第二版(1993年)・第三版(1998年)・全文全訳古語辞典(2004年)も同じ。
三省堂セレクト古語辞典(桑原博史、1987年12月、三省堂
★福武古語辞典(井上宗雄・中村幸弘、1988年9月、福武書店
※ベネッセ古語辞典(1997年)も同じ。
★角川必携古語辞典(山田俊雄・吉川泰雄、1988年11月、角川書店
※角川必携古語辞典全訳版(山田俊雄・吉川泰雄・室伏信助、1997年)も同じ。
★福武コンパクト古語辞典(中村幸弘、1990年、福武書店
★要語全訳必修古語辞典(平田喜信、1992年、学習研究社
三省堂全訳基本古語辞典/初版(鈴木一雄・桑原博史・山口佳也・鈴木康史、1995年1月、三省堂
※第二版(1995年)・第三版(2003年)・第三版増補新装版(2007年)も同じ。
三省堂全訳読解古語辞典/初版(鈴木一雄・伊藤博・外山映次・小池清治、1995年11月、三省堂
★ベネッセ全訳古語辞典/初版(中村幸弘、1996年11月、ベネッセコーポレーション
※改訂版(2007年)も同じ。
★全訳用例古語辞典/初版(菅野雅雄・中村幸弘、1996年12月、学習研究社
※第二版(2002年)も同じ。
★完訳用例古語辞典(小久保崇明、1999年4月、学習研究社
★ベネッセ全訳コンパクト古語辞典(中村幸弘、1999年11月、ベネッセコーポレーション
★学研全訳古語辞典/初版(小久保崇明、2003年、学習研究社
※第二版(2014年)も同じ。
★全訳全解古語辞典(山口尭二・鈴木日出男、2004年、文英堂)
★最新全訳古語辞典(三角洋一・小町谷照彦、2006年、東京書籍)
★古典基礎語辞典(大野晋他、2011年、角川学芸出版
★学研学習用例古語辞典/改訂第三版(菅野雅雄・中村幸弘、2015年、学研教育出版

🔵未然形は「な」とする
★時代別国語大辞典上代編(上代語辞典編修委員会、1967年、三省堂
講談社古語辞典(佐伯梅友・馬淵和夫、1969年、講談社
講談社学術文庫古語辞典(1979年)も同じ。
三省堂古語辞典/初版(小松英雄、1971年、三省堂
※修訂版(1974年)も同じ。
★例解古語辞典/初版(佐伯梅友・森野宗明・小松英雄、1980年、三省堂
※第二版(1985年)・第三版(1992年)も同じ。
★新訂詳解古語辞典(佐藤定義、1982年、明治書院
※最新詳解古語辞典(1991年)も同じ。
★古語大辞典(中田祝夫・和田利政・北原保雄、1983年、小学館
★角川古語大辞典・三(中村幸彦・岡見正雄・阪倉篤義、1987年、角川書店
★新明解古語辞典/第三版(金田一春彦、1995年1月、三省堂
講談社キャンパス古語辞典(馬淵和夫、1995年11月、講談社
三省堂全訳読解古語辞典/第二版(鈴木一雄・伊藤博・外山映次・小池清治、2001年、三省堂
※第三版(2007年)・第四版(2013年)・第五版(2017年)も同じ。

文語文法の形容詞本活用未然形を古語辞典・古典文法書ではどう表示しているか

♦文語文法の形容詞本活用未然形を古語辞典・古典文法書ではどう表示しているか
上代限定の未然形「け」は除く)


