つらつら思うこと

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萬葉集における助動詞「り」の接続例〜国歌大観No.1〜50

萬葉集の助動詞「り」の接続例を確認したい。

底本には「日本古典文学全集/萬葉集①~④」(小島憲之・木下正俊・佐竹昭広、①1971年②1972年③1973年④1975年、小学館)を使用し、詞書等は除外した。



《5》長歌〈軍王〉
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霞立 長春日乃 晩家流 和豆肝之良受 村肝乃 心乎痛見 奴要子鳥 卜歎居者 珠手次 懸乃宜久 遠神 吾大王乃 行幸能 山越風乃 独座 吾衣手尓 朝夕尓 還比奴礼婆 大夫登 [念有]我母 草枕 客尓之有者 思遣 鶴寸乎白土 網能浦之 海処女等之 焼塩乃 念曾所焼 吾下情
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霞立つ 長き春日ハルヒの 暮れにける わづきも知らず むらきもの 心を痛み ぬえこ鳥 うらなけ居ヲれば 玉だすき かけのよろしく 遠つ神 我が大君の 行幸イデマシの 山越す風の ひとり居ヲる 我が衣手に 朝夕アサヨヒに かへらひぬれば ますらをと [思へる]我も 草枕 旅にしあれば 思ひ遣る たづきを知らに 網の浦の 海人アマ娘子ヲトメらが 焼く塩の 思ひそ焼くる 我が下心
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★思へ:四段・命令形
 る:連体形
[念有〕我母
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《7》短歌〈額田王
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金野乃 美草苅葺 [屋杼礼里]之 兎道乃宮子能 借五百磯所念
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秋の野の み草刈り葺き [宿れり]し 宇治のみやこの 仮廬カリイホし思ほゆ
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★宿れ:四段・命令形
 り:連用形
[屋杼礼里]之
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《9》短歌〈額田王
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莫囂円隣之大相七兄爪謁気  吾瀬子之  [射立為]兼 五可新何本
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莫囂円隣之大相七兄爪謁気 我が背子が [い立たせり]けむ 厳橿イツカシが本モト
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★い立たせ:四段・命令形
 り:連用形
[射立為]兼
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《16》長歌額田王
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冬木成 春去来者 不喧有之 鳥毛来鳴奴 不開有之 花毛[佐家礼]杼 山乎茂 入而毛不取 草深 執手母不見 秋山乃 木葉乎見而者 黄葉乎婆 取而曾思努布 青乎者 置而曾歎久 曾許之恨之 秋山吾者
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冬ごもり 春さり来れば 鳴かざりし 鳥も来鳴きぬ 咲かざりし 花も[咲けれ]ど 山をしみ 入りても取らず 草深み 取りても見ず 秋山の 木の葉を見ては 黄葉モミチをば とりてそしのふ 青きをば 置きてそ嘆く そこし恨めし 秋山そ我アレは
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★咲け:四段・命令形
 れ:已然形
花毛[佐家礼]杼
※「家」は甲類
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《21》返歌(短歌)〈皇太子(天武天皇)〉
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紫草能 [尓保敝類]妹乎 尓苦久有者 人嬬故尓 吾恋目八方
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紫の [にほへる]妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに 我アレ恋ひめやも
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★にほへ:四段・命令形
 る:連体形
紫草能[尓保敝類]妹乎
※「敝」は甲類
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《29》長歌〈柿本朝臣人麻呂〉
