つれづれ思うこと

特にテーマは決めずに書きます

動詞「付く」の活用

動詞「付く・着く・著く・就く・即く・憑く・託く」の活用を各古語辞典はどう記述しているか。
※旺文社古語辞典等改版が繰り返されている辞書は手持ちの中の最も新しい版のみに限った。


【自動詞四段・他動詞下二段とする】
★「岩波古語辞典・補訂版」(大野晋佐竹昭広・前田金五郎編、1990年、岩波書店


【自動詞四段・他動詞四段・他動詞下二段とする】
★「角川古語辞典・改訂版」(武田祐吉久松潜一編、1963年、角川書店
★「基本古語辞典・三訂版」(小西甚一著、1969年、大修館書店)
★「講談社古語辞典」(佐伯梅友・馬淵和夫編、1969年、講談社
★「精解古語辞典」(金子武雄・三谷栄一編、1970年、金園社)
★「角川新版古語辞典」(久松潜一・佐藤謙三編、1973年、角川書店
★「旺文社標準古語辞典」(鈴木一雄編、1973年、旺文社)
★「新選古語辞典・新版」(中田祝夫編、1974年、小学館
★「旺文社学習古語辞典・改訂版」(鈴木一雄編、1977年、旺文社)
★「角川最新古語辞典・増補版」(佐藤謙三・山田俊雄編、1980年、角川書店
★「学研新古語辞典」(市古貞次編、1986年、学習研究社
★「学研要約古語辞典」(吉沢典男編、1987年、学習研究社
★「最新詳解古語辞典」(佐藤定義編、1991年、明治書院
★「要語全訳必修古語辞典」(平田喜信編、1992年、学習研究社
★「新明解古語辞典・第三版」(金田一春彦編、1995年、三省堂
★「講談社キャンパス古語辞典」(馬淵和夫編、1995年、講談社
★「旺文社高校基礎古語辞典・第二版」(旺文社編、1997年、旺文社)
★「角川必携古語辞典全訳版」(山田俊雄・吉川泰雄・室伏信助編、1997年、角川書店
★「古語林」(林巨樹・安藤千鶴子編、1997年、大修館書店)
★「全訳古語例解辞典・第三版」(北原保雄編、1998年、小学館
★「完訳用例古語辞典」(学研辞典編集部編、1999年、学習研究社) 
★「ベネッセ全訳コンパクト古語辞典」(中村幸弘編、1999年、ベネッセコーポレーション
★「三省堂詳説古語辞典」(秋山虔渡辺実編、2000年、三省堂
★「大修館全訳古語辞典」(林巨樹・安藤千鶴子編、2001年、大修館書店)
★「全訳用例古語辞典・第二版」(菅野雅雄・中村幸弘編、2002年、学習研究社
★「角川全訳古語辞典」(久保田淳・室伏信助編、2002年、角川書店
★「小学館全文全訳古語辞典」(北原保雄編、2004年、小学館
★「全訳全解古語辞典」(山口堯二・鈴木日出男編、2004年、文英堂)
★「旺文社全訳学習古語辞典」(宮腰賢・石井正己・小田勝編、2016年、旺文社)
★「東書最新全訳古語辞典」(三角洋一・小町谷照彦編、2006年、東京書籍)
★「古典基礎語辞典」(大野晋編、2011年、角川学芸出版
★「学研全訳古語辞典・第二版」(小久保崇明編、2014年、学研教育出版
★「旺文社古語辞典・第十版増補版」(松村明・山口明穂・和田利政編、2015年、旺文社)
★「学研学習用例古語辞典・改訂第三版」(菅野雅雄・中村幸弘編、2015年、学研教育出版
★「三省堂全訳読解古語辞典・第五版」(鈴木一雄・小池清治・倉田実・石埜敬子・森野崇・高山善行編、2017年、三省堂
★「新全訳古語辞典」(林巨樹・安藤千鶴子編、2017年、大修館書店)
★「旺文社全訳古語辞典・第五版」(宮腰賢・石井正己・小田勝編、2018年、旺文社)


【自動詞四段・他動詞四段・自動詞下二段・他動詞下二段とする】
★「古語大辞典」(中田祝夫・和田利政・北原保雄編、1983年、小学館
★「福武コンパクト古語辞典」(中村幸弘編、1990年、福武書店
★「ベネッセ全訳古語辞典・初版」(中村幸弘編、1996年、ベネッセコーポレーション
★「ベネッセ古語辞典」(井上宗雄・中村幸弘編、1997年、ベネッセコーポレーション