🟩古語辞典

🔵「○」とする
★基本古語辞典/初版(小西甚一、1966年、大修館書店)
※改訂版(1969年)・(1974年)も同じ。
★時代別国語大辞典上代編(上代語辞典編修委員会、1967年、三省堂
★旺文社学習古語辞典/初版(鈴木一雄、1969年、旺文社)
※改訂版(1977年)も同じ。
★旺文社古語辞典/改訂新版(守随憲治・今泉忠義松村明、1969年、旺文社)
※新訂版(1975年)・新版(1981年)・改訂新版(松村明・山口明穂・和田利政、1988年)・第八版(1994年)・第九版(2001年)・第十版(2008年)・第十版増補版(2015年)も同じ。
講談社古語辞典(佐伯梅友・馬淵和夫、1969年、講談社
講談社学術文庫古語辞典(1979年)も同じ。
三省堂古語辞典/初版(小松英雄、1971年、三省堂
※修訂版(1978年)も同じ。
★詳解古語辞典(佐藤定義、1972年、明治書院
※「新訂詳解」(1982年)・「最新詳解」(1991年)も同じ。
★旺文社標準古語辞典(鈴木一雄、1973年、旺文社)
★岩波古語辞典/初版(大野晋佐竹昭広・前田金五郎、1974年、岩波書店
※補訂版(1990年)も同じ。
★例解古語辞典/初版(佐伯梅友・森野宗明・小松英雄、1980年、三省堂
※第二版(1985年)・第三版(1992年)も同じ。
★旺文社高校基礎古語辞典/初版(古田東朔、1982年、旺文社)
※第二版(1997年)も同じ。
★古語大辞典(中田祝夫・和田利政・北原保雄、1983年、小学館
★学研新古語辞典(市古貞次、1986年、学習研究社
★全訳古語例解辞典/初版(北原保雄、1987年、小学館
※第二版(1993年)・第三版(1998年)も同じ。
★学研要約古語辞典(吉沢典男、1987年、学習研究社
三省堂セレクト古語辞典(桑原博史、1987年、三省堂
★旺文社全訳古語辞典/初版(桜井満・宮腰賢、1990年、旺文社)
※第二版(1997年)・第三版(宮腰賢・桜井満・石井正己・小田勝、2003年)・第四版(宮腰賢・石井正己・小田勝、2011年)・第五版(2018年)も同じ。
★要語全訳必修古語辞典(平田喜信、1992年、学習研究社
三省堂全訳基本古語辞典/初版(鈴木一雄・桑原博史・山口佳也・鈴木康史、1995年、三省堂
※第二版(2000年)・第三版(2003年)・第三版増補新装版(2007年)も同じ。
三省堂全訳読解古語辞典/初版(鈴木一雄・伊藤博・外山映次・小池清治、1995年、三省堂
※第二版(2001年)・第三版(2007年)・第四版(2013年)・第五版(2017年)も同じ。
講談社キャンパス古語辞典(馬淵和夫、1995年、講談社
★古語林(林巨樹・安藤千鶴子、1997年、大修館書店)
★大修館全訳古語辞典(林巨樹・安藤千鶴子、2001年、大修館書店)
★角川全訳古語辞典(久保田淳・室伏信助、2002年、角川書店
小学館全文全訳古語辞典(北原保雄、2004年、小学館
★旺文社全訳学習古語辞典(宮腰賢・石井正己・小田勝、2006年、旺文社)
★古典基礎語辞典(大野晋他、2011年、角川学芸出版
★新全訳古語辞典(林巨樹・安藤千鶴子、2017年、大修館書店)

🔵「(く)」とする
★角川古語辞典/初版(武田祐吉久松潜一、1958年、角川書店
※改訂版(1963年)も同じ。
★旺文社古語辞典/初版(鳥居正博、1960年、旺文社)
※増補版(1962年)・中型新版(1965年)も同じ。
★全訳用例古語辞典/初版(菅野雅雄・中村幸弘、1996年、学習研究社
※第二版(2002年)も同じ。
★完訳用例古語辞典(小久保崇明、1999年、学習研究社
★学研全訳古語辞典/初版(小久保崇明、2003年、学習研究社
※改訂第二版(2014年)も同じ。
★全訳全解古語辞典(山口尭二・鈴木日出男、2004年、文英堂)
★最新全訳古語辞典(三角洋一・小町谷照彦、2006年、東京書籍)
★学研学習用例古語辞典/改訂第三版(菅野雅雄・中村幸弘、2015年、学研教育出版

