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助動詞「む」の未然形について①

助動詞「む」の未然形についての各古語辞典・古典文法書の記述

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🔴古語辞典
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🔷未然形に「ま」を認めるもの
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▲「角川古語辞典・初版」(武田祐吉久松潜一、1958年3月、角川書店
 ◎「ま」は「まく」という形に残り、古い未然形と認められる。
 ◎ま……推量の助動詞「む」の未然形とみられている。「まく」の形で用いられ、また「まくほし」「まくうし」の約。「まほし」「まうし」に含まれて残っている。
 ◎まく……推量の助動詞「む」の未然形「ま」に名詞を作る接尾語「く」のついたもの。……だろうこと。
「わが里に大雪降れり大原の古(ふ)りにし里に降ら━━は(降ルダロウノハ)後」〔万103〕。
「わが家(いは)ろに行かも人もが草枕旅は苦しと告げやら━━も(=告ゲヤルデアロウノニ)」〔万4406〕。

▲「角川古語辞典・改訂版A」(武田祐吉久松潜一、1963年1月、角川書店
 ◎「ま」は「まく」という形に残り、古い未然形と認められる。
 ◎ま……推量の助動詞「む」の未然形と推定される語。ただし、奈良時代においても「まく」の形に残る以外の用法は認められない。
 ◎まく(推量の助動詞「む」の未然形「ま」+準体助詞「く」)……と思われること。……などということ。
「わが里に大雪降れり大原の古フりにし里に降ら━━は後」〔万・103〕
「かけ━━もあやにかしこし」〔万・4360〕

▲「角川古語辞典・改訂版B」(武田祐吉久松潜一、1966年1月、角川書店
 ◎「ま」は「まく」という形に残り、古い未然形と認められる。
 ◎ま……推量の助動詞「む」の未然形と推定される語。ただし、奈良時代においても「まく」の形に残る以外の用法は認められない。
 ◎まく(推量の助動詞「む」の未然形「ま」+準体助詞「く」)……だろうこと。……と思われること。……などということ。
「わが里に大雪降れり大原の古フりにし里に降ら━━は後」〔万・103〕
「かけ━━もあやにかしこし」〔万・4360〕

▲「角川新版古語辞典」(久松潜一・佐藤謙三、1973年1月、角川書店
 ◎ま……推量の助動詞「む」の未然形と推定される語。ただし、奈良時代においても「まく」の形に残る以外の用法は認められない。
 ◎まく(推量の助動詞「む」の未然形「ま」+接尾語「く」)……だろうこと。……たりすること。……ようなこと。
「わが里に大雪降れり大原の古フりにし里に降らまくは後」〔万2・103〕
「明日アスさへ見まく欲しき君かも」〔万6・1014〕
「今の世に絶えず言ひつつかけまくもあやにかしこし」〔万20・4360〕


▲「角川最新古語小辞典」(佐藤謙三・山田俊雄、1975年1月、角川書店
 ◎ま……推量の助動詞「む」の未然形と推定される語。ただし、奈良時代においても「まく」の形に残る以外の用法は認められない。
 ◎まく(推量の助動詞「む」の未然形+接尾語「く」)……だろうこと。……(し)ようとすること。……ようなこと。
「わが里に大雪降れり大原(=奈良県ノ地名)の古フりにし里に降らまくはのち(=降ルノハ後ダロウ)」〔万2・103〕
「今の世に絶えず言ひつつかけまくもあやにかしこし(=口ニ出シテ言ウオソレ多イ)」〔万20・4360〕
 ※「角川最新古語辞典・増補版」(1980年1月)も同じ。

▲「角川必携古語辞典」(山田俊雄・吉川泰雄、1988年11月、角川書店
 ◎ま……推量の助動詞「む」の未然形と推定される語。ただし、奈良時代においても「まく」の形に残る以外の用法は認められない。
 ◎まく(推量の助動詞「む」の古い未然形「ま」+接尾語「く」)……だろうこと。……(し)ようとすること。……ようなこと。
「わが里に大雪降れり大原(=奈良県ノ地名)の古フりにし里に降らまくはのち(=降ルノハ後ダロウ)」〔万葉・2・103〕

▲「角川必携古語辞典全訳版」(山田俊雄・吉川泰雄・室伏信助、1997年11月、角川書店
 ◎ま……推量の助動詞「む」の未然形と推定される語。ただし、奈良時代においても「まく」の形に残る以外の用法は認められない。
 ◎まく(推量の助動詞「む」の古い未然形「ま」+接尾語「く」)……だろうこと。……(し)ようとすること。……ようなこと。
「我が里に大雪降れり大原の古フりにし里に降らまくは後ノチ」〔万葉・2・103〕
[訳]
わが里には大雪が降った。あなたがいる大原の古びた里に降るだろうことはもっと後のことだろう。

▲「三省堂古語辞典・初版」(小松英雄、1971年1月、三省堂
 ◎む……未然形「ま」は、上代の助詞「く」に付く形だけで、平安時代以後はもっぱら和歌だけに用いられる。
 ◎ま(推量の助動詞「む」の古い未然形)〘助詞「く」を伴って「まく」の形で用いられる〙
 ◎ま・く(連語)〘推量の助動詞「む」の古い未然形「ま」+上代の助詞「く」〙……だろうこと。……するようなこと。
「かけまくも(=口ニカケテ言ウコトモ)あやに畏カシコし言はまくも(=言ウコトモ)ゆゆしきかも」[万葉3・475・家持]
 ※「修訂版」(1974年1月)も同じ。

