つらつら思うこと

特にテーマは決めずに書きます

形容詞本活用の未然形について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
🔴形容詞本活用の未然形について
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
🔷古語辞典の場合
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
🔺【未然形「くorしく」を認めないもの……(28)】
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ▲「基本古語辞典・初版」(小西甚一、1966年、大修館書店)※「改訂版」(1969年)「三訂版」(1974年)も同じ
 ▲「時代別国語大辞典上代編」(上代語辞典編修委員会、1967年、三省堂
 ▲「旺文社古語辞典・改訂新版」(守随憲治・今泉忠義松村明、1969年、旺文社)※「新訂版」(1975年)「新版」(1981年)「改訂新版」(1988年)「第八版」(1994年」「第九版」(2001年)「第十版」(2008年)「第十版増補版」(2015年)も同じ
 ▲「旺文社学習古語辞典・初版」(鈴木一雄、1969年、旺文社)※「改訂版」(1977年)も同じ
 ▲「講談社古語辞典」(佐伯梅友・馬淵和夫、1969年、講談社)※「講談社学術文庫古語辞典」(1979年)も同じ
 ▲「三省堂古語辞典・初版」(小松英雄、1971年、三省堂)※「修訂版」(1978年)も同じ
 ▲「詳解古語辞典」(佐藤定義、1972年、明治書院)※「新訂詳解」(1982年)「最新詳解」(1991年)も同じ
 ▲「旺文社標準古語辞典」(鈴木一雄、1973年、旺文社)
 ▲「例解古語辞典・初版」(佐伯梅友・森野宗明・小松英雄、1980年、三省堂)※「第二版」(1985年)「第三版」(1992年)も同じ
 ▲「旺文社高校基礎古語辞典・初版」(古田東朔、1982年、旺文社)※「第二版」(1997)も同じ
 ▲「古語大辞典」(中田祝夫・和田利政・北原保雄、1983年、小学館
 ▲「学研新古語辞典」(市古貞次、1986年、学習研究社
 ▲「学研要約古語辞典」(吉沢典男、1987年、学習研究社
 ▲「三省堂セレクト古語辞典」(桑原博史、1987年、三省堂
 ▲「全訳古語例解辞典・初版」(北原保雄、1987年、小学館)※「第二版」(1993年)「第三版」(1998年)も同じ
 ▲「旺文社全訳古語辞典・初版」(桜井満・宮腰賢、1990年、旺文社)※「第二版」(1997年)「第三版」(2003年)「第四版」(2011年)も同じ
 ▲「要語全訳必修古語辞典」(平田喜信、1992年、学習研究社
 ▲「講談社キャンパス古語辞典」(馬淵和夫、1995年、講談社
 ▲「三省堂全訳基本古語辞典・初版」(鈴木一雄、1995年、三省堂)※「第三版増補新装版」(2007年)も同じ
 ▲「三省堂全訳読解古語辞典・初版」(鈴木一雄・伊藤博・外山映次・小池清治、1995年、三省堂)※「第二版」(2001年)「第三版」(2007年)「第四版」(2013年)も同じ
 ▲「古語林」(林巨樹・安藤千鶴子、1997年、大修館書店)
 ▲「三省堂詳説古語辞典」(秋山虔渡辺実、2000年、三省堂
 ▲「大修館全訳古語辞典」(林巨樹・安藤千鶴子、2001年、大修館書店)
 ▲「角川全訳古語辞典」(久保田淳・室伏信助、2002年、角川書店
 ▲「小学館全文全訳古語辞典」(北原保雄、2004年、小学館
 ▲「旺文社全訳学習古語辞典」(宮腰賢・石井正己・小田勝、2006年、旺文社)
 ▲「古典基礎語辞典」(大野晋、2011年、角川学芸出版
 ▲「新全訳古語辞典」(林巨樹・安藤千鶴子、2017年、大修館書店)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
🔺【未然形の欄を「(く)or(しく)」としているもの……(8)】
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ▲「角川古語辞典・初版」(武田祐吉久松潜一、1958年、角川書店)※「改訂版」(1963年)も同じ
 ▲「旺文社古語辞典・初版」(鳥居正博、1960年、旺文社)※「増補版」(1962年)「中型新版」(1965年)も同じ
 ▲「全訳用例古語辞典・初版」(菅野雅雄・中村幸弘、1996年、学習研究社)※「第二版」(2002年)も同じ
 ▲「完訳用例古語辞典」(小久保崇明、1999年、学習研究社
 ▲「学研全訳古語辞典・初版」(小久保崇明、2003年、学習研究社)※「改訂第二版」(2014年)も同じ
 ▲「全訳全解古語辞典」(山口堯二・鈴木日出男、2004年、文英堂)
 ▲「最新全訳古語辞典」(三角洋一・小町谷照彦、2006年、東京書籍)
 ▲「学研学習用例古語辞典・改訂第三版」(菅野雅雄・中村幸弘、2015年、学研教育出版