🔵「く」とする
★例文通釋古語辭典(江波煕、1952年、蒼明社)
★明解古語辞典/初版(金田一春彦、1953年、三省堂
※改訂版(1958年)・新版(1962年)・修訂版(1967年)
★新選古語辞典/初版(中田祝夫、1963年、小学館
※改訂新版(1966年)・新版(1974年)も同じ。
★六万語古語辞典(金子武雄・三谷栄一、1964年、金園社)
※精解古語辞典(金子武雄・三谷栄一、1970年、金園社)も同じ。
★新明解古語辞典/初版(金田一春彦、1972年、三省堂
※第二版(1977年)・第三版(1995年)も同じ。
★角川新版古語辞典(久松潜一・佐藤謙三、1973年、角川書店
★角川最新古語小辞典(佐藤謙三・山田俊雄、1975年、角川書店
★角川最新古語辞典/増補版(佐藤謙三・山田俊雄、1980年、角川書店
★福武古語辞典(井上宗雄・中村幸弘、1988年、福武書店
※「ベネッセ古語辞典」(1997年)も同じ。
★角川必携古典辞典(山田俊雄・吉川泰雄、1988年、角川書店
★福武コンパクト古語辞典(中村幸弘、1990年、福武書店
★ベネッセ全訳古語辞典/初版(中村幸弘、1996年、ベネッセコーポレーション
※「改訂版」(2007年)も同じ。
★角川必携古典辞典全訳版(山田俊雄・吉川泰雄・室伏信助、1997年、角川書店
★ベネッセ全訳コンパクト古語辞典(中村幸弘、1999年、ベネッセコーポレーション


🟩古典文法書

🔵「○」とする
★品詞別日本文法講座4形容詞・形容動詞(春日和男、1973年、明治書院
★解釈・読解のための新明解古典文法/改訂新版(江口正弘、1988年、尚文出版)
★古典にいざなう新古典文法(北原保雄、1992年、大修館書店)
★古典文法/改訂版(稲沢好章・浅田孝紀・窪谷徹・皆河洋、1999年、明治書院
★望月光の超基礎がため古文教室古典文法編(望月光、2007年、旺文社)

🔵「(く)」とする
★読解をたいせつにする体系古典文法/三訂版(黒川行信、1996年、数研出版
※「七訂版」(2008年)・「八訂版」(2013年)も同じ。
★よくわかる新選古典文法/改訂版(安達雅夫・池田匠・芝崎正昭・福島公彦、1997年、東京書籍)
★完全傍訳やさしく詳しい古典文法(水野左千夫、2000年、尚文出版)
★シグマベスト標準新古典文法(山口尭二、2000年、文英堂)
★富井の古典文法をはじめからていねいに(富井健二、2002年、ナガセ)
★解釈のための必携古典文法/改訂版(萩原昌好、2003年、中央図書)
※「三訂版」も同じ。
★基礎から学ぶ解析古典文法/改訂新版(桐原書店編集部、2006年、桐原書店
★シグマベスト読解のための必修古典文法(宇都宮啓吾・横田隆志・西川兼司、2009年、文英堂)
★新修古典文法/二訂版(荻野文子、2010年、京都書房)
★基礎から解釈へ新しい古典文法/四訂新版(有座俊史・豊島秀範・宮下拓三・山田繁雄、2010年、ピアソン桐原)

🔵「く」とする
★高等学校新選古典文法/改訂版(中田祝夫・増淵恒吉、1971年、尚学図書
★古典文法/新修版(松村明、1976年、明治書院
★簡明文語文法/新訂版(成田杢之助、1976年、京都書房)
★要解古典文法(三谷栄一・稲村徳、1987年、有精堂)
★新訂版対訳古典文法(清水文雄・松村明・真下三郎、1990年、第一学習社
★古文読解のための標準古典文法〈三版三訂〉(市川孝・山内洋一郎、1995年、第一学習社
★古文解釈のための総合力を養う完全マスター古典文法/新版二訂(金子彰・野村貴郎・山口豊、2012年、第一学習社