▲「例解古語辞典・初版」(小松英雄佐伯梅友・森野宗明、1980年1月、三省堂
 ◎む[要説A]未然形の「ま」は、上代の助詞「く」を付けて「まく」と用いるだけで、平安時代以後は、もっぱら和歌に用いられる。
 ◎ま(推量の助動詞「む」の古い未然形)〘助詞「く」を伴って「まく」の形で用いられる〙
 ◎ま・く(連語)……だろうこと。……するようなこと。
「かけまくも(=口ニ出シテ言ウコトモ)あやに畏カシコし、言はまくも(=言ウコトモ)ゆゆしきかも」[万葉3・475・家持]
 ※「第二版」(1985年1月)も同じ。

▲「例解古語辞典・第三版」(小松英雄佐伯梅友・森野宗明・鈴木丹士郎土井洋一・林史典、1992年11月、三省堂
 ◎む[解説][活用]未然形の「ま」は、主として上代に、準体助詞「く」の付いた「まく」の形で用いられるだけで、平安時代以後は、もっぱら和歌に用いられる。
 ◎ま(推量の助動詞「む」の古い未然形)〘助詞「く」を伴って「まく」の形で用いられる〙
 ◎ま・く(連語)〘「ま」は推量の助動詞「む」の古い未然形、「く」は上代の準体助詞〙……(だろう)こと。……(ような)こと。
[用例]
(a)「かけまくもあやに畏カシコし、言はまくもゆゆしきかも」〔万葉3・475・家持〕
 [解]心にかけて思うのもとてもおそれ多い、口に出して言うのも慎まれることだ、の意。
(b)「我が宿の梅の下枝シヅエに遊びつつうぐひす鳴くも、散らまく惜しみ」〔万葉5・842〕
 [解]第五句は、散るのを惜しんで、の意。
(c)「鳴く声を聞かまく欲ホりと(=聞キタイト)、朝アシタには門に出で立ち」〔万葉19・4209〕
[解説]平安時代以後は、和歌で、「まく欲ホし」「まく惜ヲし」の言いかたを中心に、多く「見まく欲し」が用いられ、この「まく欲し」から、願望の助動詞「まほし」が生じた。また、散文でも『かけまくも忝カタジケナし(畏カシコし)」のような慣用句が用いられた。

▲「詳解古語辞典」(佐藤定義、1972年11月、明治書院
 ◎む……上代には、未然形に「ま(く)」の形があった。
 ◎ま……推量の助動詞「む」の古い未然形。
「かけ━━くもあやにかしこし言は━━くもゆゆしきかも」〈万475〉⦿接尾語「く」を伴って「まく」の形で現われる。
 ◎まく……推量の助動詞「む」の古い未然形+接尾語「く」。……ようなこと。
梅の花散ら━━惜しみわが園の竹の林にうぐひす鳴くも」〈万824〉
 ※「新訂詳解」(1982年10月)も同じ。

▲「最新詳解古語辞典」(佐藤定義、1991年10月、明治書院
 ◎む……上代には、未然形に「ま(く)」の形があった。
 ◎ま……推量の助動詞「む」の古い未然形。
「かけ━━くもあやにかしこし言は━━くもゆゆしきかも」〈万475〉⦿接尾語(一説、準体助詞)「く」を伴って「まく」の形で現われる。
 ◎まく……〔推量の助動詞「む」の古い未然形+接尾語(一説、準体助詞)「く」〕……ようなこと。
梅の花散ら━━惜しみわが園の竹の林にうぐひす鳴くも」〈万824〉

▲「古語大辞典」(中田祝夫・和田利政・北原保雄、1983年12月、小学館
 ◎む[語誌]古くは、未然形に「ま」があったと考えられる。「朝な朝な見まくほしき[巻欲]を」〈万葉・11・2801〉の類の「まくほし」の「ま」がそれである。[森野宗明]
 ◎ま〘推量の助動詞「む」の未然形〙「まく」「まくほし」などの形で用いられる。
「あしひきの山に生ひたる菅の根のねもころ見まく[見巻]欲しき君かな」〈万葉・4・580〉。
「わが宿の梅の下枝シヅエに遊びつつ鶯鳴くも散らまく[知良麻久]惜しみ」〈万葉・5・842〉
 ◎ま−く〔連語〕〘推量の助動詞「む」の未然形「ま」+準体助詞「く」〙上代語。……であろうこと。……しようとすること。
「山処ヤマトの一本すすき項傾ウナカブし汝が泣かさ━━[那加佐麻久]朝雨の霧に立たむぞ」〈記・上・大国主神・歌謡4〉。
「わが宿の梅の下枝シヅエに遊びつつ鶯鳴くも散ら━━[知良麻久]惜しみ」〈万葉・5・842〉。
「異口同音にして法師を讃して言は━━[曰マク]『……』とのたまはむ」〈最勝王経古点〉
[語誌]平安時代では初期の訓点語に名残がみえる程度。[外山映次]

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