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
🔺【未然形「くorしく」を認めるもの……(14)】
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ▲「明解古語辞典・初版」(金田一春彦、1953年、三省堂)※「改訂版」(1958年)も同じ
 ▲《江戸時代限定》「明解古語辞典・新版」(金田一春彦、1962年、三省堂)※「修訂版」(1967年)も同じ
 ▲「新選古語辞典・初版」(中田祝夫、1963年、小学館)※「改訂新版」(1966年)「新版」(1974年)も同じ
 ▲「六万語古語辞典」(金子武雄・三谷栄一、1964年、金園社)※「精解古語辞典」(1970年)も同じ
 ▲《江戸時代限定》「新明解古語辞典・初版」(金田一春彦、1972年、三省堂)※「第二版」(1977年)「第三版」(1995年)も同じ
 ▲「角川新版古語辞典」(久松潜一・佐藤謙三、1973年、角川書店
 ▲「角川最新古語小辞典」(佐藤謙三・山田俊雄、1975年、角川書店)※「角川最新・増補版」(1980年)も同じ
 ▲「福武古語辞典」(井上宗雄・中村幸弘、1988年、福武書店
 ▲「角川必携古語辞典」(山田俊雄・吉川泰雄、1988年、角川書店
 ▲「福武コンパクト古語辞典」(中村幸弘、1990年、福武書店
 ▲「ベネッセ全訳古語辞典・初版」(中村幸弘、1996年、ベネッセコーポレーション
 ▲「角川必携古語辞典全訳版」(山田俊雄・吉川泰雄・室伏信助、1997年、角川書店
 ▲「ベネッセ古語辞典」(井上宗雄・中村幸弘、1997年、ベネッセコーポレーション
 ▲「ベネッセ全訳コンパクト古語辞典」(中村幸弘、1999年、ベネッセコーポレーション

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
🔺【活用表が無く、不明のもの……(1)】
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ▲「学研古語辞典」(吉沢典男、1968年、学習研究社



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
🔷古典文法書の場合
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
🔺【未然形「くorしく」を認めないもの……(4)】
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 ▲「解釈・読解のための新明解古典文法・改訂新版」(江口正弘、1988年、尚文出版)
 ▲「古典にいざなう新古典文法」(北原保雄、1992年、大修館書店)
 ▲「精選古典文法・改訂版」(築島裕・白藤禮幸、1999年、明治書院
 ▲「望月光の超基礎がため古文教室古典文法編」(望月光、2007年、旺文社)


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
🔺【未然形の欄を「(く)or(しく)」としているもの……(10)】
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 ▲「読解をたいせつにする体系古典文法・三訂版」(浜本純逸、1996年、数研出版)※「七訂版」(2008年)「八訂版」(2013年)も同じ
 ▲「よくわかる新選古典文法」(小町谷照彦、1997年、東京書籍)
 ▲「標準新古典文法」(山口堯二、2000年、文英堂)
 ▲「完全傍訳やさしく詳しい古典文法」(水野左千夫、2000年、尚文出版)
 ▲「富井の古典文法をはじめからていねいに」(富井健二、2002年、ナガセ)
 ▲「解釈のための必携古典文法・改訂版」(萩原昌好、2005年、中央図書)※「三訂版」(2010年)も同じ
 ▲「基礎から学ぶ解析古典文法・改訂新版」(桐原書店編集部、2006年、桐原書店
 ▲「読解のための必修古典文法」(宇都宮啓吾・横田隆志・西川兼司、2009年、文英堂)
 ▲「新修古典文法・二訂版」(荻野文子、2010年、京都書房)
 ▲「基礎から解釈へ新しい古典文法・四訂新版」(岩淵匡・坂梨隆三・林史典、2010年、桐原書店


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
🔺【未然形「くorしく」を認めるもの……(9)】
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 ▲「古文解釈のための国文法入門」(松尾聰、1952年、研究社)
 ▲「高等学校新選古典文法」(中田祝夫・増淵恒吉、1964年、尚学図書
 ▲「対訳古典文法」(清水文雄・松村明・真下三郎、1972年、第一学習社
 ▲「古典文法・新修版」(松村明、1976年、明治書院
 ▲「簡明文語文法・新訂版」(成田杢之助、1976年、京都書房)
 ▲「要解古典文法」(三谷栄一・稲村徳、1987年、有精堂)
 ▲「古文読解のための標準古典文法」(市川孝・山内洋一郎、1995年、第一学習社
 ▲「古文解釈のための総合力を養う完全マスター古典文法」(第一学習社編集部、2000年、第一学習社
 ▲「仲先生の古典文法の基礎と実践・新訂版」(仲光雄、2000年、文英堂)