伊勢物語第6段の翻字

伊勢物語第6段の翻字】



宮内庁書陵部蔵冷泉為和筆本([鈴木知太郎著「校註伊勢物語」、1961年、笠間書院]による)……天福本系

むかしおとこありけり女のえうま
しかりけるをとしをへてよはひわ
たりけるをからうしてぬすみいてゝ
いとくらきにきけりあくたかはと
いふ河をゐていきけれは草
のうへにをきたりけるつゆを
かれはなにそとなんおとこ
にとひけるゆくさきおほく
夜もふけにけれはおにある
所ともしらて神さへいといみし
うなりあめもいたうふりけれ
はあはらなるくらに女をは
おくにをしいれておとこゆみ
やなくひをおひてとくちに
をりはや夜もあけなんと思つゝ
ゐたりけるにおにはやひとくちに
くひてけりあなやといひけれと
神なるさはきにえきかさりけり
やう/\夜もあけゆくに見れは
ゐてこし女もなしあしすり
をしてなけともかひなし
 しらたまかなにそと人のとひし時
 つゆとこたへてきえなましものを
これは二条のきさきのいとこの女御
の御もとにつかうまつるやうにてゐた
まへりけるをかたちのいとめてたく
おはしけれはぬすみておひて
いてたりけるを御せうとほりかは
のおとゝたらうくにつねの大納言
また下らうにて内へまいりたまふに
いみしうなく人あるをきゝつけて
とゝめてとりかへしたまうてけり
それをかくおにとはいふなり
けりまたいとわかうてきさき
のたゝにおはしける時とや



静嘉堂文庫蔵松井簡治旧蔵本([山田清市編著「伊勢物語影印付」1967年、白帝社]より)……武田本系

昔おとこありけり女のえうましかりけるを
としをへてよはひわたりけるをからうして
ぬすみいてゝいとくらきにきけりあくた河と
いふかはを
ゐていきけれはくさのうへにをきたりけるつゆ
をかれはなにそとなむおとこにとひける
いくさきおほく夜もふけにけれはおにある
所ともしらて神さへいといみしうなりあめも
いたうふりけれはあはらなるくらに女をは
おくにをしいれておとこゆみやなくひをおひ
てとくちにをりはや夜もあけなむと思つゝ
ゐたりけるにおにはやひとくちにくひてけり
あなやといひけれと神なるさはきにえきか
さりけりやう/\夜もあけゆくに見れはゐて
こし女もなしあしすりをしてなけともかひなし
 しらたまかなにそと人のとひし時
 つゆとこたへてきえなましものを
これは二条のきさきのいとこの女御の御もとに
つかうまつるやうにてゐたまへりけるをかたち
のいとめてたくおはしけれはぬすみておひて
いてたりけるを御せうとほりかはのおとゝたらう
くにつねの大納言また下らうにて内へまいり
たまふにいみしうなく人あるをきゝつけて
とゝめてとりかへしたまうてけりそれをかく
おにとはいふなりけりまたいとわかうてきさき
のたゝにおはしける時とや


天理図書館蔵千葉胤明旧蔵本([天理図書館善本叢書和書之部編集委員会編「天理図書館善本叢書和書之部第三巻・伊勢物語諸本集一」1973年、八木書店]より)……根源本系
※◆は見せけち