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玉手次 畝火之山乃 橿原乃 日知之御世従 阿礼座師 神之尽 樛木乃 弥継嗣尓 天下 所知食之乎 天尓満 倭乎置而 青丹吉 平山乎超 何方 御念食可 天離 夷者雖有 石走 淡海国乃 楽浪乃 大津宮尓 天下 所知食兼 天皇之 神之御言能 大宮者 此間等雖聞 大殿者 此間等雖云 春草之 茂生有 霞立 春日之[霧流] 百磯城之 大宮処 見者悲毛
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玉だすき 畝傍の山の 橿原の ひじりの御代ゆ 生アれましし 神のことごと つがの木の いやつぎつぎに 天の下 知らしめししを 天にみつ 大和を置きて あをによし 奈良山を越え いかさまに 思ほしめせか あまざかる 鄙にはあれど いはばしる 近江の国の 楽浪ササナミの 大津の宮に 天の下 知らしめしけむ 天皇スメロキの 神の尊ミコトの 大宮は ここと聞けども 大殿は ここと言へども 春草の しげく生オひたる 霞立ち 春日ハルヒの[霧キれる] ももしきの 大宮所 見れば悲しも
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★霧キれ:四段・命令形
 る:連体形
春日之[霧流]
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《38》長歌〈柿本朝臣人麻呂〉
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安見知之 吾大王 神長柄 神佐備世須登 芳野川 多芸津河内尓 高殿乎 高知座而 上立 国見乎為勢婆 畳有 青垣山 山神乃 奉御調等 春部者 花插頭持 秋立者 黄葉[頭刺理] 逝副 川之神母 大御食尓 仕奉等 上瀬尓 鵜川乎立 下瀬尓 小網刺渡 山川母 依弖奉流 神乃御代鴨
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やすみしし 我が大君 神カムながら 神カムさびせすと 吉野川 たぎつ河内カフチに 高殿を 高知りまして 登り立ち 国見をせせば たたなはる 青垣山 やまつみの 奉マツる御調ミツキと 春へには 花かざし持ち 秋立てば 黄葉モミチ[かざせり] 行き沿ふ 川の神も 大御食オホミケに 仕へ奉マツると 上つ瀬に 鵜川を立ち 下つ瀬に 小網サデさし渡す 山川も 依りて仕ふる 神の御代ミヨかも
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★頭刺カザセ:四段・命令形
 り:終止形
黄葉[頭刺]理
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《50》長歌〈藤原宮之伇民〉
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八隅知之 吾大王 高照 日乃皇子 荒妙乃 藤原我宇倍尓 食国乎 売之賜牟登 都宮者 高所知武等 神長柄 所念奈戸二 天地毛 縁而有許曾 磐走 淡海乃国之 衣手能 田上山之 真木佐苦 檜乃嬬手乎 物乃布能 八十氏河尓 玉藻成 浮倍[流礼] 其乎取登 散和久御民毛 家忘 身毛多奈不知 鴨自物 水尓浮居而 吾作 日之御門尓 不知国 依巨勢道従 我国者 常世尓成牟 図[負留] 神亀毛 新代登 泉乃河尓 [持越流] 真木乃都麻手乎 百不足 五十日太尓作 泝須良牟 伊蘇波久見者 神随尓有之
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やすみしし 我が大君 高照らす 日の皇子ミコ あらたへの 藤原が上に 食ヲす国を 見メしたまはむと みあらかは 高知らさむと 神カムながら 思ほすなへに 天地アメツチも 依りてあれこそ いはばしる 近江アフミの国の 衣手の 田上タナカミ山の 真木さく 檜のつまでを もののふの 八十宇治川ヤソウヂカハに 玉藻なす 浮かべ[流せれ] そを取ると 騒く御民ミタミも 家忘れ 身もたな知らず 鴨じもの 水に浮き居て 我が作る 日の御門に 知らぬ国 よし巨勢道コセヂより 我が国は 常世トコヨにならむ 図アヤ[負へる] くすしき亀も 新た代と 泉の川に [持ち越せる] 真木のつまでを 百モモ足らず 筏イカダに作り のぼすらむ いそはく見れば 神カムからならし
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★流せ:四段・命令形
 れ:已然形
浮倍[流礼〕
※「依りてあれこそ」の結びで已然形になっている
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★負へ:四段・命令形
 る:連体形
圖[負留]神亀
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★持ち越せ:四段・命令形
 る:連体形
[持越流]真木乃都麻手乎
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