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

古語辞典比較〜「うつくし」⑤

https://nobinyanmikeko.hatenadiary.jp/entry/2020/05/06/023444



🔷「講談社古語辞典」(佐伯梅友・馬淵和夫編、1969年12月、講談社

うつくし【愛し・美し】(形シク)〔「いつくし」と同語源。愛重したいというのが原義〕
 ①かわいい。いとしい。
 「妻子(めこ)見ればめぐし━━」〈万・800〉
 ②〔小さいものに対して起こる感情〕かわいらしい。
 「三寸ばかりなる人いと━━うてゐたり」〈竹取〉
 ③〔世俗に染まっていないものについて〕清らかだ。
 「人がらは心━━くあてはかなる※を好みて」〈伊勢・16〉
 ※「伊勢物語に就きての研究・校本篇」で見る限り、こういう本文の伝本は無い。多くは「あてはかなることをこのみて」。
 ④〔外観が〕きれいだ。
 「━━きものども、さまざまに装束(さうぞ)き集まりて」〈蜻蛉・天禄二年〉
 ⑤〔事物の造作・内容などが〕すぐれている。りっぱだ。けっこうだ。
 「かくて大学の君、その日の文━━う作り給ひて」〈源・少女〉
 ⑥きれいだ。
 「ねこが━━うくうた」〈日葡辞書〉
 ⑦穏やかだ。
 「━━う頼まんしたらば」〈伎・助六
[記・万・竹・伊・蜻・枕・源・更・徒]

🔷「講談社学術文庫古語辞典」(佐伯梅友・馬淵和夫編、1979年3月、講談社
も同じ。


🔷「講談社キャンパス古語辞典」(馬淵和夫編、1995年11月、講談社

うつく・し【愛し・美し】(形シク)〔「いつくし」と同語源。かわいがり、大事にしたいという感情を表す〕
 ❶〔妻子・恋人などに対して〕かわいい。いとしい。
 「妻子(めこ)見ればめぐし━━・し」〈万・800〉
 ❷〔小さいものに対して起こる感情〕かわいらしい。
 「三寸ばかりなる人いと━━・しうてゐたり」〈竹取・かぐや姫の生ひ立ち〉
 ❸〔世俗に染まっていないものについて〕清らかだ。
 「人がらは、心━━・しくあてはかなることを好みて、こと人にも似ず」〈伊勢・16〉
 ❹(外観が)きれいだ。
 「━━・しきものども、さまざまに装束(しやうぞ)き集まりて」〈蜻蛉・天禄二年〉
 ❺(事物の造作・内容などが)すぐれている。りっぱだ。けっこうだ。
 「かくて大学の君(=夕霧)、その日の文(ふみ=漢詩)━━・しう作り給ひて」〈源・少女〉
 ❻きれいに始末するようす。手際のよいようす。
 「ねこが━━・しうくうた」〈日葡辞書〉


🔷「三省堂古語辞典/初版」(小松英雄編、1971年1月、三省堂

うつくし(形シク)
 ㈠【愛し】かわいい。愛らしい。
  「妻子(めこ)見ればめぐし━━」[万葉五・800・憶良]
 ㈡【美し】
  ❶きれいだ。うるわしい。
  「(北ノ方ハ)御心なむいとよく、容貌(かたち)も━━・うおはしましける」[落窪二]
  ❷りっぱだ。
  「かの木の道の匠(たくみ=大工)の造れる━━・き器(うつはもの)も、古代の姿こそをかしと見ゆれ」[徒然・22段・何事も古き世のみぞ]

🔷「三省堂古語辞典/修訂版」(小松英雄編、1974年1月、三省堂
も同じ。


🔷「例解古語辞典/初版」(佐伯梅友・森野宗明・小松英雄編著、1980年1月、三省堂

うつくし(形シク)
 ㈠【愛し】かわいい。愛らしい。
  「妻子(めこ)見ればめぐし━━」[万葉五・800・憶良]
   [解]「めぐし」も、かわいい、いとしいの意。
 ㈡【美し】
  ❶きれいだ。うるわしい。
  「(北の方ハ)御心なむいとよく、容貌(かたち)も━━・うおはしましける」[落窪二]
   [解]この北の方は、この物語の男主人公の母で、成人した男主人公をはじめ七人の子持ちである。決して若いとはいいがたく、かわいらしいとみるよりは、美しいとみる方が自然であろう。もっとも年齢のわりには依然とかわいらしい感じがあったと解することも、全く不可能ではない。
  ❷りっぱだ。
  「かの木の道の匠(たくみ=大工)の造れる━━・き器(うつはもの)も、古代の姿こそをかしと見ゆれ」[徒然・22段]
 [要説]
   平安時代では、かわいらしいという意味にほとんど限られているとよくいわれる。確かに、『枕草子』の「うつくしきもの」の段をみると、あどけない幼児のしぐさとか雀の子など、かわいらしいという印象を与える例だけが取り上げられているし、他の日記・物語の例も、かわいらしいと訳すとよくその場面に合うと考えられる例が大半を占めるが、その一方では、きれいだ・美しいとみる方がおだやかだと思われる例も少なくはない。機械的に、いつも、かわいらしいと訳しさえすればよいというわけではない点に留意したい。
 中世に下ると、このことばの適用される範囲が広がる。紅葉の美しさなどの自然描写にも、普通に用いられるようになるのは鎌倉時代以後のようである。
 ㈡❷の例も中世の作品に散見する用い方といってよい。