むかしおとこありけり女のえうましかりけるを
としへてよはひわたりけるをからうしてぬすみ
いてゝいとくらきにきけりあくたかはといふかはを
ゐていきけれはくさのうへにをきたりけるつゆ
をかれはなにそとなむおとこにとひけるゆく
さきと◆ほくよもふけにけれはおにある所と
もしらてかみさへいみしうなりあめもいたうふ
りけれはあはらなるくらに女をはおくにをし
いれておとこゆみやなくひをゝひてとくちにをり
はやよもあけなむとおもひつゝゐたりけるに
おにはやひとくちにくひてけりあなやといひけれと
かみなるさはきにえきかさりけりやう/\よも
あけゆくにみれはゐてこし女もなしあしすりを
してなけともかひなし
 しらたまかなにそと人のとひしとき
 つゆとこたへてけなましものを
これは二條のきさきのいとこの女御の御もとに
つかうまつるやうにてゐたまへりけるをかたちの
いとめてたくおはしけれはぬすみておひていて
たりけるを御せうとほりかはのおとゝたらう
くにつねの大納言また下らうにてうちへまいり
たまふにいみしうなく人あるをきゝつけてとゝ
めてとりかへしたまうてけりそれをかくおに
とはいふなりけりまたわかうてきさきのたゝに
おはしけるときとかや


天理図書館蔵伝藤原為家筆本([天理図書館善本叢書和書之部編集委員会編「天理図書館善本叢書和書之部第三巻・伊勢物語諸本集一」1973年、八木書店]より)……根源本系

むかしおとこありけり女のえうましかりけるを
としをへてよはひわたりけるをからうしてぬすみ
いてゝいとくらきにきけりあくたかはといふかはを
ゐていきけれはくさのうゑにおきたりける露
をかれはなにそとなんおとこにとひけるゆくさ
きおほくよもふけにけれはおにあるところと
もしらて神さへいといみしうなり雨もいたう
ふりけれはあらはなるくらに女をはおくにをし
ゐいれておとこゆみやなくひをゝいてとくち
にをりはやよもあけなんと思ひつゝゐたりける
にをにはやひとくちにくひてけりあなやと
いひけれと神なるさはきにえきかすさりけり
やう/\よもあけ行にみれはゐてこし女もな
しあしすりをしてなけともかひなし
 しらたまかなにそと人のとひしとき露と
 こたへてけなまし物を
これは二条の后のいとこの女御の御もとにつかう
まつるやうにてゐたまへりけるをかたちのいとめ
てたくおはしけれはぬすみてをいていてたり
けるを御せうとほりかはのをとゝたらうくにつ
ねの大納言またけらうにてうちへまいり給にいみし
うなく人ありきゝつけてとゝめてとりかへしたまふ
てけりそれをかくをにとはいふなりけりまたいと
わかくて后のたゝにをはしける時とや


佐賀県立図書館蔵坊所鍋島家本(勉誠出版刊の影印本による)

昔男有けり女のえうましかりけるを
としをへてよはひわたりけるをからうし
てぬすみ出ていとくらきに来けりあくた
河といふ河をおゐていきけれは草の
うへにをきたりける露をかれはなにそと
なむ男に問ける行さきおほくよもふけに
けれは鬼ある所ともしらて神さへいといみし
うなり雨もいたうふりけれはあはらなる
くらに女をはおくにをし入ておとこ弓
やなくひをおひて戸口にをりはや夜も
あけなむと思つゝゐたりけるに鬼はや
一くちにくひてけりあなやといひけれと
神なるさはきにえきかさりけりやう/\
よもあけ行に見れはゐてこし女もなし
足すりをしてなけともかひなし
 しら玉かなにそと人のとひし時露とこたへてきえなまし物を
是は二條の后のいとこの女御の御もとに
つかうまつるやうにてゐ給へりけるをかたちの
いとめてたくをはしけれはぬすみておひて
出たりけるを御せうと堀河のおとゝ太良國経
の大納言また下らうにてうちへまいり給ふに
いみしうなく人あるを聞つけてとゝめてとり
かへしゐてけりそれをかく鬼とはいふ也またいと
わかうて后のたゝにをはしける時とかや


酒田市本間美術館蔵伝民部卿局筆本(ほるぷ出版刊の複製本による)