※「時代別国語大辞典上代編」(上代語辞典編修委員会編、1967年、三省堂)・「三省堂古語辞典・修訂版」(小松英雄編、1971年、三省堂)・「三省堂セレクト古語辞典」(桑原博史篇、1987年、三省堂)・「例解古語辞典・第三版」(小松英雄他編、1992年、三省堂)・「三省堂全訳基本古語辞典・第三版増補新装版」(鈴木一雄編、2007年、三省堂)は自動詞・他動詞についての記述が無いので除外した。 



【用例】

★自動詞四段活用
◎いつのまにうつろふ色の[つき]ぬらん
きみがさとには春なかるらし〈伊勢物語20段〉
◎あざやかなるきぬどもの身にも[つか]ぬを着て〈枕草子・関白殿二月廿一日に〉

★他動詞四段活用
◎徳を[つか]んと思はばすべからくまづその心づかひを修行すべし〈徒然草217段〉
◎是はいかさま妓といふ文字を名に[つい]てかくは目出たきやらん〈平家物語・妓王〉

★自動詞下二段活用
◎をりに[つけ]てもひとふしあはれともをかしとも聞きおきつるものは草木鳥虫もおろかにこそおぼえね〈枕草子・花の木ならぬは〉
◎からひとの袖ふることは遠けれど
立居に[つけ]てあはれとは見き〈源氏物語・紅葉賀〉