古語辞典比較〜「うつくし」④

https://nobinyanmikeko.hatenadiary.jp/entry/2020/05/03/022905


🔷時代別国語大辞典上代編(上代語辞典編修委員会編、1967年12月、三省堂

うつくし[愛](形シク)
 いとしい。かわいい。
 「本毎に花は咲けども何とかも于都倶之(うつくし)妹がまた咲き出来ぬ」(孝徳紀大化五年)
 「于都倶之枳(うつくしき)あが若き子を置きてか行かむ」(斉明紀四年)
 「妻子(メコ)見ればめぐし宇都久志(うつくし)」(万800)
 「有都久之(うつくし)母にまた言問はむ」(万4392)
 「宇都久志伎(うつくしき)小目の笹葉にあられ降り」(播磨風土記賀毛郡)
 「忽然心裏愛(うつくし)」(遊仙窟)
 「娃 美女白、宇豆久志支乎美奈(うつくしきヲミナ)」(新撰字鏡)
【考】
 ウルハシが、整って立派なさま・端正な姿をあらわすのに対して、ウツクシは夫婦の間や、父母・妻子・恋人に対する肉親的な親愛の感情を表現した。


🔷「学研古語辞典」(吉沢典男編、1968年9月、学習研究社

うつく・し【美し・愛し】〘形シク〙
  ①いとしい。
 「愛・しき人の纏(ま)きてし敷栲(しきたへ)のわが手枕(たまくら)を纏く人あらめや」〔万・438〕
 ②かわいらしい。かれんだ。
 「頭(かしら)はあまそぎなるちごの、目に髪のおほへるをかきはやらで、うちかたぶきて物など見たるも、うつく・し」〔枕・うつくしきもの〕
  ③りっぱである。みごとだ。
 「いろこくさきたる木のやうたい(=形)うつく・しきが侍りしを」〔大鏡・昔物語〕
 ④きれいだ。
 「そなたのような美・しい女中に近づきはおりない。」〔狂言・鈍太郎〕
  ⑤[近世]いさぎよい。さっぱりしている。
 「半年の事とおもへば大かたの事は堪忍(かんにん)して、うつく・しう出替はりまでつかふて暇出さるるは」〔西鶴・織留〕
 ▼「うつくし」は、小さなもののかわいらしい美しさ、「うるはし」は、均整や調和のとれた美しさ、「きよら」は清浄な美しさにいうことが多い。

🔷「学研要約古語辞典」(吉沢典男編、1987年11月、学習研究社
も同じ。


🔷「旺文社学習古語辞典/初版」(鈴木一雄編、1969年3月、旺文社)

うつく・し【美し・愛し】(形シク)〘もとは肉親に対する愛情を表わす語。とくに幼少の者のかわいらしさについていうことが多い。現代語の「美しい」はその転義〙
 ①かわいらしい。あいらしい
 「━━・しきもの。瓜にかきたるちごの顔」〈枕・うつくしきもの〉
 ②あいらしく美しい
 「大きにはあらぬ殿上(てんじやう)わらはのさうぞき立てられて(=着物ヲキチント着飾ラセラレテ)ありくも━━・し」〈枕・うつくしきもの〉
 ③りっぱだ。みごとだ
 「かの木の道のたくみのつくれる━━・しきうつは物も」〈徒然・22〉
 ④きれいだ。うるわしい
 「仏御前は髪すがたよりはじめて、みめかたち━━・しく」〈平家・1〉
 ⑤さっぱりとしている。いさぎよい。
 「あきたによって━━・しう別れてくだんせ」〈三世相錦繡文章〉
[発展学習]
  「うつくし」の意味
 「うつくしい」は、今日広く用いられることばであるが、中古語「うつくし」は、広く一般的に「美」全体をいいあらわすことばではなかった。当時の「うつくし」の意味を知るには、清少納言の『枕草子』の「うつくしきもの」の項を読むとよい。
  うつくしきもの。瓜にかきたるちごの顔。すずめの子の、ねず鳴きするにをどりくる。
 小さい瓜にかわいい赤チャンの顔をかく、家に飼われて馴れたすずめの子が、チュッチュッと口まねして呼ぶとピョンピョンおどるように寄ってくる。━━かわいい。
 「うつくし」が「あいらしいもの」を意味していることは、右の例からもすぐにわかるであろう。「美」一般を意味することばでなく、「可憐美」をあらわすことばだったのである。さらに、
  ひひなの調度、蓮(はちす)の浮き葉のいとちひさきを池より取りあげたる。葵(あふひ)のいとちひさき
と、小さいものの愛らしさを列挙した清少納言は、
  何も何も、ちひさきものはみなうつくし。
といっている。
 ところで、中古より前には、「うつくし」は、主として父母・妻子といった親しい者に対する愛情表現に用いられていた。『万葉集』には、
  うつくし母にまた言(こと)問はむ
とか、
  妻子(めこ)みればめぐしうつくし
とかみえている。
 「うつくし」は、上代においては肉親に対する愛情表現が、中古にはいって、小さい者・小さい形に対する愛情表現にかわり、しだいに、小さいものの美に対する愛情表現に拡大し、そして、ついに今日使っている美一般━━美しさそのものをあらわすことばに変化していったのである。今日のような意味━━美しさそのもの━━に変化した時代は、ほぼ室町時代といわれている。