昔男有けりをんなのゑあふましかりけるを
としをへていひわたりけるにからうしてをん
なのこゝろあはせてぬすみていてにけりあく
たかはといふ河をゐていきけれは草のう
ゑにをきたる露をかれはなにそと
なむ男にとひけるゆくさきはいとゝほく
よもふけけれは鬼あるところともしらて
雨いたうふりかみさゑいといみしうなり
けれはあはらなるくらのありけるに女
をはをくにをしいれてをとこはゆみや
なくひをおひてとくちにはやよもあけ
なむとおもひつゝいたりけるほとに鬼はや
をんなをはひとくちにくひてけりあらやと
いひけれとかみのなるさはきにゑきかさりけ
りやう/\夜のあけゆくをみれはいてこし
女なしあしすりしてなけとかひなし
  白玉かなにそと人のとひし時
  露とこたゑてけなましものを
これは二条のきさきの御いとこの女御の
もとにつかうまつりひとのやうにていたまへ
りけるをかたちのいとめてたうおはしけ
れはぬすみていてたりけるを御せうとの
ほりかはの大将もとつねの国経大納言なと
のいまた下らうにてうちへまいりたまふ
にいみしうなく人のあるをきゝつけてとり
かゑしたまひてけりそれをかくをにとは
いゑるなりいまたいとわかうてたゝにきさひ
のおはしけるときとや


国立歴史民俗博物館二条為氏筆本〈通称大島本〉(岩波書店刊の複製本による)

むかしおとこありけり女の
あふましかりけるをとしを
へてよはひわたりけるをから
うして女こゝろをあはせて
ぬすみいてゝいとくらきにきに
けりあくたかはといふかはを
いていきけれはくさのうへにを
きたりけるつゆをかれはなに
そとゝひけれはをとこをに
あるところともしらて神さへ
いといみしうなりあめもいた
うふりけれはあはらなる
くらに女をはをくにをし
いれておとこはゆみやなくひ
をゝいてとくちにをりはや
よもあけなんと思ひつゝゐ
たりけるにをにはやひとく
ちにくひてけりあなやと
いひけれと神のなるさはき
にえきかさりけりやう/\夜
のあけゆくにみれはゐてこ
し女もなしあしすりをし
てもかひなし
  しらたまかなにそと人のとひし
  ときつゆとこたえてけなまし物を
これは二条のきさいのいとこの
女御の御もとにつかうまつり
人のやうにてゐ給へりけるを
かたちいとめてたくをはし
けるをぬすみてをうていて
たりけるを御せうとほりかは
の大将太郎もとつねのをとゝ
くにつねの大納言またけらう
にてうちへまいり給にいみし
うなく人のあるをきゝつけ
とゝめてとりかへし給ひてけ
りそれをかくをにとはいへる
 (或これよりしもなし)
なりまたいとわかうてたゝにて
きさいのをはしけるときの事
とそいとこの女御はそめとのゝ
きさきなり


東京国立博物館蔵異本伊勢物語絵巻(片桐洋一著「伊勢物語の研究・資料篇」より)

昔男ありけりえうまじかりける女を年経て
夜這わたりけりからうして心をあはせてくら
きにぬすみて章河といふ所を負て行けれは
草の上にをきたる露を見て彼はなにそと
男にとひけり行さきもいとゝをく夜もふか
かりけれは鬼栖所ともしらすしてあめもいた
くふり神もおとろ/\しうなりけれはあはらな
る倉のあるに女をは奥にをし入て男はゆみ
やなくひをゝひてとくちにゐたり早夜あけ
なんといひゐたる程に此女をは鬼はやたゝ
一くちにくひてうせにけりあなや/\といひ
けれと神のなるさはきに此男えきかすなりに
けりやう/\夜のあけゆくに見れはゐて来つる
女もなしあしすりをしてなきまとへともかひ
なけれはかくよむ
 しらたまかなにそと人のとひし時
 露とこたへてけなまし物を

母の命日

今日、2月26日は母の命日。
2004年に逝ったので今年で17年になる。

福島県双葉町の出身だけれど、震災は知らずに逝った。晩年は認知症が酷かったから、生きていたとしても震災とは判らなかっただろうな。