★他動詞下二段活用
◎むめのつくりえだにきじを[つけ]てたてまつるとて〈伊勢物語98段〉
◎物語集など書き写すに本に墨[つけ]ぬ〈枕草子・ありがたきもの〉

知恵袋の回答 2020/8/2

「咲く」が載っている辞書と載っていない辞書は以下の通りです。

載っているもの……◯
載っていないもの…✕

岩波古語辞典(初版、1974年)◯
岩波古語辞典(補訂版、1990年)◯
旺文社古語辞典(初版、1960年)✕
旺文社古語辞典(増補版、1962年)✕
旺文社古語辞典(中型新版、1965年)✕
旺文社古語辞典(改訂新版、1969年)✕
旺文社古語辞典(新訂版、1975年)✕
旺文社古語辞典(新版、1981年)✕
旺文社古語辞典(改訂新版、1988年)✕
旺文社古語辞典(第八版、1994年)✕
旺文社古語辞典(第九版、2001年)✕
旺文社古語辞典(第十版、2008年)◯
旺文社古語辞典(第十版増補版、2015年)◯
旺文社学習古語辞典(初版、1969年)✕
旺文社学習古語辞典(改訂版、1977年)◯
旺文社標準古語辞典(1973年)✕
旺文社高校基礎古語辞典(初版、1982年)✕
旺文社高校基礎古語辞典(第二版、1997年)◯
旺文社全訳古語辞典(初版、1990年)✕
旺文社全訳古語辞典(第二版、1997年)✕
旺文社全訳古語辞典(第三版、2003年)✕
旺文社全訳古語辞典(第四版、2011年)✕
旺文社全訳古語辞典(第五版、2018年)✕
旺文社全訳学習古語辞典(2006年)✕
角川古語辞典(初版、1958年)✕
角川古語辞典(改訂版、1963年)◯
角川新版古語辞典(1973年)◯
角川最新古語小辞典(1975年)✕
角川最新古語辞典(増補版、1980年)✕
角川古語大辞典(第三巻、1984年)◯
角川必携古語辞典(1988年)✕
角川必携古語辞典全訳版(1997年)✕
角川全訳古語辞典(2002年)◯
古典基礎語辞典(2011年)◯
学研古語辞典(1968年)✕
学研要約古語辞典(1987年)✕
学研新古語辞典(1986年)◯
要語全訳必修古語辞典(1992年)◯
全訳用例古語辞典(初版、1996年)✕
全訳用例古語辞典(第二版、2002年)✕
完訳用例古語辞典(1999年)✕
学研全訳古語辞典(初版、2003年)✕
学研全訳古語辞典(第二版、2014年)✕
学研学習用例古語辞典(改訂第三版、2015年)✕
六万語古語辞典(1964年)◯
精解古語辞典(1970年)◯
講談社古語辞典(1969年)◯
講談社学術文庫古語辞典(1979年)◯
講談社キャンパス古語辞典(1995年)✕
明解古語辞典(初版、1953年)✕
明解古語辞典(改訂版、1958年)✕
明解古語辞典(新版、1962年)✕
明解古語辞典(修訂版、1967年)✕
新明解古語辞典(初版、1972年)✕
新明解古語辞典(第二版、1977年)✕
新明解古語辞典(第三版、1995年)✕
時代別国語大辞典上代編(1967年)◯
三省堂古語辞典(初版、1971年)✕
三省堂古語辞典(修訂版、1974年)✕
三省堂例解古語辞典(初版、1980年)✕
三省堂例解古語辞典(第二版、1985年)◯
三省堂例解古語辞典(第三版、1992年)◯
三省堂セレクト古語辞典(1987年)✕
三省堂全訳基本古語辞典(初版、1995年)◯
三省堂全訳基本古語辞典(第二版、2000年)◯
三省堂全訳基本古語辞典(第三版、2003年)◯
三省堂全訳基本古語辞典(第三版増補版、2007年)◯
三省堂全訳読解古語辞典(初版、1995年)✕
三省堂全訳読解古語辞典(第二版、2001年)✕
三省堂全訳読解古語辞典(第三版、2007年)✕
三省堂全訳読解古語辞典(第四版、2013年)✕
三省堂全訳読解古語辞典(第五版、2017年)✕
三省堂詳説古語辞典(2000年)✕
新選古語辞典(初版、1963年)✕
新選古語辞典(改訂新版、1966年)✕
新選古語辞典(新版、1974年)✕
古語大辞典(1983年)✕
小学館全訳古語例解辞典(初版、1987年)✕
小学館全訳古語例解辞典(第二版、1993年)✕
小学館全訳古語例解辞典(第三版、1998年)✕
小学館全文全訳古語辞典(2004年)✕
基本古語辞典(初版、1966年)✕
基本古語辞典(改訂版、1969年)✕
基本古語辞典(三訂版、1974年)✕
古語林(1997年)◯
大修館全訳古語辞典(2001年)✕
新全訳古語辞典(2017年)✕
東書最新全訳古語辞典(2006年)✕
文英堂全訳全解古語辞典(2004年)◯
福武古語辞典(1988年)✕
ベネッセ古語辞典(1997年)✕
福武コンパクト古語辞典(1990年)✕
ベネッセ全訳古語辞典(初版、1996年)✕
ベネッセ全訳コンパクト古語辞典(1999年)✕
詳解古語辞典(1972年)◯
新訂詳解古語辞典(1982年)◯
最新詳解古語辞典(1991年)◯

助動詞「む」の未然形について②

https://nobinyanmikeko.hatenadiary.jp/entry/2020/06/14/035000

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
🔷未然形は「(ま)」とするもの
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
▲「基本古語辞典・初版」(小西甚一、1966年3月、大修館書店)
 ◎未然形の「ま」は、奈良時代にすでに単独では使われなくなり、いつも「まく」(「く」は接尾語)の形だけが現われる。
梅の花(ノ)散ら[ま]く惜しみわが園の竹の林に鶯鳴くも」〔万葉・巻五〕
「海(わた)の原寄せくる波の(ヨウニ)しばしばも見[ま]くのほしき(=見ルコトガ欲セラレル)玉津島かも」〔古今・雑上〕「まくほし」は助動詞「まほし」の原形。
 ◎まく〔連語〕(推量の「む」の古代未然形「ま」に接尾語「く」の付いた形)……であろうこと。……ようということ。……ようなこと。
「君を思ひわが恋ひ━━は(=恋イ慕ウダロウコトハ)あらたまの(=枕詞)立つ月ごとに避(よ)くる日もあらじ(=例外ノ日ナシデショウ)」〔万葉・巻15〕
 ◎ ━━ほ・し〔連語〕〘「まく」に形容詞「ほし」の付いた形。間に「の」がはいることもある〙……ことがしたい。……でありたい。
「紅に衣染(し)め━━・しけども(=染メタイノダガ)着てにほはばか(=美シカッタラ)人の知るべき(=人ガ気ヅクダロウカ)」〔万葉・巻7〕
「……独りか寝(ぬ)らむ問はまくのほしきわぎもが家の知らなく(=家ガドコカワカラナイコトダ)」〔万葉・巻9〕
 ※「改訂版」(1969年11月)「三訂版」(1974年)も同じ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
🔷未然形「ま」を認めないもの
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
▲「明解古語辞典・初版」(金田一春彦、1953年4月、三省堂
 ◎上代には「まく」という名詞形があった。
 ◎ま・く〘助動詞「む」の名詞形〙……ヨウトスルコト。……ヨウナコト。
「時つ風(枕言葉)吹か━━知らに」〔万〕。
「大宮人の見━━ほしさに」〔勢語〕
 ※「改訂版」(1958年11月)も同じ。