🔷「旺文社標準古語辞典」(鈴木一雄編、1973年1月、旺文社)

うつく・し【美し・愛し】(形シク)〘もとは肉親に対する愛情を表す語。とくに幼少の者のかわいらしさについていうことが多い。現代語の「美しい」はその転義〙
 ①かわいらしい。あいらしい
 「━━・しきもの。瓜にかきたるちごの顔」〈枕・うつくしきもの〉
 ②あいらしく美しい
 「大きにはあらぬ殿上(てんじやう)わらはのさうぞき立てられて(=着物ヲキチント着飾ラセラレテ)ありくも━━・し」〈枕・うつくしきもの〉
 ③りっぱだ。みごとだ
 「かの木の道のたくみのつくれる━━・しきうつは物も」〈徒然・22〉
 ④きれいだ。うるわしい
 「仏御前は髪すがたよりはじめて、みめかたち━━・しく」〈平家・1〉
 ⑤さっぱりとしている。いさぎよい。
 「あきたによって━━・しう別れてくだんせ」〈三世相錦繡文章〉
[発展学習]
  「うつくし」の意味
 「うつくしい」は、今日広く用いられることばであるが、中古語「うつくし」は、広く一般的に「美」全体をいいあらわすことばではなかった。当時の「うつくし」の意味を知るには、清少納言の『枕草子』の「うつくしきもの」の項を読むとよい。
  うつくしきもの。瓜にかきたるちごの顔。すずめの子の、ねず鳴きするにをどりくる
 小さい瓜にかわいい赤チャンの顔をかく、家に飼われて馴れたすずめの子が、チュッチュッと口まねして呼ぶとピョンピョンおどるように寄ってくる。━━かわいい。
 「うつくし」が「あいらしいもの」を意味していることは、右の例からもすぐにわかるであろう。「美」一般を意味することばでなく、「可憐美」をあらわすことばだったのである。さらに、
  ひひなの調度、蓮(はちす)の浮き葉のいとちひさきを池より取りあげたる。葵(あふひ)のいとちひさき
と、小さいものの愛らしさを列挙した清少納言は、
  何も何も、ちひさきものはみなうつくし
といっている。
 ところで、中古より前には、「うつくし」は、主として父母・妻子といった親しい者に対する愛情表現に用いられていた。『万葉集』には、
  天地(あめつち)のいづれの神を祈らばか
  うつくし母にまた言(こと)問はむ〈万・4392〉
とか、
  父母をみればたふとし
  妻子(めこ)みればめぐしうつくし〈万・800〉
とかみえている。
 「うつくし」は、上代においては肉親に対する愛情表現が、中古にはいって、小さい者・小さい形に対する愛情表現にかわり、しだいに、小さいものの美に対する愛情表現に拡大し、そして、ついに今日使っている美一般━━美しさそのものをあらわすことばに変化していったのである。今日のような意味━━美しさそのもの━━に変化した時代は、ほぼ室町時代といわれている。


🔷「旺文社学習古語辞典/改訂版」(鈴木一雄編、1977年1月、旺文社)

うつく・し【美し・愛し】(形シク)
 ①かわいい。いとしい。
 「妻子(めこ)見ればめぐし━━・し」〈万・5・800〉
 ②(小さくて)かわいらしい。あいらしい。
 「━━・しきもの 瓜(うり)にかきたるちごの顔」〈枕・うつくしきもの〉
 ③きれいだ。うるわしい。
 「仏御前は髪すがたよりはじめて、みめかたち━━・しく」〈平家・1・祇王
 ④りっぱだ。みごとだ
 「かの木の道のたくみのつくれる━━・しきうつは物も」〈徒然・22〉

  「うつくし」の意味
 「うつくしい」は、現在広く用いられることばであるが、平安時代の「うつくし」は、現在のように美一般を表す広い意味のことばではなかった。
  うつくしきもの 瓜にかきたるちごの顔。すずめの子の、ねず鳴きするにをどりくる  〈枕・うつくしきもの〉
 「うつくし」が「あいらしい」「かわいい」意味に用いられていることは、右の例からすぐにわかるであろう。さらに、
  ひひなの調度、蓮(はちす)の浮き葉のいと小さきを池よりとりあげたる。葵(あふひ)のいと小さき
と、小さいものの愛らしさを列挙した清少納言は、
  何も何も、小さきものはみなうつくし
と総括している。「うつくし」は可憐美を表すことばであったのである。
 ところで、平安時代以前には、「うつくし」は、主として父母・妻子といった身内の親しい者に対する愛情表現として用いられた。『万葉集』には、
  天地(あめつち)のいづれの神を祈らばかうつくし母にまた言(こと)問はむ〈万・20・4392〉
  父母をみればたふとし妻子(めこ)みればめぐしうつくし〈万・5・800〉
などとよまれている。
 「うつくし」は、上代においては肉親に対する愛情表現であったものが、平安時代にはいって、小さい者・小さい形に対する愛情表現に変わり、その可憐美がついに今日使っている美一般を表すことばにまで意味が拡大したのである。



https://nobinyanmikeko.hatenadiary.jp/entry/2020/05/08/235236

助動詞「む」の未然形について

🔴古語辞典の場合


🔺助動詞「む」の未然形として「ま」を挙げているもの

★「旺文社古語辞典/初版」(旺文社辞典課編、1960年2月、旺文社)
 ※活用表には未然形は載せていないが、「まく」の項に《推量の助動詞「む」の未然形「ま」に、体言または副詞を作る接尾語「く」が付いたもの。多く奈良時代に用いられた》とある。

★「旺文社古語辞典/中型新版」(旺文社編、1965年2月、旺文社)
 ※「まく」の項の記述は初版と同じだが、「む」の項の[語法]に《奈良時代には未然形に「ま」という形があったと考えられるが、これは「━━まく」の形でしか現われない》という記述が加わった。

★「古語大辞典」(中田祝夫・和田利政・北原保雄編、1983年12月、小学館
 ※活用表には「ま」は載せていないが、[語誌]に《古くは、未然形に「ま」があったと考えられる。「朝な朝な見まくほしきを」〈万葉・11・2801〉の類の「まくほし」の「ま」がそれである。[森野宗明]》とある。


🔺助動詞「む」の未然形を「(ま)」としているもの

★「角川古語辞典」(武田祐吉久松潜一編、1958年3月、角川書店
 ※活用表の注で《「ま」は「まく」という形に残り、古い未然形と認められる。》としている。

★「基本古語辞典」(小西甚一著、1966年3月、大修館書店)
 ※「む」の語釈後記④(2)に《未然形の「ま」は、奈良時代にすでに単独では使われなくなり、いつも「まく」(「く」は接尾語)の形だけが現われる。「梅の花散らまく惜しみわが園の竹の林に鶯鳴くも」〔万葉・巻五〕「海(わた)の原寄せくる波のしばしばも見まくのほしき玉津島かも」〔古今・雑上〕「まくほし」は助動詞「まほし」の原形。》とある。

★「旺文社古語辞典/改訂新版」(旺文社編、1969回11月、旺文社)
 ※本文の記述は中型新版と同じだが、巻末の活用表の未然形に「(ま)」が加わった。

★「詳解古語辞典」(佐藤定義編、1972年11月、明治書院
 ※語釈後記[1]に《上代には、未然形に、「ま(く)」の形があった。》とする。

★「角川新版古語辞典」(久松潜一・佐藤謙三編、1973年1月、角川書店
 ※「角川古語辞典」にあった注記は無くなった。

★「角川最新古語小辞典」(佐藤謙三・山田俊雄編、1975年1月、角川書店
 ※[参考](1)に《未然形「ま」は接尾語「く」の付く形だけで、主として上代に用いられ、中古以後は和歌だけに用いられる。「梅の花散らまく惜しみわが園の竹の林に鶯鳴くも」(万葉・5・824)「思ふどち円居(まとゐ)せる夜は唐錦たたまく惜しきものにぞありける」(古今・雑上・864)》とある。

★「例解古語辞典/第三版」(佐伯梅友小松英雄鈴木丹士郎土井洋一・林史典・森野宗明編著、1992年11月、三省堂

 【解説】
 [活用]未然形の「ま」は、主として上代に、準体助詞「く」の付いた「まく」の形で用いられるだけで、平安時代以後は、もっぱら和歌に用いられる。

★「三省堂全訳読解古語辞典/初版」(鈴木一雄・伊藤博・外山映次・小池清治編、1995年11月、三省堂

 《補説》
  (6)未然形の「ま」は、準体助詞「く」の付いた「まく」の形で使用される。上代では多用されたが、中古では和歌で「…まく欲し」「…まく惜し」の形に限定されるようになる。