▲「明解古語辞典・新版」(金田一春彦、1962年10月、三省堂
 ◎ま・く〘助動詞「む」に接尾語「く」の付いた形〙……ヨウトスルコト。……ヨウナコト。
「時つ風(=潮時ノ風)吹か━━知らず」〔万・1157〕。
【まく欲し】(「まく」に形容詞「欲し」が付いたもの)……スルコトガシタイ、……アリタイの意。
「しめはへて(=シメナワヲハッテ)守(も)ら━━・き梅の花かも」〔万・1858〕。
「老いぬればさらぬ別れのありといへば、いよいよ見━━・き君かな」〔伊勢〕
 ※「修訂新装版」(1967年11月)も同じ。

▲「新明解古語辞典・初版」(金田一春彦、1972年12月、三省堂
 ◎む(助動特活)〘未然形に「ま」を認める説もある〙
 ◎ま・く〘助動詞「む」の連体形+「あく」の転。また、助動詞「む」の未然形に「ま」を認め、「ま」+接尾語「く」とも解する〙……ヨウトスルコト。……ヨウナコト。
「大原の古(ふ)りにし里に(雪ガ)降ら━━はのち」〔万2・103〕。
 ◎ ━━欲し〘「まく」に形容詞「欲し」が付いたもの〙……スルコトガシタイ、……アリタイの意。
「しめはへて(=シメナワヲハッテ)守(も)ら━━・き梅の花かも」〔万10・1858〕。
「老いぬればさらぬ別れのありといへば、いよいよ見━━・き君かな」〔伊勢・84〕
 ※「第二版」(1977年12月)も同じ。

▲「新明解古語辞典・第三版」(金田一春彦、1995年1月、三省堂
 ◎む(助動特活)
【語誌】未然形に「ま」を認める説もある。
 ◎ま・く
(【語誌】助動詞「む」の連体形+形式名詞「あく」の転。また、助動詞「む」の未然形に「ま」を認め、「ま」+接尾語「く」とも解する)……ヨウトスルコト。……ヨウナコト。
「大原の古(ふ)りにし里に(雪ガ)降ら━━はのち」〔万2・103〕。
 ◎ ━━欲し
(【語誌】「まく」に形容詞「欲し」が付いたもの)……スルコトガシタイ、……アリタイの意。
「なははへて(=シメナワヲハッテ)守(も)ら━━・き梅の花かも」〔万10・1858〕。
「老いぬればさらぬ別れのありといへば、いよいよ見━━・き君かな」〔伊勢・84〕

▲「角川全訳古語辞典」(久保田淳・室伏信助、2002年10月、角川書店
 ◎む[補説](2)「む」のク語法に「まく」があった。これを未然形「ま」と扱う必要はない。
 ◎まく(上代語。推量の助動詞「む」のク語法)……であろうこと。……ようなこと。
[例]
「我ワが里に大雪降れり大原オホハラの古フりにし里に降らまくは後ノチ」〈万葉・2・103〉
[訳]
わが里には大雪が降った。あなたがいる大原の古びた里に降るの(=降るであろうこと)は、もっと後のことだろう。