★「三省堂詳説古語辞典」(秋山虔渡辺実編、2000年1月、三省堂

 [発展学習ファイル]
  (1)上代には未然形に「ま」という形があったとされる。「む」が名詞化もの「まく」の一部としてあらわれる。
 ※巻末の活用表では未然形は「◯」になっているが、「む」の項目の活用表では未然形は「(ま)」となっている。

★「三省堂全訳読解古語辞典/第四版」(鈴木一雄・伊藤博・外山映次・小池清治編、2013年1月、三省堂

 《補説》
  「まく」 未然形「ま」は、接尾語「く」の付いた「まく」の形で使用される。上代では多用されたが、後には「まくほし」などの形に限定されるようになる。ただ、「まく」については、連体形「む」に接尾語「あく」が融合したものと考える立場もある。


🔺助動詞「む」の未然形を挙げないもの

★「明解古語辞典」(金田一春彦編、1953年4月、三省堂
 ※活用表には未然形なし。《上代には「まく」という名詞形があった。》とのみ記す。

★「新明解古語辞典」(金田一春彦編、1972年12月、三省堂
 ※「まく」の項に《助動詞「む」の連体形+「あく」の転。また、助動詞「む」の未然形に「ま」を認め、「ま」+接尾語「く」とも解する》とある。

★「岩波古語辞典」(大野晋佐竹昭広・前田金五郎編、1974年12月、岩波書店

 ※「ま」という活用形があるように見えるが、それは、「行かまく」「見まく」など、「まく」の形の場合であり、これはいわゆるク語法による語形変化で、未然形ではない。

★「例解古語辞典/初版」(佐伯梅友・森野宗明・小松英雄編著、1980年1月、三省堂

★「旺文社古語辞典/新版」(松村明・守随憲治・今泉忠義編、1981年10月、旺文社)
 ※巻末の活用表の未然形は「◯」になった。「む」の項の[語法]に《ク語法「まく」の「ま」を未然形とする説もある。》と書かれ、「まく」の項も《推量の助動詞「む」のク語法》と書き換えられた。

★「角川全訳古語辞典」(久保田淳・室伏信助編、2002年10月、角川書店
 ※[補説](2)に《「む」のク語法に「まく」があった。これを未然形「ま」と扱う必要はない。》とある。

★「古典基礎語辞典」(大野晋編、2011年10月、角川学芸出版

 【解説】
  未然形のマを立てる説があるが、これは、「言はまく」「見まく」などのク語法のマであって( ifa + mu + aku ⇒ ifamuaku ⇒ifamaku 、 mi + mu + aku ⇒ mimuaku ⇒ mimaku )、ムの未然形とはいえない。

古語辞典比較〜「うつくし」③

https://nobinyanmikeko.hatenadiary.jp/entry/2020/04/27/211244



🔷「新選古語辞典/初版」(中田祝夫編、1963年4月10日、小学館

うつく・し【愛し・美し】〔形シク〕(「いつく」「いつくしむ」と同源。本来は親の子に対する、年長者の幼少者に対する、また夫婦間などのいたわりの愛情を表わす語。「美」はその転義)
 ➀かわいい。いとしい。
 「妻子(めこ)見れば、めぐし━━・し」〈万・800〉。
 ➁あいらしく美しい。
 「大きにはあらぬ殿上わらはのさうぞき立てられてありくも━━・し」〈枕・うつくしきもの〉。
 ➂麗しい。きれいだ。
 「あの御船より、よに━━・しうまします女房の、ただいま海へ入らせ給ひぬるぞや」〈平家・9・小宰相〉。
 ➃りっぱだ。
 「木の道のたくみの作れる━━・しきうつはものも」〈徒然・22〉。
 ⑤(副詞的に)きれいさっぱりとしている。
 「ウツクシュウハテタ」「ネコガウツクシュウクウタ」〈日葡辞書〉。
 「━━・しう別れてくだんせ」〈常磐津・助六〉。


🔷「新選古語辞典/改訂新版」(中田祝夫編、1966年2月10日、小学館

うつく・し【愛し・美し】〔形シク〕(「いつく」「いつくしむ」と同源。本来は親の子に対する、年長者の幼少者に対する、また夫婦間などのいたわりの愛情を表わす語。「美」はその転義)
 ➀かわいい。いとしい。
 「妻子(めこ)見れば、めぐし━━・し」〈万・800〉。
 ➁あいらしく美しい。
 「大きにはあらぬ殿上わらはのさうぞき立てられてありくも━━・し」〈枕・うつくしきもの〉。
 ➂麗しい。きれいだ。
 「あの御船より、よに━━・しうまします女房の、ただいま海へ入らせ給ひぬるぞや」〈平家・9・小宰相〉。
 ➃りっぱだ。
 「木の道のたくみの作れる━━・しきうつはものも」〈徒然・22〉。
 ⑤(副詞的に)きれいさっぱりとしている。
 「ウツクシウハテタ」「ネコガウツクシウクウタ」〈日葡辞書〉。
 「━━・しう別れてくだんせ」〈常磐津・助六〉。