▲「古典基礎語辞典」(大野晋、2011年10月、角川学芸出版
 ◎む[解説]未然形のマを立てる説があるが、これは「言はまく」「見まく」などのク語法のマであって( ifa+ mu + aku ⇒ ifamuaku ⇒ ifamaku , mi +mu + aku ⇒ mimuaku ⇒ mimaku )、厶の未然形とはいえない。
 ◎まく[解説]推量の助動詞厶のク語法。厶の連体形厶に、「(本来居る)所」とか「事」の意を表す名詞のアクが付いたムアクが、 u と a と母音が二つ続くため、母音の連続を避ける上代語の特性で前のほうの母音が脱落し、その結果生じた語がマクである( mu + aku ⇒ muaku ⇒ maku )。マクは「万葉集」に多くあり、宣命などでも使われている。
中古以降は、用法が固定化し、ほとんどが、……したい、……することが望ましい意の「……まく欲ホし」、または、……するのが残念だ、もったいないの意の「……まく惜し」の形で使われるようになる。
このうち「まく欲し」は一語化して希望を表す助動詞マホシとなる。
 [語釈]……だろうこと。……しようとすること。……ようなこと。
「わが宿の梅の下枝シヅエに遊びつつ鶯鳴くも散らまく〔麻久〕惜しみ」〈万葉842〉。
「卿等マヘツキミタチ、百官人等モモノツカサノヒトドモ、天下百姓アメノシタノオホミタカラの念へらまく〔麻久〕も、恥ハヅカし、かたじけなし」〈宣命54〉 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「的を得る」が誤用か否かについて

今、東京新聞の夕刊に三省堂国語辞典(三国)の編纂者を務める飯間浩明氏が「このことばクセモノ❢」という連載を書かれていて、これがなかなか面白い。

新語・新用法についての記事が多いが、先週金曜日6月19日の記事は「的を得る」だった。

飯間氏は「的を得る」「一人で爆笑」「汚名挽回」など、最近誤用とされることの多い表現を実は誤用ではないと主張してネットでも話題になっている人だ。

知恵袋では「他の辞書はみな誤用としているのだから、三国だけ誤用ではないとなっていても信用できない」などと書いている人もいた。

でも「他の辞書はみな誤用としている」というのも事実ではないし、仮に事実であったとしても、辞書の記述が正しいかどうかは多数決ではない。

飯間氏は誤用と言えるかどうかを確認するために膨大な量の文献を調査しているわけで、他の辞書に仮に誤用説が書かれていたとしても、その編纂者が飯間氏に匹敵するような調査をしているとはとても思われない。それを対等に比較するのはおかしいだろう。

「的を得る」にしても、今回の記事では既に18世紀の文献に「的を得る」の用例があることを示し、これに対して「的を射る」の用例は20世紀以後しか無いと確認したとのこと。

飯間氏はこういう地道な作業の末に「誤用ではない」説を述べているのであって、それをいとも気軽に目立ちたがり屋扱いするのは誤りだと敢えて断言する。

助動詞「む」の未然形について①

助動詞「む」の未然形についての各古語辞典・古典文法書の記述

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
🔴古語辞典
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
🔷未然形に「ま」を認めるもの
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
▲「角川古語辞典・初版」(武田祐吉久松潜一、1958年3月、角川書店
 ◎「ま」は「まく」という形に残り、古い未然形と認められる。
 ◎ま……推量の助動詞「む」の未然形とみられている。「まく」の形で用いられ、また「まくほし」「まくうし」の約。「まほし」「まうし」に含まれて残っている。
 ◎まく……推量の助動詞「む」の未然形「ま」に名詞を作る接尾語「く」のついたもの。……だろうこと。
「わが里に大雪降れり大原の古(ふ)りにし里に降ら━━は(降ルダロウノハ)後」〔万103〕。
「わが家(いは)ろに行かも人もが草枕旅は苦しと告げやら━━も(=告ゲヤルデアロウノニ)」〔万4406〕。

▲「角川古語辞典・改訂版A」(武田祐吉久松潜一、1963年1月、角川書店
 ◎「ま」は「まく」という形に残り、古い未然形と認められる。
 ◎ま……推量の助動詞「む」の未然形と推定される語。ただし、奈良時代においても「まく」の形に残る以外の用法は認められない。
 ◎まく(推量の助動詞「む」の未然形「ま」+準体助詞「く」)……と思われること。……などということ。
「わが里に大雪降れり大原の古フりにし里に降ら━━は後」〔万・103〕
「かけ━━もあやにかしこし」〔万・4360〕

▲「角川古語辞典・改訂版B」(武田祐吉久松潜一、1966年1月、角川書店
 ◎「ま」は「まく」という形に残り、古い未然形と認められる。
 ◎ま……推量の助動詞「む」の未然形と推定される語。ただし、奈良時代においても「まく」の形に残る以外の用法は認められない。
 ◎まく(推量の助動詞「む」の未然形「ま」+準体助詞「く」)……だろうこと。……と思われること。……などということ。
「わが里に大雪降れり大原の古フりにし里に降ら━━は後」〔万・103〕
「かけ━━もあやにかしこし」〔万・4360〕

▲「角川新版古語辞典」(久松潜一・佐藤謙三、1973年1月、角川書店
 ◎ま……推量の助動詞「む」の未然形と推定される語。ただし、奈良時代においても「まく」の形に残る以外の用法は認められない。
 ◎まく(推量の助動詞「む」の未然形「ま」+接尾語「く」)……だろうこと。……たりすること。……ようなこと。
「わが里に大雪降れり大原の古フりにし里に降らまくは後」〔万2・103〕
「明日アスさへ見まく欲しき君かも」〔万6・1014〕
「今の世に絶えず言ひつつかけまくもあやにかしこし」〔万20・4360〕


▲「角川最新古語小辞典」(佐藤謙三・山田俊雄、1975年1月、角川書店
 ◎ま……推量の助動詞「む」の未然形と推定される語。ただし、奈良時代においても「まく」の形に残る以外の用法は認められない。
 ◎まく(推量の助動詞「む」の未然形+接尾語「く」)……だろうこと。……(し)ようとすること。……ようなこと。
「わが里に大雪降れり大原(=奈良県ノ地名)の古フりにし里に降らまくはのち(=降ルノハ後ダロウ)」〔万2・103〕
「今の世に絶えず言ひつつかけまくもあやにかしこし(=口ニ出シテ言ウオソレ多イ)」〔万20・4360〕
 ※「角川最新古語辞典・増補版」(1980年1月)も同じ。

▲「角川必携古語辞典」(山田俊雄・吉川泰雄、1988年11月、角川書店
 ◎ま……推量の助動詞「む」の未然形と推定される語。ただし、奈良時代においても「まく」の形に残る以外の用法は認められない。
 ◎まく(推量の助動詞「む」の古い未然形「ま」+接尾語「く」)……だろうこと。……(し)ようとすること。……ようなこと。
「わが里に大雪降れり大原(=奈良県ノ地名)の古フりにし里に降らまくはのち(=降ルノハ後ダロウ)」〔万葉・2・103〕

▲「角川必携古語辞典全訳版」(山田俊雄・吉川泰雄・室伏信助、1997年11月、角川書店
 ◎ま……推量の助動詞「む」の未然形と推定される語。ただし、奈良時代においても「まく」の形に残る以外の用法は認められない。
 ◎まく(推量の助動詞「む」の古い未然形「ま」+接尾語「く」)……だろうこと。……(し)ようとすること。……ようなこと。
「我が里に大雪降れり大原の古フりにし里に降らまくは後ノチ」〔万葉・2・103〕
[訳]
わが里には大雪が降った。あなたがいる大原の古びた里に降るだろうことはもっと後のことだろう。

▲「三省堂古語辞典・初版」(小松英雄、1971年1月、三省堂
 ◎む……未然形「ま」は、上代の助詞「く」に付く形だけで、平安時代以後はもっぱら和歌だけに用いられる。
 ◎ま(推量の助動詞「む」の古い未然形)〘助詞「く」を伴って「まく」の形で用いられる〙
 ◎ま・く(連語)〘推量の助動詞「む」の古い未然形「ま」+上代の助詞「く」〙……だろうこと。……するようなこと。
「かけまくも(=口ニカケテ言ウコトモ)あやに畏カシコし言はまくも(=言ウコトモ)ゆゆしきかも」[万葉3・475・家持]
 ※「修訂版」(1974年1月)も同じ。

▲「例解古語辞典・初版」(小松英雄佐伯梅友・森野宗明、1980年1月、三省堂
 ◎む[要説A]未然形の「ま」は、上代の助詞「く」を付けて「まく」と用いるだけで、平安時代以後は、もっぱら和歌に用いられる。
 ◎ま(推量の助動詞「む」の古い未然形)〘助詞「く」を伴って「まく」の形で用いられる〙
 ◎ま・く(連語)……だろうこと。……するようなこと。
「かけまくも(=口ニ出シテ言ウコトモ)あやに畏カシコし、言はまくも(=言ウコトモ)ゆゆしきかも」[万葉3・475・家持]
 ※「第二版」(1985年1月)も同じ。