🔷「新選古語辞典/新版」(中田祝夫編、1974年2月1日、小学館

うつく・し【愛し・美し】〔形シク〕
 ➀かわいい。いとしい。
 「妻子(めこ)見れば、めぐし━━・し」〈万・800〉。
 ➁愛らしく美しい。
 「大きにはあらぬ殿上童のさうぞき立てられてありくも━━・し」〈枕・うつくしきもの〉。
 ➂麗しい。きれいだ。
 「あの御船より、よに━━・しうまします女房の、ただいま海へ入らせ給ひぬるぞや」〈平家・9・小宰相〉。
 ➃りっぱだ。
 「木の道のたくみの作れる━━・しきうつはものも」〈徒然・22〉。
 ⑤〘副詞的に〙きれいさっぱりとしている。
 「ウツクシウハテタ」「ネコガウツクシウクウタ」〈日葡辞書〉。
 「━━・しう別れてくだんせ」〈常磐津・助六〉。
【参考】
「いつく」「いつくしむ」と語源は同じ。本来は親の子に対する、年長者の幼少者に対する、また夫婦間のいたわりの愛情を表した。平安時代には小さい者に対する愛情を表す語になり、また、美を表すようになるが、その美は幼さのある、かわいらしい、すなおさのある美しさである。


🔷「六万語古語辞典」(金子武雄・三谷栄一編、1964年4月、金園社)

うつく・し(形シク)
 ㈠愛らしい。かわいい。
 「ちいかきものは、みな━━・し」(枕)
 ㈡うるわしい。きれいだ。
 「かたちも━━・しうおはしましける」(落窪)
 ㈢りっぱだ。
 「かの木の道のたくみの作れる━━・しきうつは物」(徒然)
 ㈣心持ちがりっぱだ。
 「━━・しう別れてくださんせ」(常磐津・おその六三)

🔷「精解古語辞典」(金子武雄・三谷栄一編、1970年4月、金園社)
も同じ。


🔷「基本古語辞典/初版」(小西甚一著、1966年3月、大修館書店)

うつく・し【愛し・美し】〘形シク〙
 ①《中古語。「愛したくなるようなようす」の意で、英語の lovely にあたる。beautiful とはちがう 》かわいらしい。愛らしい。
 「━━・しきもの。瓜にかきたるちごの顔」〔枕・151段〕
 「いとよくつきむつびきこえたまへれば(=オナツキニナルノデ)、いみじう━━・しきもの得たりとおぼしけり」〔源氏・薄雲〕
 ②《おもに中世以後、beautiful の意で》きれいだ。
 「これなる松に━━・しき衣かかれり」〔謡・羽衣〕
 ③㋑結構だ。《英語の good に当たる》
  「(犬宮ノ琴ガ上達シタトイウ報告二対シ院ハ)いとよう笑ませたまひて、『━━・しき事かな(=結構ナ話ジャナ)』」〔宇津保・楼上㊦〕
  ㋺みごとだ。《英語の fine に当たる》
  「大学の君その日の文(=試験ノ答案ヲ)━━・しう作りたまひて進士になりたまひぬ」〔源氏・少女〕
 ④角(かど)が立たない。円満だ。
 「『一夜の無礼はありもやしけむ(=イツゾヤハ失礼シタカモシレマセンガ)、さらに覚えはべらぬは、仲澄(=ワタシ)が酔ひこそ進みてはべりけめ(=飲ミスギタンデショウ)』などのたまひて、━━・しく(=シタシク)ものがたりなどしたまふ〔宇津保・嵯峨院
 「(気二入ラナイ奉公人デモ契約ガ)半年の事と思へば、大方の事は堪忍して、━━・しう出替はり(=契約更新期)まで使うて暇出さるる」〔西鶴・織留・巻5ノ2〕 
 ⑤《近世語》心や行動がさっぱりしている。しつこくない。
 「これまでお頭(かしら)や平(ひら)殿が━━・しう(=アッサリト)口説いてゐらるるによって」〔伎・韓人漢文・1〕

🔷「基本古語辞典/改訂版」(小西甚一著、1969年11月、大修館書店)
🔷「基本古語辞典/三訂版」(小西甚一著、1974年2月、大修館書店)
も同じ。


https://nobinyanmikeko.hatenadiary.jp/entry/2020/05/06/023444