▲「例解古語辞典・第三版」(小松英雄佐伯梅友・森野宗明・鈴木丹士郎土井洋一・林史典、1992年11月、三省堂
 ◎む[解説][活用]未然形の「ま」は、主として上代に、準体助詞「く」の付いた「まく」の形で用いられるだけで、平安時代以後は、もっぱら和歌に用いられる。
 ◎ま(推量の助動詞「む」の古い未然形)〘助詞「く」を伴って「まく」の形で用いられる〙
 ◎ま・く(連語)〘「ま」は推量の助動詞「む」の古い未然形、「く」は上代の準体助詞〙……(だろう)こと。……(ような)こと。
[用例]
(a)「かけまくもあやに畏カシコし、言はまくもゆゆしきかも」〔万葉3・475・家持〕
 [解]心にかけて思うのもとてもおそれ多い、口に出して言うのも慎まれることだ、の意。
(b)「我が宿の梅の下枝シヅエに遊びつつうぐひす鳴くも、散らまく惜しみ」〔万葉5・842〕
 [解]第五句は、散るのを惜しんで、の意。
(c)「鳴く声を聞かまく欲ホりと(=聞キタイト)、朝アシタには門に出で立ち」〔万葉19・4209〕
[解説]平安時代以後は、和歌で、「まく欲ホし」「まく惜ヲし」の言いかたを中心に、多く「見まく欲し」が用いられ、この「まく欲し」から、願望の助動詞「まほし」が生じた。また、散文でも『かけまくも忝カタジケナし(畏カシコし)」のような慣用句が用いられた。

▲「詳解古語辞典」(佐藤定義、1972年11月、明治書院
 ◎む……上代には、未然形に「ま(く)」の形があった。
 ◎ま……推量の助動詞「む」の古い未然形。
「かけ━━くもあやにかしこし言は━━くもゆゆしきかも」〈万475〉⦿接尾語「く」を伴って「まく」の形で現われる。
 ◎まく……推量の助動詞「む」の古い未然形+接尾語「く」。……ようなこと。
梅の花散ら━━惜しみわが園の竹の林にうぐひす鳴くも」〈万824〉
 ※「新訂詳解」(1982年10月)も同じ。

▲「最新詳解古語辞典」(佐藤定義、1991年10月、明治書院
 ◎む……上代には、未然形に「ま(く)」の形があった。
 ◎ま……推量の助動詞「む」の古い未然形。
「かけ━━くもあやにかしこし言は━━くもゆゆしきかも」〈万475〉⦿接尾語(一説、準体助詞)「く」を伴って「まく」の形で現われる。
 ◎まく……〔推量の助動詞「む」の古い未然形+接尾語(一説、準体助詞)「く」〕……ようなこと。
梅の花散ら━━惜しみわが園の竹の林にうぐひす鳴くも」〈万824〉

▲「古語大辞典」(中田祝夫・和田利政・北原保雄、1983年12月、小学館
 ◎む[語誌]古くは、未然形に「ま」があったと考えられる。「朝な朝な見まくほしき[巻欲]を」〈万葉・11・2801〉の類の「まくほし」の「ま」がそれである。[森野宗明]
 ◎ま〘推量の助動詞「む」の未然形〙「まく」「まくほし」などの形で用いられる。
「あしひきの山に生ひたる菅の根のねもころ見まく[見巻]欲しき君かな」〈万葉・4・580〉。
「わが宿の梅の下枝シヅエに遊びつつ鶯鳴くも散らまく[知良麻久]惜しみ」〈万葉・5・842〉
 ◎ま−く〔連語〕〘推量の助動詞「む」の未然形「ま」+準体助詞「く」〙上代語。……であろうこと。……しようとすること。
「山処ヤマトの一本すすき項傾ウナカブし汝が泣かさ━━[那加佐麻久]朝雨の霧に立たむぞ」〈記・上・大国主神・歌謡4〉。
「わが宿の梅の下枝シヅエに遊びつつ鶯鳴くも散ら━━[知良麻久]惜しみ」〈万葉・5・842〉。
「異口同音にして法師を讃して言は━━[曰マク]『……』とのたまはむ」〈最勝王経古点〉
[語誌]平安時代では初期の訓点語に名残がみえる程度。[外山映次]

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


https://nobinyanmikeko.hatenadiary.jp/entry/2020/07/24/122709